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2003年02月28日(金)
第5話「いつか、笑顔で会えるように」

キミと出会った時、ボクはキミに対して特に何の感情も持ち合わせていなかった。


けど、幾度か他愛無い会話をキミと交わす内に、


ボクの中に、キミという存在が深く根を張って行くことに気付いたんだ。


でもあの時、ボクにはキミとは違う誰かが居て、その女性(ひと)のことが好きだった。


・・・と、思う。


キミのボクへの気持ちにも、なんとなく気付いてた。


でもボクには、その気持ちに答えることが出来なかった。


同時に二人の女性を愛するなんて出来ないし、


一人の女性を捨ててキミの元へ行く勇気も無かったんだ。


だからボクは、キミのことを忘れようとした。


忘れたつもりだった。




一年近くが経ち、ボクは彼女とサヨナラすることになった。


あの時のボクは、意地を張ることで、彼女を愛してると思い込んでた。


本当に彼女のことが好きだったのかな?


今でも、そう思うことがある。


彼女に対して、とても失礼なことだけどね。



一ヶ月が経った。


ボクは一人のままだった。


寂しかった。


ただ寂しさだけがボクの中にあった。


そんな時だったよ。


キミから電話が来たのは…。





「一緒に、花火大会見に行かない?」





嬉しかった。


心から「救われた」と思った。


眠っていたはずの、ボクのキミへの想いが息づくことを感じた。








キミには、彼氏がいると言うのに…。








花火大会の日、浴衣姿のキミが今でも忘れられないよ…。


思春期の恋のようにドキドキしたよ。


花火なんて見えてない。


ずっとキミだけを見てた。




花火大会の日以来、ボク達は会うことが多くなった。


みんなと遊んでる時も、キミのことばかり気にしてたよ。


嫌われたくない。




キミの近くにいたい。




ずっと、そんなことを考えてた…。


夏の日の夜のことだった。


友達の一人が、ボクに告白してきた。


キミが付き添いで来てたよね。



複雑だった。



何より辛かった。



キミの目の前で、他の子に告白される。



辛かった。



とても辛かったよ。


キミのことを忘れる為に、その子と付き合ってもいいかな?


と思った。


でも、自分の気持ちに嘘を付くことは出来なかった。


だから、ボクはその子をフッた。


キミは冗談のつもりだったけど、ボクのことを責めたよね。


辛かった。


苦笑いだけがボクを支配してたよ。



その日の帰り道。


必死で言葉を探して、キミと会話を続けてた。


滑稽なボクの姿を思い出す度、恥ずかしくなるよ。


あの時、ボクがキミに言った言葉を覚えてる?




「妹みたいだ。」




ボクが、苦し紛れについた嘘を…。




次の日だったよね。


「ずっと前から好きでした。」


キミからのメールが来たのは。


嬉しかった。


何度もそのメールを読み返した。


ボクもその気持ちに答えようと思った。








キミのメールが冗談だったと知ったのは、それから数日が経った後のことだった。








そのことを知っても、ボクはキミを嫌いになれなかった。


ボクはキミへ、全ての想いを伝えた。


例えキミに彼氏がいるとしても構わないと思ったんだ。


でもキミが選んだのは、ボクでは無く彼氏の方だった。


だから、ボクはキミのことを諦めようと思った。


でも無理だった。


キミが好きだ。


諦め切れなかったよ…。




キミにフラレた後も、不思議とボク達は遊んだよね。


夏が終わり、秋が過ぎて、冬に差し掛かっても、ボク達は何度も遊んだ。


キミが悩みを抱えて辛い時もあった。


ボクはキミを支え続けようと思った。


彼氏としては無理だとしても、友達としてキミを支え続けようと思った。


楽しかった。


このままの関係でいいと思った。


でも、そんな時間は長く続かなかった。




二人きりで話しをした深夜のファミレス。


キミは泣きながら言ったよね。





「もう、会うのはやめよう。」





ボクはそれでいいと思った。


キミが彼氏とボクの間に挟まれて、苦しんでいることを知ってたから。


ボクと会う度、彼氏への後ろめたさを感じてるのも、なんとなく気付いてたから。



でも、少し愚痴を言わせて欲しい。


ボクは、彼氏の代わりでも、キープ君でも構わなかった。


ただ、キミの側に居られたら良かった。


それだけで良かったんだ…。




深夜の帰り道。


ボクはキミを家へと送り届けることにした。


いつもと変わらない道のはずなのに、


その日はやけに長く感じた。


キミはずっとボクの後ろで泣いてたね。


そんなキミを、ボクは愛しく思った。


ボクから出た言葉は、




「手、繋いでもいい?」




キミは黙って頷き、ボクに手を差し伸べたよね。


冷たく冷え切ったキミの手。


その冷たさがボクの中に染み渡る。



時を止めることが出来れば良かった…。



キミの家まで数メートル。


キミは立ち止まって、ボクが離そうとした手をずっと握り締めてた。


気付いた時、ボクはキミを抱き締めてた。


ボクの胸で泣くキミ。


潤んだキミの瞳と目が合った時、ボクはキミにキスをしてた。


何度も、何度も、キスを繰り返した。


自分を止めることがなかった…。


後悔と罪悪感が、ボクのことを責め続けてた…。


でもボク達は、何度もキスをした。


次の日の夜、キミからの電話。


今度こそ本当のサヨナラ。




「アナタに彼女が出来て、ワタシのことを友達と思える日が来たら、また会いましょう。」




受話器の向こうから聞こえる、キミの涙で滲んだ声。


切なかった。


気付いた時には、ボクも泣いてた。


でも、キミに悟られないように声で笑顔を演じてた。


電話を切った後、ボクは静かに泣いた。




キミが今どんな想いでいるか、ボクにはわからないけど、もうボクのことは忘れてください。



ボクがキミのことを好きだってこと、今も変わってないけど、ボクはキミのことを忘れるよ。



だからもう、うつむかないで。



前を向いて。


キミの生きる道。


ボクの生きる道。


お互い、前を向いて歩こうよ。


いつか、笑顔であえるように…。






※これは、一応フィクションです(苦笑)