慶應義塾大学病院,映画『CHARON』試写会&記者会見in日本外国特派員協会,PC解決

 慶應病院産婦人科。前回の投書が功を奏したのか、診察待ち状況のボードが活用されている。
看護士が名前を呼ぶ度予約人数のうち何人目まで呼んだのかがわかるようになっていた。一歩前進。

しかし待ち時間が長いのは相変わらずで、暖かくていい天気なのに病院で3時間は気が滅入る。
「待ってる間に病気になる」と付添い人らしきおばさんが話していた。

近々同じく慶應病院に手術入院するゼミの先輩からメール。

> ストレスからすごく卵巣が腫れていたくなった、という人もいるから、
> 精神状態、ストレス、生活のリズムなんかがやっぱり
> 婦人科系の臓器にはそれなりに反映されてしまうみたいです。

知らなかった。私にはストレスはそれほどないと思うが、生活のリズムはむちゃくちゃだ。
医師の診察は「ストレスというのも考えられますね。じゃ、血液検査しましょう。結果は来週来て下さい」以上終わり。

 ルータをくれた電脳キツネ目組のYさんに、ノートPCとデスクトップのデータのやり取り方法を相談していた。夏に辰巳で働いていた時にUSBメモリでマックとwindoowsのデータを相互に移していたことを今日になって思い出した。いいかもしれない。
ビックカメラで店員に相談。USBメモリは思った以上に高額で痛い。

 高橋玄さんの映画『カロン』の日本外国特派員協会での試写会と記者会見を見学しに有楽町の電気ビル20階。
よく時の人の会見ニュースで見る日本外国特派員協会は、歴史を感じさせる施設だった。
恐らく戦後すぐ作られて、今もその雰囲気を残しているのではないかと思われる。
スタッフは皆蝶ネクタイ着用。

天井が低く席の段差もないので、後列の人は英語字幕が見えなくて皆頭を左右に振りながら『カロン』を見ていた。
私は途中からだったが、4回目。セリフも覚えちゃいそう。

記者会見はすごく面白かった。玄さんの日本のアウトロー社会と映画業界の話は外国特派員たちにとってもかなり興味深かった様子。
外国人スターが来日して開かれる記者会見で芸能レポーターがするようなくだらない質問もなく。

玄さん「映画はギャングスター(やくざ)社会が支えている。やくざには『困っている人たちを助ける』という考えが基本にある。組織が大きくなれば末端もいろいろだが、ハイクラスの人たちの中には今もその精神を持っている人がいることを、かつてその社会にいた私は知っている。

 『カロン』の主人公道夫はアウトローだが、我々と同じように生きている。犯罪者として、言葉として存在しているのではない。アウトローは一般人が望む形で社会に存在している。

 日本では普通映画会社が作った映画でなければ映画館では公開できない。1997年香港に行って勉強した。日本には車や牛肉の輸入規制はあるが、映画の輸入規制はない。韓国にはクオータ制というのがあって自分たちの仕事を守ろうとしているが日本にはない。

 そういう中で『カロン』という映画で新しいやり方をしたかった。脚本と配給については初めから世界を視野に入れてスタートした。1,300万円の制作費と11日間の撮影、これでどれだけ受け入れられるかはまさにチャレンジだった。

 『カロン』はやくざの話なのに撮影をした我孫子市、柏市、流山市の各市長が応援してくれた。私はその話を聞いたときに各市長にこの映画を見たのかと聞いたら、見たと言った。この映画は各市の宣伝をしている映画ではない。なぜ千葉の各市で撮影をしたかというと主演の川本淳市の故郷であるから。

 この映画の上映について、ある事件があった。柏の大きい映画館の支配人が「『カロン』を是非上映したい」と言ってきたのに、東宝のヘッドオフィスにその話を潰された。

 その理由は非常に不思議なもので、東宝が言うには「この映画は地元で非常に応援されていて映画館に人が入りきらないから断る」というもので、柏市の観光課のトップが頼んでもだめだった。

 結局柏では松竹系の映画館で公開が決まったが、他の会社が潰した映画をピックアップすることは非常に勇気がいることである。私は今後頼まれても東宝とは仕事をしないが、松竹との仕事は一生懸命やる。

 日本の映画人はそのほとんどが反抗しないし挑戦もしない。映画を作るのはそれほど難しいことではない。しかし配給が完成した作品を買わない。何故か外国産映画は高い金で買う。

 それは香港でも感じた。香港の映画人は日本を「いいマーケット」という。これは何でも買うからという意味である。だから『カロン』は日本語の映画ではあるが、世界のハンコがあれば買うだろうと思って世界配給を目指した。その意味でこのプレヴュウはチャレンジといえる。応援してほしい。」

川本淳市さん「この映画に登場するのは娼婦とギャングと作家で、世界のどこにでもある職業であるが、一番寂しい職業でもある。人とのかかわりを避ける人がちょっと触れたりすることで変わるというようなことを描いているのではないか。

 この映画はわからない部分も多い。思いや気持を押しつけない優しい映画になっている。見た後にいろいろと話し合ってくれたら嬉しい。

 地元で撮った映画だから応援するとか世界映画だから応援するという地域の力を感じた。」

イタリア人記者の質問「世界で注目されている日本の映画監督は日本で評価される前に皆海外に出ているのはなぜ?日本は世界を経由したものなら評価をするのはなぜ?日本政府は映画を支援しないのか?」

玄さん「逆輸入なら受け入れるのは、日本人が自分で決められないからだ。日本の映画監督が皆海外に出たいのではなく、価値を求めたら海外に出ちゃった、ということ」

「日本政府は黒沢明が死んだときに『国民栄誉賞を検討する』と言った。イタリアでフェリーニが死んだら国葬だろう。失望した。」

「形式的には文化庁で映画作りの資金援助をしている。しかしその条件というのは1億円を集めた映画に対し3千万円を出すというもので、1億円集めることができるものに3千万円を出すよりも、5百万円しかないのものに出すべきではないか。
 
 結局個人の作り手ではなく大手映画会社を援助している。文化庁と映画会社は裏でつながっているが、表面上映画づくりを支援している形を整えている」

他に「映像と言葉」「アジア的イメージ」についての質問など、深い濃い話いろいろ。

「バーで続きを」とのことで、予定の時間を随分オーバーして終わったようだった。知っている人たちに挨拶。
玄さんが「来れば?」と言ってくれたのでバーに紛れ込む。
「めったに入れないところだからね」「はい、興味津々です」と入ってみれば、外国の古いホテルのバーのような雰囲気。各国のジャーナリストやマスコミ人で賑わっている。

外国メディアの人たちや映画関係者に混じってお話。
オランダの新聞記者ハンスさんに「何しているんですか?」と聞かれたので「高橋玄さんのおっかけです」と答える。
「オッカケ?何ですか?」
「えーっと、グルーピーです」
「はあ…」
「冗談ですよ」
宮崎学さんの集まりでもハンスさんを何回か見たことがある、という話をしたら、日暮里在住で檸檬屋のことを知っていた。

会見で『カロン』を「ファンタスティック!」と言って、興奮気味に質問をしていた可愛らしい女性に名刺をもらう。
オーストラリアの雑誌に記事を書いているライターで、ドラマ『24』のジャック・バウアーの同僚ニーナに雰囲気が似ている。
歯の矯正でブリッジを今日初めてつけたとかで、「ものすごく痛い」と言いながら、映画の話いろいろ。

玄さんの隣に座ったイタリア人記者はいろんなものを注文し次々平らげながら、スタッフと会話し、玄さんと東京ガスとの喧嘩話に笑い、映画『鉄男』をイタリアでブレイクさせたエピソードを語り、大変エネルギッシュな人だった。後で聞いたら日本外国特派員協会の副会長とのこと。

隣のテーブルには警察と戦うジャーナリスト寺澤有さん。初めて挨拶をする。
「私、前に寺澤さんと会いたいって今井亮一さんに言って合コンしましょう、って話になったんです。立ち消えてますが」
「ああ、そんな話ありましたねえ!覚えてますよ。そうですか。で、なんで合資会社?」
と私の名刺を見て質問される。
「何か肩書きが欲しかったのと勉強のために」
「役に立ってんですか?」
「いえ、特に」
さすが、痛いところをついてくる。って私が駄目なだけか。

気がつけば24時過ぎ、バーにいるのは私たちだけ。しかし追い出されることも無く、閉店の様子は無い。
事件などあれば記者たちが夜通し詰め続けるのだろうか。

玄さんと山の手線で帰る。会見のこと、次の映画『ポチの告白』のこと。
転んでもただでは起きない玄さんは、本当にいろんなものを見せてくれる。素敵な人だ。

「カロンは見えないけどあるんだよ、そこに行こう。」
ってこれは私だ。玄さんが会見で「カロンは出会いと別れを恐れない女の話です」と言った時、私じゃん、と思った。
だからこの映画は成功する。「冬ソナ」だって皆なりきって見てるんだから。

 帰って、昼間に買ったUSBメモリでノートPCのデータ取り込み。デスクトップで開ける?…出来た!
早速ヘアカタログを更新。さて、これから過去の髪型いろいろも掲載しようっと。

 未明には金星と月と木星が一列に並ぶ天体ショウが見られると、倉敷の『ご近所さん』が教えてくれた。しかし池袋の我が家から見える空はとても狭く、この窓から星を見たことは無い。
2004年11月09日(火)

抱茎亭日乗 / エムサク

My追加