檸檬屋新宿辞意

ある人が紹介してくれた仕事の打ち合わせ、というか面接。
檸檬屋新宿との掛け持ちは難しそう。
住枝さんに何て言おう?と考えながら3連休明けの檸檬屋新宿。
既にお客様が来ていて、住枝さんは飲んでいる。

深夜担当のOさんは演劇をやっているのだが、長期公演に出てしまい、
7月半ばまで戻らないとのこと。8日までの給料はもらって行ったのか?

休んでいるうちに住枝さんの領収書が山のように溜まり、
それとは別に数万円の「店主貸し」、今日もどこぞの支払いがあるらしい。

24時前になって突然住枝さんが怒り出す。
6時開店なのに何故5時までに来ない、と。
「言ったろうが!」
「聞いてません」
「5時までに来い!」
「お給料は変わらないんですか」
「当たり前やろうが!出来ないなら辞めろ」
「はい」
丁度良かった。

「住枝さん、そういうことはちゃんと話そうよ。いきなり怒鳴るんじゃなくて」
と割って入ったお客さんに押さえつけられながら
「客の前で掃除をするな!仕込みも全部終えているのが常識だろう!
恥ずかしくないんか!」とイスをつかみ叫び続ける住枝さん。

「桜井さん、そんな事言わないで。辞めないで」
と別のお客さんに言われるが「いえ、もう決めましたから」。

今日の帳簿をつけて、お終いだ。突然辞めて迷惑をかけるAちゃんに謝る。
Aちゃんは終電なので「じゃあ住枝さん、明日5時に」と言って帰る。

私が「今までお世話になりました。ありがとうございました」
と立ち上がって90度のお辞儀をすると
「嫌味を言うな」と少し落ち着いた住枝さん。
「嫌味じゃありません。お礼を言っているんです。
私も普通のお客さんに戻りますから、よろしくお願いします」
「お前居れ」
「まだ帳簿つけてますので終わるまで居ます」
「そういう意味じゃなくて、居れ」
「いやもう繰り返しですから、止めましょう」
「俺が韓国から帰ってくるまで居てくれ」
「んー。わかりました。明日から来ないっていうのも急なので来週いっぱいということで」

精算したお金を渡して
「前は早く来て仕込みをしたりしてたけど、住枝さんが冷蔵庫に入りきらないほど
食材を買ってきちゃうから止めたんです。洗い物もためないようにして
ちょっと掃除すればお客様を迎えられるようにしていました。」
と話す。
「そうか。悪かった」と住枝さん。

私も終電なので帰る。歌とお芝居をやっている女性のお客さんと一緒に駅まで。
「あの世代はみんなあんな感じね。うちの劇団のトップもいっつもああよ。同じ」
「そうなんですか。付き合いきれませんね。
『常識だろうが!』って、じゃあお前も常識的な経営をしろよ!って」

というわけで円満?退職が決まりましたので、皆様檸檬屋新宿にお早めにご来店下さい。
早くって言っても6時以降にお願いします。6時前は掃除中です。
2002年06月12日(水)

抱茎亭日乗 / エムサク

My追加