MAXIMUM ★ OVERDRIVE
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2003年12月25日(木) ■ |
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第262話「REMEMBER CHRISTMAS」 |
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−1−
君が僕から離れて行ってから、もう一年以上が経つ。
月日の流れって言うのは、思ったよりも早いものだ。
しかし、心の傷が癒えるには十分な時間だった。
君は今、何をしているのだろうか?
…僕にはもう関係無いことか…。
でも、気にならないと言えば嘘になる。
君は今、何をしているのだろうか?
元気でいることを願っているよ。
街はもう、冬の装いが目立つようになって来た。
立ち並ぶ店の数々でも、クリスマスセールが始まっている。
「…クリスマスか…。」
そう言えば君は、去年のクリスマス、いつも以上にはしゃいでいたよね?
「うわぁ…すごく綺麗…。」
街中に彩られたイルミネーションを見て、子供のように喜ぶ君の姿が
いつまでも瞼の裏に焼きついて離れないよ…。
ずっと君だけを見ていた。
それだけで、幸せだった。
ずっと君と、一緒に居られると思っていた。
ずっと君と、一緒に居たいと思っていた…。
ずっと…君と…。
−2−
君の笑顔が曇りがちになったのは、いつからだったろうか?
…そう、あのクリスマスの夜からだ…。
初めは、些細な口ゲンカだった。
その口ゲンカから、僕達に亀裂が走り出すなんて夢にも思わずに…。
「サヨウナラ…。」
君はそう言って、僕の部屋の机の上に、僕がプレゼントした指輪を置いた。
僕は何も言わず、その指輪を受け取った。
部屋を出て行く君の後ろ姿が、僕が君を見た最後の姿だった…。
−3−
…あれからもう、一年近く経つ…。
月日の流れって言うのは、思ったよりも早いものだ…。
昨日部屋を片付けていたら、古いメモ用紙が出て来た。
それは僕が、君の誕生日に、君の誕生日であるクリスマスに、
横で眠る君の為に書いた、僕の手紙だった…。
この手紙が君の目に触れることは無かったけどね…。
「…恥ずかしい。」
それを見て思った僕の正直な感想だ。
「若いなぁ…。でも…」
君との思い出が、僕の中に駆け巡った…。
いつの間にか僕は泣いていた。
ただ、涙が溢れていた。
もう心の傷は、癒えたはずなのに…。
年に一度のこの日、君と過ごす思い出は、いつまでも僕の中に…。
今、この時間が止まったら…。
何度も、何度もそう祈った。
この時間が永遠に続いたら…。
何度も、何度もそう願った。
君と過ごす時間が、僕を強くするんだ…。
君と過ごす思い出は、いつまでも僕の中に…。
いつまでも君の側に、ただ君と居られたらいいなぁ…。
煌めくイルミネーション。
それよりも輝く君の笑顔。
ずっと君と居られたら…。
いつまでも、いつまでもそう願ってる…。
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「クサイなぁ…。」
そう言って僕は、メモを破って捨てた。
思い出は思い出として、いつか心の中で風化していく。
僕にもいつか、ただ懐かしいと思える日が来るのだろうか?
…そう思える日が早く来るように、
このメモは捨ててしまおう…。
君との思い出と共に
僕は、メモを破って捨てた。
君と僕の淡い思い出と共に…。
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