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昨日出先で隣に座っていた二人。男性はいかにも研究者(大学教員)という雰囲気、女性の方は20代半ばぐらいで、一瞬不釣合いなほどおしゃれに気を使っている。 聞くともなしに会話が耳に入ってくる。話の前後はわからないが、男性が「だから、朝大学に来て図書館で勉強すればいいんだよ」というと、女性が「そりゃぁ、理想ですけどぉ。朝起きて、お化粧して、髪の毛やって、着る服選んで、とかやってるとくじけちゃうんですよ」という。なぬ?と思ってそこから聞き耳を立てて話を聞く。男性が「でもね、○○大学(地方旧帝大名)の△△キャンパスでは△△原人っていってさー、若い奴らがジャージ姿の汚い格好でうろうろしてるんだよ、そういうものなんだよ大学院生っていうのは」というと、またその女性が、「それも25歳までは許されるんですよ。」と言い出す。「若ければお化粧しなくてもおしゃれしなくても、逆にかわいいと思うんですけど、あたしみたいに26以上はダメです。世間が許しません。」「しかも私、今親元で、母親もそこで子供の頃から育ってますから、近所の人がみんな知ってるわけですよ。身なりに気を使わないなんてちょっと許されないんです」。 おいおいおい。そりゃ違うだろう。と、ここで一回り上の身なりに気を使わない女(私)が心の中で突っ込みを入れる。さらに聞き耳を立てる。「ここは田舎だからいいですよー(といっても都心から電車で30分)、でも家からここまで来るのに、バスに乗りーの、電車乗りーので、四谷駅とか通ってくるんですよ」「かまわないわけには行かないか」「ええ、行きません。すっぴんなんて殺されますよ」 まーどう見ても彼女はおしゃれしすぎである。「身なりに気を使わない」レベルを0とすると彼女は10である。そこそこ見苦しくないこざっぱりとした格好からもかなり遠いところにいる。そこでまた指導教員らしい男性が言う。「遥洋子がさ、東大へ上野千鶴子に習いに行ったとき、女子学生に化粧教えてくれって頼まれた話知ってる?それで、ああ、彼女達が化粧をしていないのは化粧を知らないからなんだ、って初めて気づくんだよ。そういうもんなんだよ、大学院生っていうのは」「…」「ま、とにかくいつまでも若くないんだからさ、勉強するときはしないと。大学院生なんだから」「はぁ」というわけで、話が堂々巡りなのにほとほと嫌気が差しているらしい男性は、会話を閉めに入った。彼女の方は、摂食障害があったり、精神安定剤飲んでいたり、生まれが複雑だったり、親との葛藤があったり、という話を問わず語りに(でも立て板に水に)話していて、聞いている私は難儀よのうと思う。 ハタから聞いていると「甘えるんじゃない!このバカ!」と言いたくなるような言い訳をつぎつぎ出してくる彼女は、サボりたくてそういう繰言を述べているわけではなく、本気でそう信じていているのだろう。他人から見たらばかげているとしか思えない迷宮が彼女を追い込んで苦しめているのだろう。腫れ物に触るように相手をしている指導教員にしたって、学究の徒を目指して若い頃から勉強し、研究者としての地位を得ただろうに、その結果彼女のように勉強しない、言い訳ばかりの、しかも精神的に危うい学生とも関わりあわなければならないのだ。研究者としての彼にとってはまったくの時間の無駄になっている。見捨てないのは教育者としての矜持か、彼自身の特性か。カウンセラーでもないのに、難儀なことだと思う。
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