「2人で映画見に行かない?」 ここに書くのは可笑しいほど、 普通のセリフだね。 でも、ずっと欲しかった。 そんな「普通」が。
水曜日を考えながら、 いつしか眠ってしまったらしい。 目が覚めると、 窓から太陽が入って部屋が暖かかった。 12月だというのに。
何を着ようかとか、 どんな化粧にしようかとか、 バッグは何にしようかとか。 普通の19歳が考えてるようなことを考えてることが、 不思議で、でも嬉しかった。
あたしは大分擦れてしまって、 彼氏が出来たとか出来ないとかいう大学での話題を、 ついていけないとかではなく、相手に出来なかった。 あたしにとっての恋愛は、そんなレベルじゃないから。
大体、恋愛の相手を「男」とひとくくりに出来ない。 あたしは「男」に恋してるんではなく、 「寺島陽介」という「人間」に恋しているのだ。
それは誇りでもあるけれど、時々、 普通の19歳が思うことかしらと思うことがあった。 悟りすぎ、では? もう普通の19歳のように、 恋愛を楽しむ恋愛が出来ないのでは?
兄さんに、少しだけ話したこともあった。
あたし、これからもずっとこうなんじゃないかな。 寺島をすっごく愛してるから、こんなにドロドロになってるんじゃなくて、 別の人とドロドロになっても、その人がどんなにダメでも、 最後は信じてしまって、愛そうとしてしまうんじゃないかな。
わからないん、だけど。
水曜日は、普通の19歳になろう。 何にも。 難しいこと考えずに。
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