一旦電話を切って、寺島はお風呂に入った。 それがどこの家も共通ではないだろうけど、 ウチでは、お風呂から上がると「おかえり」と声をかけるので、 かけ直してきた寺島に、
「おかえり」
と言った。
ら、
「ただいま」
って返ってきた。
寺島が次の言葉を発するまでの、短い間。 あたしは言いようもない、幸せを感じてた。 寺島の、上機嫌のときしか聞けない、甘えた声も。 家庭のような、やりとりも。
寺島は、 「彼女」というものは『刺激』や『興奮』を与えるものであって、 あたしには、全てを知っている『気安さ』があると言う。 それは「彼女」じゃなくて、 「家庭」だ、と言った。
その認識さえ、「彼女」が出来るまでのことだと知っている。あたしは。 けれど、 まぁ別に悪くはないか、と思う。
あぁでも、言葉にして初めて思ったけれど、 「彼女」が出来たら、寺島は、 あたしを愛したように彼女を愛するのか。 そのことは、また今度考えよう。
そう、別に悪くはない。 最悪の時期を思い浮かべれば。 あんなに悪いときもあったのに、今はこんなこと言える。 よっぽどだ、って思うし、 極論を言えば、あたしは、 寺島に必要とされるなら何でもいいんである。
しばらく抵抗するものの、応えるあたし。 こんな風だから、どんなに真剣に悩んでも、 周りの人間には、 ただのバカップルだからそのうち片付くだろうとか言われるんだろうか。
----------------------------------
前日の日記、追記をしています。 よろしかったら、どうぞ。
|