あ〜。6月です。 しょっぱなから体調を崩してしまい、今月もダメな予感。 気分は後ろ向きなまま、本だけは手放せないのでありました。
「閉じたる男の抱く花は/図子慧」
この人はデビューはコバルトなんですが、初めから書いているものが微妙に世間からズレているのですね。 面白くないとかそういうことでなく、なかなか腐女子的にはオイシイ設定を持ちつつ、それがあまり活かされないまま終わってしまうというか…。 必ずキレイな男性や、同性愛嗜好の人が出てくるのですよ。 そして、ちょっとエロなのです。 隠微な感じの、ある意味JUNEの流れを汲むようなエロ。 けれども、結末はおいおいこれで終わりかい?と気が抜けることが多いのです。
残念ながら、今度の話もそうでした。
今までになくエロ描写を強く出してきていますが、かえってこの人の毒のある文章や設定が霞んでしまった気がします。 ライトノベルズ系の文庫と違って単行本という形になってみると、話の弱さも目につくようになると思うのは私だけでしょうか。 たとえば、これがルビー文庫とかクリスタル文庫で出て挿絵が付いていたならば、多分かなりゴマかされたと思うのです。 やはり、世間一般の土俵で勝負するには偏りのある人なのかなぁ。 キライではないんですが…。
印象としては、マイナーな味を求めてしまう山本文緒ってとこですか。コバルト仲間だし。 最近はマイナーの旗手として中山可穂が伸びてるから、ちょっとツライかもしれないですね。
「ペロー・ザ・キャット全仕事/吉川良太郎」
日本SF大賞受賞作です。 なんというか、カバーの著者の写真と紹介を見ただけで撲殺したくなりました。 非常にデキすぎの経歴とナルシー爆発の写真を載せておられます。
話はどってことないです。 連綿と繰り返されるブレード・ランナー的退廃未来社会で悪戦苦闘する青年の話。 よくある話です。そして、予想通りの話です。 私としては、初期平井和正の短編を読んで出直してきな!という感じなんですが。 しかし審査員の方々は大喜びで推薦されているようなので、悪くはないんでしょう。
題名からわかるように、猫が重要なポイントになっています。 しかもサイボーグ猫。 おそらくSF好きの人で猫嫌いという人はあまりいないと思われるので(だとすれば「夏への扉」がオールタイム・ベストSFに選ばれる訳がない)、この設定を作ったところで半分勝ったようなものですね。話がつまらなくても。
書き慣れているのか、あるいは作風が平凡なのかわかりませんが、読みやすい文章ではあります。 なんとなくモチーフとして、メガテン・シリーズの影が見えるような…。
こういう人は2作目に何が書けるのか、かなり意地悪な気持で見てしまいますね。 それを読む気になるかは、また別の話。
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