「会いたい…。」
と受話器から聞こえる貴女の声は、何処か寂しげな憂いを帯びた声。
「すぐに会えるよ。」
と応える貴女への僕の声は、強がりで寂しさを隠した声。
声はすぐ側で聞こえる様でも
受話器を挟んだ貴女と僕の距離は、手を伸ばしても届かない距離にある。
会おうと思えばいつでも会える距離なのに
今日の貴女と僕の距離は、寂しさと言う壁を隔てた向こう側にある。
「会いたいよ…。」
ともう一度寂しげな声で言う貴女に
「あと少し我慢すれば、すぐに会えるさ。」
としか応えることが出来ない。
声は近いのに
貴女と僕の心の距離は近いはずなのに
寂しさが生み出した距離はとても遠い。
あと少しの夜を超えれば、すぐにでも貴女に会える。
あと少しもう少し、夜明けを迎えればすぐにでも貴女の笑顔に会える。
もし神様が居るとするならば、どうか僕の願いを聞いて下さい。
「愛する人が抱える寂しさを和らげる魔法を教えて。」
冷たい夜を包む深い闇に、僕はこの願いを声を嗄らしながら叫び続けるよ。
寂しさと言う名の壁の向こうに居る貴女に聞こえるように。
貴女の寂しさが少しでも和らぐように、僕はいつまでも叫び続けるよ。
僕の声が貴女に届くように…
僕の声で貴女の心が安らぐように…
僕は声を嗄らして叫び続ける。
深い闇を切り開くように僕は声を嗄らし叫び続ける…。