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2003年12月29日(月)
第265話「VOICE」

「会いたい…。」




と受話器から聞こえる貴女の声は、何処か寂しげな憂いを帯びた声。




「すぐに会えるよ。」




と応える貴女への僕の声は、強がりで寂しさを隠した声。






声はすぐ側で聞こえる様でも




受話器を挟んだ貴女と僕の距離は、手を伸ばしても届かない距離にある。




会おうと思えばいつでも会える距離なのに




今日の貴女と僕の距離は、寂しさと言う壁を隔てた向こう側にある。






「会いたいよ…。」




ともう一度寂しげな声で言う貴女に





「あと少し我慢すれば、すぐに会えるさ。」




としか応えることが出来ない。






声は近いのに




貴女と僕の心の距離は近いはずなのに




寂しさが生み出した距離はとても遠い。






あと少しの夜を超えれば、すぐにでも貴女に会える。




あと少しもう少し、夜明けを迎えればすぐにでも貴女の笑顔に会える。




もし神様が居るとするならば、どうか僕の願いを聞いて下さい。






「愛する人が抱える寂しさを和らげる魔法を教えて。」






冷たい夜を包む深い闇に、僕はこの願いを声を嗄らしながら叫び続けるよ。




寂しさと言う名の壁の向こうに居る貴女に聞こえるように。




貴女の寂しさが少しでも和らぐように、僕はいつまでも叫び続けるよ。






僕の声が貴女に届くように…




僕の声で貴女の心が安らぐように…




僕は声を嗄らして叫び続ける。






深い闇を切り開くように僕は声を嗄らし叫び続ける…。









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