妄想更新日記
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2004年07月08日(木) 遅ればせながら薫と葉末の七夕妄想

夜、子供会が地域のコミュニティセンターで七夕の映画会を行った。



「兄さん早く早く!」

「走るな葉末!転ぶだろう!!」


ここ...青学の周りは中流...いや、まぁ上流に位置するのだろうか?ともかく教育に熱心な親が集っていて、しかし勉強勉強とシャカリキになるわけではなく

「こどもたちにいいものを与えていける地域だといいですねぇ」
「ほんとですねー」

という感じの育ちのよさ故の、のほほんとした所。


そんな訳で今どき珍しく子供会や婦人会が盛んで今回のように

「七夕ですからプラネタリウムは無理でも映画会くらいどうですか?」
「いいですねー」

とあっさり決定してしまった。

数日前に廻って来た子供会の回覧板に眼を輝かせた葉末は

「兄さん!連れてってください!」

と速攻お願いして海堂に引率のお役目が廻って来た訳だ。


(チ....今日の自主トレがこれでおじゃんだ)

関東大会を前にこんな事をしてる場合じゃないのだが葉末にねだられると、どうも弱い。

加えて母さんの

「薫、お願いね。七夕の御馳走と笹飾りは用意しておくから」

とにっこり微笑まれては二の句が告げない。


場内は小学生と保護者で充満している。お日さまとお菓子のまじったような甘ったるい匂いに海堂はそっと外に出た。中学生という微妙な年令が居るには少々気恥ずかしい場所だったし、織姫とひこ星の子供向け恋愛アニメなんぞに興味はない。


ぼーっと会館の前で空を見上げた。まだ街灯が明るくて星はろくに見えなかったが外の風が気持ちよかった。

「一年に一回か....」



思い出したくもない事が頭に過る。あのD2の負け試合。


「最後の年だって言うのにどうして....」


ずっと疑問に思っていた。元々あの人はシングルスプレイヤーだ。
普通ならレギュラーを手にした時点で最後の大会、思いきりシングルスで打ちたくなるのが本当ではないか?

万が一あのD2の試合で青学が負けてしまっていたらセンパイの最後の試合はあの負け試合と言う事になる。


その可能性だって数十%はあったハズだ。相手はあの氷帝だったのだから。



なのに....なんであの人は俺なんかと....


俺の為に....?


なんであの人が俺に構うのかは全くもって解らない。利用するだのしないだのほざいていたが利用できる何かが俺にあるなんて自惚れてもいない。

たぶん...あの人は俺を気に入ってくれてるのだろう。
もともと変な趣味の人だ、嫌われ者のこの俺にちょっと興味を持ったくらいなんだろうと無理矢理納得させたが、それにしたって最後の年と引き換えにする価値なんかあるのだろうか?


わからない。


わからないが先輩の最後の年にろくでもないプレーをする訳には行かない。
あれだけ面倒をみてもらって叉あんな思いをするのは....


ぶるりと身体が震えた。こんな所でぼっとしてる自分にイライラしてきた。

俺には来年もあるけれどセンパイには最後の年。そして二人ででれるのは今年が最後だ。


「来年は天の川よろしくフェンスの向こうに離されるってか...?」

もう自分が高等部に行くまでこれっきりだなんて考えたくない。

年に一度の逢瀬の大会。こんな形じゃ終われない。












「もーーーーーー!!兄さん!勝手にどこかにいかないでくださいよう!」

振り向くと葉末が後ろに突っ立っていた。

見ればどやどやと子供達が解散している。

「終わったのか?」

「もう!終わりましたよ。兄さんも一緒にみてくれてると思ってたらいないんですもの僕、焦りました。」

そういって海堂の浴衣の裾に顔をくっつけた。

「....悪かったな」

葉末の頭をくしゃりとなでた。

葉末のこういう無邪気な所が好きだ。可愛く頼られるとほんわりして心が落ち着く。現にさっきまでのイライラがおさまって来た。


「ね、ね、ね!兄さん、それでですね、後で公園で花火をしましょう!子供会の人がですね、お土産にくれたんですよう!」


みるとお菓子と花火の入った紙袋を持たされていた。

「.....俺はまだちょっと自主トレしたいんだけど....」

「え〜〜〜〜〜〜」

明らかに不満の声に

「まずは母さんの御飯を食べて短冊を飾ってからな。」とはぐらかした。








家に帰ると穂摘がこれでもかと料理をつくっていた。

特になんのへんてつもないそうめんがオクラの輪切りと星型人参の緑とオレンジのコントラストで胡麻やみょうがを背景に鮮やかに彩られたのは見事だった。




「兄さんはなんて書きました?」

食後に庭に出て短冊をつける。

「お前はなんて書いたんだよ」

「へへへ....」


葉末の御願いごとは「大型犬が飼いたい」だの「ディズニーランドに行きたい」だの「レゴブロックのハリーポッタ−のやつが欲しい」だの、サンタの御願いごとじゃないんだからと言うのがほとんだだったが

「兄さんともっと遊びたい」

というのもあって胸をきゅっとさせた。

練習練習でちっとも遊んでやってない。


「兄さんのは....ん?『せん...なんだろこの漢字習ってない...が..Sのしあいにもでれますように...』」


「こら!」

「エスのしあいってなんですか?」

「なんでもいい!人の勝手にみるな!つけるぞ!」

「兄さん僕のみたくせにーーーー!」

ぶーぶー言いながらも流れ作業で笹にとりつける。


「兄さんあそこにつけて下さい!あそこの一番高い所!」
「ここか?」
「その上!」

「くっ...届かねぇ...」











「ここにつければいいの?葉末くん?」


「乾さん!!」

「センパイ!!」


「やぁ海堂。」

「アンタ何しに...」


しれっとしながら短冊のこよりを笹につけてセンパイはにっこりと笑った。


「うん。僕のマンションの近くの公園で派手にみんなで花火やってるから葉末くんと海堂もどうかなーって誘いにきたんだけど....」


乾センパイはよくこうやってふらりと現れては葉末を遊びに誘ってくれる。

『俺一人っ子だから葉末くんと遊ぶの楽しいよ...』

というのだが、現れ方がいつも突然なので俺はちょっといつもびっくりしてしまう。

葉末は花火のてん末をセンパイに聞かせると

「兄さんも一緒にいきましょう!」
と花が咲いたように笑った。

俺はさっき遊んでやらなかった反省もどこへやらセンパイに普段の俺を覗かれた気がして照れくさくて顔があわせられなかった。


「俺、やっぱロードワークいく。今日は自主トレメニューサボッちまったからロードワークくらいはやりてぇ。」

「海堂こないの?浴衣...似合うのに....」

なめるようにみられてる気がしてますます俯いてしまう。

なんで顔が熱くなってるんだ?くそっ!


「や、今日はスンマセン...ってかアンタもこんな事してる場合なんすか?」

「俺のは受験勉強の息抜き!じゃぁ葉末くんは責任持ってお預かりするよ。」

家の者に信頼の厚いセンパイはさっさと葉末を連れていく段取りを俺の両親としていた。





「兄さん...」

「ん?」

「あのねこんな事いうのも何なのですが...」

「?」

「乾さんって大型犬みたいだとか思いませんか?」


とかいうので吹き出してしまった。確かにぬぼーっと大きな図体で立ってる所は大型犬そのものだ。


「何かね僕時々そう思って。あっちこっちに連れて行ってもらう時センパイにだっこされたりおんぶしてもらったりするの大好きなんですよ。ハイジみたいじゃないですか!兄さんも好きだけど乾さんも大きいおにいさんみたいで大好き」

(.....だっこ...?...)


.....ちょっと途中でドキリとする発言はあったが気持ちはわかる。兄にないマメさが葉末の気に入る所なのだろう。


快諾を得て大型犬と小さい飼い主が出て行くのを見送る。

愛想のいい葉末をうらやましく思いつつ一年に一回の大会の為に。
あの人との夏を少しでも長く輝かせる為に走り出した。


辺りは暗くなってて星が随分綺麗に見えた。






......................................





海堂の浴衣...かわいかった....来てよかった....海堂が七夕に浴衣でいる確率78%....恥ずかしがるのも...また...いい....。


などと反芻してると葉末が手をひっぱった。




「ねぇねぇ乾さんこの漢字なんて読むんですか?」

ポケットに突っ込んだメモを見せた。

「『やから』...かな?」

「うーん他には?先生の先とくっついた言葉なんです」

「ああ!じゃぁ『せんぱい』だよ....って!葉末くん何の話?」

「あのですね。兄さんと短冊書いてたら兄さんは僕の御願いごと読んだのに兄さん自分の読ませてくれないから悔しくて。それに僕、習ってない漢字はよめないし....」

「そ、そ、そ、そんで!そんでなんてかいてあったのっ!?」

「いたい、いたい、いたいです!そんな浴衣ひっぱらないで!」

端からみたら大男が小さい少年をかどわかしてるようにしか見えない危険な状態に我に返り眼鏡をクイと持ち上げた。


「す..すまない。ちょっと興奮して...で?なんて?」

「あのですねー。申し訳ないんですけど僕には漢字がわかってもさっぱり意味がわからないのでそのままいいますね?『せんぱいがエスのしあいにもでれますように』」

「エス?」

「はい、英語で『S』って書いてあったんです」






「.....ッ!!!」







「乾さん....?」




ふるふると震えながら眼鏡を拭いた。


「乾さんって...」




「ん?なんだい?葉末くん」



嬉しくて顔がにやけてしまうのを押さえるのに苦労する。






「兄さんの事になると何だか人がかわりますよね....大丈夫ですか?すっごい汗なんですけど...」



「そ、そ、そ!そんなことないよ!大丈夫だよ!行こう。葉末くん。おいで肩車してあげる」

「ほんとですか?わーーい!乾さんの肩車すっごい高いから大好きなんです!」




そういって誤魔化して喜ぶ葉末を頭上にのせながら







(やっぱり葉末くんとのお出かけは美味しい!!)


と思わずにはいられない乾だった。





........*********..........*********...........おわり




予想以上に乾が変態チックで書いてる私が恐いです。Mさんの日記を読んでここまで妄想をふくらます私っていったい....。いつもいい妄想の提供をありがとうございますとここでお礼を述べてみる。

イヌイは日頃葉末くんに何してるんだ!(疑似薫としてスキンシップしてたらちょっと恐い!)だ...だっこ!!肩車!もちろん葉末くんも半ズボンで美脚の持ち主である事はいうまでもありません。

この妄想をかくためだけに息子の教科書を調べて「試」は習ってるけど「輩」は習ってない事を確認する私は親としてダメダメです(自覚あり)葉末が長男と同い年でよかったよ。(しかしこんな素朴でイイ子じゃないんですが...)

大会時期とかめちゃくちゃかもしれませんが学校行ってるから夏休み前なんだよなぁーと無理矢理。地域設定とかも適当です。ハハハ。

またしても勢いで一時間くらいで書いてしまった....。妄想させたら日本一だよアタシゃ....。






ところでハイジにでてくる大型犬なんて名前でしたっけ?






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