NORI-☆
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ある論争
「結婚式でさ、彼がお客さんに切実に訴えるわけよ。 “皆さんどう思われますか?”って…」 語っているのは、上司として結婚式に出席したアンソニーである。 話題の主は、先月結婚した同僚のバービーちゃんの旦那サマ、 職場の仲間による彼女の結婚祝いのお食事会の席上である。 「多数決とかとったんですか?あなたはどっち派?って?」 「そうそう。手を挙げてね」 「どっちが多かったんですか?」 「んー…半々ってとこかなぁ」 「で?どうなんですか、アンソニーさんちは?」 「ん?うち?…うちはそんなにこだわらない方だよ」 「ですよねぇ…うーん…」 何の話かって? ことの発端は、結婚式の1ヶ月前から彼と同居を始めたバービーが、 「もー信じられないですぅ〜」と訴えてきたことだった。 まあまあ、となだめるアンソニーに、 「だって、顔を洗うタオルと靴下を一緒に洗うなんて、 そんな不潔じゃないですかぁ」 とヒステリックな声を出すバービー。 世の中に、洗濯ものの分け洗いやゴミの分別に対して かなり細かく厳しいルールを持っている人(多くは女性) がいるということは知っている。 …という言い方をすることからすでにわかるように、 私はかなり大雑把な方である。 素材によって手洗いモードで洗いたいものはあるし、 色落ちしそうなものは別に洗うとか、 汚れがひどいものはつけおき洗いにするから別、とか ごく一般的な分別はするけれども、例えば、 夫の下着と自分のものは一緒に洗いたくないとか そういう差別感覚は持ちあわせていない。 が、しかし、そういう区別をしたい人を 別に批判するつもりもない。 良い悪い、正しい正しくないという問題ではなく、 要するに、習慣の問題だと認識しているので。 私はたまたま実家でもごく大雑把な分別だったし、 自分自身がそれほど先鋭な清潔志向を持っていないから 無頓着だというだけのことである。 さて、当然バービーは、分け洗いの人である。 夫たる人が、顔をふくタオルと足にはく靴下を 同じ水に入れて洗うことが許せないという。 そのことが気に障って、新生活がギクシャクしているという。 1ヶ月前にその不満を聞かされたわれわれ既婚の同僚は、 「まあまあ、新生活にはそういう習慣の違いによる 意見の対立はままあるものよ。そのうち折り合うから…」 という大人な意見で彼女を慰めたものであった。 しかし、彼女はその違いをまだ許せないでいたようで、 同居開始以来ずっと責められ続けていた夫が、 たまりかねて自分を擁護してくれる人々を募ったわけだ。 この話が出たとき、一座の中から、 夫君を批判する意見が上がらなかったことは、 私にとっては若干ほっとする展開ではあった。 しかし、夫君を積極的に擁護すると、 彼女に「なんてガサツな人かしら」と思われ せっかくこれまで働く主婦の先輩として彼女から得ていた 尊敬と信頼を失うことになるので、私は用心深く黙っていた。 恐らく、同僚たちも私と同じような発想だったのだろう。 自分はどちらかということについては明言を避けている。 (が、「じゃあ、パンツは靴下と一緒でいいの?」 などという問いは、おのずと事実関係を明かしているのだ) バービー自身も、この問題に関しては、これまで あまり強力な同盟者が得られなかったらしく、 1ヶ月前と比べるとだいぶトーンダウンしている。 あまりに神経質で扱いにくい人、と思われては困る、 ということなのかもしれない。 一座からはかばかしい反応が帰ってこないので、 あきらめたように一言言った。 「まあ、別に私が洗うわけじゃないし…」 「え?違うの?」 「そうですよ〜、彼と私は洗濯は別で、 彼がそういう洗い方をするのを見てて、 私が横で文句言ってるだけなんです」 これで一気に形勢はバービーに不利に傾いた。 自分の分は自分が好きなように洗ってるんなら それでいいじゃん〜 旦那が自分で洗濯するんだったら文句ないじゃん〜 既婚者も未婚者もみな、「旦那さん、えらい」 という方向に収束していこうとしている。 しかし、と私は思う。 分け洗いの問題と、洗濯は誰がするか、 という問題は、別次元の話なんだけどなぁ… それに、たかが洗濯機を回すだけで 夫が「えらいじゃん」と評価されるのって 不当なんじゃないか? 妻が自分のものを自分で洗う、と聞いて、 えらいと褒める人はきっとほとんどいないだろうに。 ま、だからといって、夫の分、妻のタオルの分、 妻の靴下の分、妻の○○の分、妻の△△の分……と 洗濯が無限に細分化されて回数が増えていくのは、 やっぱり地球環境の観点からみてまずかろう、 資源の無駄だからほどほどにせいよ、とは思うけどね… 「“家事は手の空いてる方がやる”の大原則は、 両者の美意識が同レベルにある場合のみ有効である」 そしてだいたい、原則を破って墓穴を掘るのは、 私の知る範囲では、いつも女(妻)なのであった。。。(TT)
2001年10月05日(金)
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