アヂ〜。 室内に熱気が入ってきて、目が覚めました。 加えて、鼻血。貧血。猫はゲロ吐くし。最悪っス。
もうちょっと清らかな気持ちで7月を迎えたかった…。 いや、特に意味はないんだけど。
少し癒されようと思って、本を読んでました。
「ポビーとディンガン/ベン・ライス」(アーティストハウス)
図書館によっては児童書扱いになっているかもしれません。 非常に活字も大きく、読みやすい本です。
舞台はオーストラリアの南東部にある、ライトニング・リッジ。 オパール採掘のメッカとも言われるこの小さな町に、アシュモルとケリーアンの 兄妹が住んでいます。 お父さんはオパールを掘り当てて一攫千金を狙っているものの、上手くいっていません。 近頃は何だかお母さんまで生活に疲れてきているようです。 しかも妹のケリーアンときたら、架空の存在である「ポビーとディンガン」しか 友達がいないのです。 アシュモルは「大人になって、二人を忘れるんだ」と妹に言い聞かせますが、 彼女は決して二人をないがしろにしません。 どこに行くにも一緒で、いつも話かけているのです。 風変わりな町の人達も、ケリーアンの見えない友達に挨拶するようになる始末。
ある日、お父さんが二人の見えない友達を鉱山に連れて行き、ひとりで帰って 来ました。 「二人を探して欲しいの」 時を同じくして病気になってしまったケリーアン。 その願いを叶えるべく、アシュモルは町を鉱山を探し回る…。
架空の友達がいる、というのはきっと誰しもが経験したことがあるものだと 思います。 気づかないうちに、あるいは意識的に彼らとは別れる時がくるものなんで しょうが、この話に出てくるケリーアンはちょっと違いました。 ちょっと泣かせモノっぽい“あざとさ”が鼻につくかもしれません。
ここの出版社は装丁が良いですね。 この本も去年から本屋で気になっていたものです。 イメージも合っていると思うし。 話的には、もう少しポビーとディンガンを書いて欲しかったかな。 まぁその存在の不思議さ、透明さが大切だからあまり詳しくは書けないかもしれないけど。
次は、何気なく借りたら思った以上に良かった本。
「ジャンとジュール/ルージャ・ラザロヴァ」(角川書店BOOK PLUS)
通勤ラッシュの電車の中でもみくちゃにされ、不機嫌になっているジャンとジュール。 彼らはなんと、リュミエルという女性の大きなおっぱいだったのです!
右が皮肉屋で思慮深いジャン。 左がおっとりした感性のジュール。 人格を持ったおっぱいである二人は片時も離れず(そりゃそうだ)育ってきた。 そうとも知らぬリュミエルは流されるままに人生を送っていますが、 意志を持った二人の葛藤は今日も続くのです…。
うひゃひゃ。 まず出だしで大笑い。だって乳(チチ)ですよ、主人公が。 しかも結構理屈をこねたがる奴と正反対のぼんやりした奴との二人組。 読み進めていくと、これはもう二人がめちゃ愛し合ってる話なんじゃなと判ります。 片方が怒れば、もう片方が慰めたり。 いつも二人で励ましあって生きている、乳の愛(ラヴ)物語…。
フランス人て、やはり変わった人達なのかな、とか思ってしまいます。
話としては、主人公達の持主であるリュミエルが、思春期に突然“女”である ことに気づいた瞬間(それはジャンとジュールが誕生した瞬間でもあります)から、 現在に至るまでの流れが語られます。
リュミエルの人生により添いながら、自分の思い通りに生きることができない二人。
ジャンは言います。 「おっぱいと人間を区別するもの、それは、おっぱいは自殺できないってことさ」 辛辣なこの言葉通り、二人は絶望することもあります。 けれど、つまづいてばかりいるリュミエルのことを心から大事にも思っているのです。
いやぁ、なかなか良い話です。 二人の乳の愛情もさることながら、フランスの女性がどういう生活を送っているのか、 わずかですが垣間見ることができるからです。 日本と変わらないじゃん、というのがその印象。 どこの国でも働く女性は、やはりちょっぴり無理をしながら生きているんですね。 特にリュミエルのように人よりも大きな乳を持つとなると、男性から向けられる視線 を意識しないでいられないでしょうし。 乳に関る終盤のストーリーは、笑い事じゃないです。 ですが、ジュールの性格がとても爽やかなので、感動的なエンドと言えましょう。
BOOK PLUSというのは角川の新レーベルで、最近立て続けに若い女性狙いと 思われる小ジャレた本を出していますね。 この本もすっきりした写真が表紙に使われてます。 ジャンとジュールの姿も、とても可愛く表現されています。
期待しないで借りたら、良い話でした。 ギスギスした生活に疲れた時、ふと読み返したくなるような本です。 大人むけのファンタジーとして、自信を持ってオススメ致します。
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