セルフライナーノーツ。

2001年03月21日(水) 『独立少年合唱団』。


『独立少年合唱団』を観る。


1970年代、舞台は山奥の全寮制男子中。生徒の大半は何らかの理由で両親の元では暮らせない。主人公は唯一の肉親だった父親を亡くして転入してくる、吃音の少年。転入初日、彼は類希なるボーイソプラノの声を持つ美少年と出逢う。
。。。こんな粗筋読むと鳥肌立っちゃって、なんだかイヤンな類の映画みたいだが、そんなアヤしいことはありません。(笑)
勿論、友情と独占欲と、それを超えるような曖昧なカンケイもそこにはあるけれど、少年から青年への過渡期の危うさと、大人への興味と、秘密を持つことの仄暗い愉しみや反体制への憧憬、捨てきれない肉親への想いなんかがいっぱいに詰まっていて、見終わったあともしばらく頭の中を余韻が漂っていた。邦画では久しぶりかも。


主演はちびノリダーこと伊藤淳史、相手役に藤間宇宙(この藤間くんのルックス、確かに美少年だけど生理的にダメなタイプ!(汗)よく最後まで観れたな自分!)。
脇もいいカンジに地味で渋めで軽め(笑)。さらにおどろくべきは、1年間という映画の中の時間を描くため、撮影も1年(4期)に渡って行われている!
途中で、生徒達の顔つきが変わってゆくのはメイクや髪型の効果なのかと思っていたけど。。。あれは現実だったんだ!凄い!
寄宿生活や発声練習の描写の奇妙さ(合唱部ってホントにああいう練習してるんですかね?いや〜、あまりにエロティックで。。。(笑))はいかにも外国人が好みそうなジャポニズムに溢れていて、ベルリンでバウアー賞受賞したのも十二分に頷ける。
さりげに、全共闘とかも話に絡んでくれちゃって私のツボを突いてくれる!(笑)(ここでも『ピクニックの手引き』とかって小冊子に爆弾の作り方載ってましたが。。。いわゆる三村叔父の『腹腹時計』よね)
ラストも実に私好み!(笑)(←ソレは誉め言葉なのか。。。(^-^;)


同年代の少年達を描いた作品、ということでは多少バトロワに似たところもあるかもしれない。が、バトロワが非常に乾いた、涙も血も汗も強風に引き飛ばされてしまうような烈しさを持っていたのに対して、これは全体的により瑞々しい、湿っぽさを感じる映画だ。真夏でも湿った木陰の土の匂いを嗅ぐような。
どちらが是であり非であるという訳でなく、どちらもアリ、なのだと思う。
内包されるものはどちらも等しく、違うのは彼らの存在する環境だけだ。マシンガンで隣の席の友人を殺すのと同じように、同じ譜面を見て同じ音譜を追い、唄う声に憧れやコンプレックスや憎しみを抱くのも、その背景が生み出す世界観の違い、それだけだ。
どちらがより残酷であり叙情的であるかは、単なる表現方法の違いであって、描かれている少年達の本質に違いがあるようには思えない。
けれどきっと映画評として高い評価を受けるのは『独立』の方であり、興行的にそれを圧するのは『バトロワ』なのだ。なんか、ヘンな話だ(笑)


ともかく、オススメの1本。
是非、あなたの頭の中でポーリュシカ・ポーレ流してください(笑)
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