NORI-☆
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箱の中の小さな悩み
前述の通り、私は歌を歌うのがけっこう嫌いじゃない。 だけど、カラオケというやつは苦手である。 多分、年に数回しか行かないので 単純に慣れの問題だとは思うのだけれど、 いつも何を歌ったらいいかわからなくて、 分厚いリストブックをドサッと渡されると 途方にくれてしまうのだった。 今どんな歌が流行っているか知らないし、 流行の歌を聞きかじっていいな、と思っても、 歌手名もタイトルも知らないので選ぶことができない。 といって自分が歌える古めの歌では気が引ける…… で、結局「入れた?」「歌ってくださいね!」という催促に とりあえずリストを繰って「選曲中」のポーズをとって その場をごまかしてやり過ごすことになる。 どうせ上手い人、歌いたい人がどんどん歌うんだから、 無理して入れることはないのである。 そうこうしているうちに新入社員あたりから始まり、 若手のお調子モノが盛り上げ、大御所がおもむろに腰を上げ… とだんだん歌合戦は佳境に入っていく。 選んで歌えといわれると困るけれども、 こうして聞いている分には、それなりに聞き覚えがあったり 自分も好きな曲だったりして、結構楽しめるし、 一緒に口ずさんだりするのもまた楽しかったりする。 また、そうして歌われている曲は、 必ずしも新しい歌ばかりではないということにも気が付く。 (なんだ、こんな古い歌、歌ってもいいのか…) それなら私が歌える歌でも別によかったのか、と思いつつ、 でもやっぱり、ちょっと古い歌、あまりにも定番な歌というやつは 出てくるタイミングと歌う人のキャラクターによって、 ウケるときとしらけるときがある、ということにも気付く。 そのへんを計算し尽くして、あるいは自然に身につけていて、 いろいろなイメージの曲を次々入れては 「おお〜!」「○○さん、意外〜」と 出てくるたびにウケている人もいれば、 反対にまったく我が道を行くで、お気に入りのアーチストの曲を 自分の世界に入って歌ってしまう人もいる。 まあ、別にこんなところでの評価なんかどうでもいいのだけれど、 やはりそういう時、そんなに上手くなくても 気の利いた選曲をして、周りを楽しませてくれる人って ちょっといいな、と思う。 でも、結局そうやって人が選ぶ歌にへえぇ、ふぅん…と 感心しているうちに時間が経っていき、 マイクを握らなくても一緒に口ずさんでいただけで すっかり楽しんで満足している自分に気付く。 …うん、結局、私はそれでもいいのである。 しかし、それでいいのに、それだけで十分なのに、 参加した以上1曲は歌わなくちゃ、と しつこく薦めてくれる人がいたり、 誰でも歌えそうな歌を勝手に入れて マイクを渡してくれたりする人がいるものである。 まあ、そこで頑なに断るのはおとな気ないので、 じゃあ何か一つ歌おうか、と思って考えると、 他の人の選曲志向がわかってしまっているだけに、 かえって選びにくくなっていたりする。 「十八番を一つ作っておけばいいんだよ」と夫は言うが、 その十八番を十八番としている人がいたりするものなのである。 結局、何種類かパターンの違う「十八番」を 用意しておけばいいのよね、とそのときは思うのだが、 年に3回くらいしか行かないカラオケのために 日ごろから心がけておくほどヒマじゃないんだよね… というか、喉元過ぎれば悩み忘れる、なのである。 かくして、小さな箱の中で過ごす1時間ばかりは、 出会いと発見の楽しい時間でもあり、 苦悩と逡巡の困った時間でもあるのだった。 ま、別に何を歌っても、どうせ酔っ払いのこと、 誰も聴いているわけじゃないんだけどね(^^;)
2001年06月07日(木)
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