無責任賛歌
日記の表紙へ|昨日の日記|明日の日記
2005年01月18日(火) |
第59回毎日映画コンクール発表/映画『スーパーサイズ・ミー』ほか |
今日も本は小説も雑誌もマンガも何冊も読んだんだけど、感想書く時間ないです。映画見に行ったんで、その感想書くだけで時間が取られちゃうのよ。最近、日記が物足りないとお感じの方もいらっしゃいましょうが、これが精一杯ですんで、ご了承下さい。 そう言えば昨日も書ききれなかったけれど、初めてアニメ『ブラック・ジャック』を見ました。いやはやアニメファンの間で話題に上らないのも当然だなあという出来でしたねえ。いや、駄作とまでは言わないけれども、かといってすごく優れてるとまでは言えないような、なんかすげえ「それなり」感と言うか(なんかうまく言えん)。今回のキャラデザインは手塚治虫の絵に一番近い、とか言われてたけど、どうなんでしょうね。ピノコは確かにそんな感じかなあ、と思わないでもないけど(神村幸子さん作画のエンディングは秀逸)、ブラック・ジャックはどうだかねえ。なんか“甘過ぎる”気がしませんか? 力有武(ハナのでかいオッサンね)も微妙に似てなかったなあ。
仕事ではまたちょっとトンガリさんとの間にトラブルがあったのだが、もうあまり書く気がしない(^_^;)。ここまで来ると、バカをほっといてる上司の方がバカなんじゃないかって気になってくるし。そのあたりのドタバタで、少しばかり残業。いつものようにしげが駐車場に迎えに来てたんだけど、20分ほど待たせた。最近しげはココロが落ちつかなくて、30分くらい早めに迎えに来るので、残業すると、1時間くらい待たせてしまうのである。申し訳ないけど、トラブルは予測できないしなあ。
帰りの車の中で、映画の話などをしながら、ふとしげに「『スーパーサイズ・ミー』も始まってるねえ」と言ったら、「それなに?」と聞いてきたので、あらすじを説明する。 ここんとこ、映画に誘ってもなかなか乗って来なかったしげが、話を聞いた途端に「それ面白そうだね」と興味を示した。ココロとカラダのバランスが崩れて、「人に会うだけで気分が悪くなる」とまで口にするようになっていたので、少しでも外に出たいという意志を示したことはいい徴候である。まだまだ孤独感から脱しきれてはいないが、夕食もここんとこ毎日ちゃんと作ってくれてはいるので(雑炊ばかりだが)、少しずつだが生活のリズムを整えられるようになってはいる。 帰宅して、早速ネットで予告編を見たしげ、「今から見にいこうか?」と言い出した。いきなりではあるが、ここで「明日にしようよ」と言えばしげのまた気が殺がれるかもしれないし、私も2、3日前よりはまあまあ元気ではあったので(血便は止まってないが)、動ける時に動くのが一番だ、と判断した。映画館のホームページを見ると、「ファーストフード割り引きあり」とある。ハンバーガーなどを買って、それを窓口で見せれば300円割引するという、なんだかよく分らないキャンペーンである。けれど、下らないから面白い。こういうキャンペーンは大好きなので、私も乗り気になる。時間を調べるとちょうど最終回に間に合いそうなので、食べかけていた夕食を中断して天神まで出かけることにした。
シネテリエ天神で映画『スーパーサイズ・ミー』。 30分ほど早めに着いたが、ロビーで待ってるお客さんたちが、みんなファーストフードを食っている。ちゃんとキャンペーンを見てきているのだなあ(^o^)。こういう珍しくも楽しい風景は、やはり劇場通いをしなければ見ることができない。 映画は、ドキュメンタリーとしての撮り方は、奇妙なくらい『華氏911』とよく似ていた。監督自身が「体当たり」の取材をするやり方、時折つまらないギャグアニメーションを挿入して諷刺する手法、いや、そもそも「初めに結論ありき」で、情報を好き勝手に取捨選択して、都合のよい結論に持って行こうとするスタイルとか、『華氏』に酷似していると言ってもいいのだ。 にも関わらず、『華氏』がどうにも退屈で、マイケル・ムーアの“私が正義だ”面を見ていると鼻白む思いすら抱いたのに対して、本作のモーガン・スパーロック監督に対して怒りを全くと言っていいほど覚えないのはなぜなのか。それはもう、ひとえにこの人がひたすらバカだからなのだね。もちろん、これは愛すべきバカなのだ。 だいたい、どこの世界に「ファーストフードが健康に悪い」ことを証明するために、「マクドナルドハンバーガーだけを食って1ヶ月過ごす」なんて実験をするやつがいるか。もちろん、結果は分かりきっていて、監督は11キロ太って、病人になってしまうのである。 監督がそんなバカな実験をすることになったのは、ある裁判がきっかけである。ハンバーガーばっかり食べて太ってしまった女の子二人が、マクドナルドを訴えた。「私たちが太ったのはマクドナルドのせいです!」。もちろん、こんなバカな訴えは裁判長の「食い過ぎたアンタらが悪い」の一言で結審。けれど、マクドナルドが「太り過ぎと当社の食品との間に因果関係はない」と答弁で断定したことが、この裁判記録を見た監督のアタマにカチンと来た。訴え自体は難癖だったとしても、そんな「消費者の栄養問題なんか知りませんよ、私らはカネがもうかりゃいいんです」なんて態度はないじゃないか、という怒り。かくして、監督は自ら「スーパーサイズになろう」と、ファーストフード生活を始めたのである。……しかし驚いたのは、1ヶ月過ごすどころか、わずか五日で血糖値やら血圧やらが一気に正常値から異常値になっちゃうところだね。日本とアメリカとでは多分、バーガーのサイズも違うとは思うが、やっぱ、健康に悪いのは歴然としてるのである。 もう笑っていいやら悲しんでいいやらの展開になるのは、20日を過ぎたあたりから。監督が医者を訪ねてこう訴える。 「前は食べると気分が悪くなってたんですが、今は食べると気持ちいいんです」 「それは中毒です」 はい、“ハンバーガーでも食べ過ぎると中毒になる”んですよ。ファーストフードにばかり通ってる学生諸君、一日、二日、ハンバーガーを食べないでいると、気分が落ちつかない、なんてことになってませんか? この映画の一番オバカなところは、「そんな実験せんでも、ファーストフードがからだに悪いことはわかっとる」、すなわち、人体実験のデータとしては貴重であるかもしれないが、一般人から見れば監督の所業はただの「無駄」でしかない点だ。しかし、こういった“どうでもいいこと”に熱中する人間の「美しさ」を賞揚できない人間は、実は人間の本質を知らないのである。実験が終わった時、監督の恋人も友達も声を一つにして言う。「彼はいいやつだがクレイジーだ」。そう、人間の本質は狂気なのだ。我々一般人は、理性やら常識やらといったものが邪魔をして、内なる狂気をどうしても発露できない。それをこの監督はまさに「カラダを張って」我々の代わりにやってくれたのである。どうして感謝の拍手を贈らずにいられるだろうか。 だから、この映画を見たからといって、明日からファーストフードに行くのを続けるか止めるか、悩む必要はない。タバコや酒と同じく、「する人はするし、しない人はしない」、それも初めから分かりきっていることだからだ。
第59回(04年)毎日映画コンクール各賞が発表。マニアの方にはいちいち説明するまでもないことだけれど、何十年も前からアニメーションをちゃんと映画作品として評価してきた殆ど唯一と言っていい賞がこれなんですね。
■日本映画大賞 『血と骨』 ■日本映画優秀賞 『誰も知らない』 ■監督賞 黒木和雄(『美しい夏キリシマ』/『父と暮せば』) ■男優主演賞 ビートたけし(『血と骨』) ■女優主演賞 深田恭子(『下妻物語』) ■田中絹代賞 淡路恵子 ■脚本賞 荒井晴彦(『ヴァイブレータ』) ■男優助演賞 オダギリジョー(『血と骨』/『この世の外へ クラブ進駐軍』) ■女優助演賞 田畑智子(『隠し剣 鬼の爪』/『血と骨』) ■スポニチグランプリ新人賞 上野樹里(『チルソクの夏』/『スウィングガールズ』)土屋アンナ(『下妻物語』/『茶の味』)柳楽優弥(『誰も知らない』) ■外国映画ベストワン賞 『ミスティック・リバー』 ■撮影賞 鈴木一博(『ヴァイブレータ』/『機関車先生』/『ガールフレンド』/『ココロとカラダ』) ■美術賞 桑島十和子(『下妻物語』) ■音楽賞 日野皓正(『透光の樹』) ■録音賞 弦巻裕(『誰も知らない』) ■技術賞(照明) 熊谷秀夫(『透光の樹』) ■記録文化映画賞 ◆長編=『わたしの季節』 ◆短編=『螺鈿−北村昭斎のわざ−』 ■日本映画ファン賞 『ハウルの動く城』 ■外国映画ファン賞 『2046』 ■アニメーション映画賞 『雲のむこう、約束の場所』 ■大藤信郎賞 『マインド・ゲーム』 ■特別賞 双葉十三郎 故・三橋達也 ■宣伝賞 ◆最優秀賞=UIP(『シービスケット』) ◆優秀賞=ワーナー・ブラザース映画(『ラストサムライ』)/20世紀FOX(『デイ・アフター・トゥモロー』)
アニメーション映画賞に『雲のむこう、約束の場所』、大藤信郎賞に『マインドゲーム』と、昨年私の特にお気に入りだった2本が選ばれたことには、もう思いきり快哉を叫びたい気分である。年初めにはオシイがオオトモがミヤザキが、という話題だったのが、結局作品として評価されたのは「新人」の作品ばかりであったというのは実に痛快。つか感涙。 だからもう、世間の婦女子が「ハガレンが種が」といくら騒いでいようが、もう私は何も言いませんよ。これだけオタクの趣味が細分化しちゃうと、オタクのメインフィールドがいったいどこにあるのかということを問うこと自体、無意味になってしまってるからね。「オタクなら見てて当然だろう」なんてモノイイはもう通用しない時代なのだねえ。 でも、私ゃこれからもハガレンや種も見れば、ミヤザキもオシイも見る。日本アニメが一番だ、みたいな狭量な発言をするつもりもないし、商業アニメと実験アニメ、アートアニメとかの間にある垣根も考えない。映画だろうがテレビアニメだろうが、CGだろうが手描きだろうが、なんでも見たその上で誉めたり貶したりするからね。つまり、すべてのアニメを差別せずに見て行くっていうこと。それが普通に作品を評価するときの「基本」なんだから。 私自身はオタクと呼ばれようがマニアと呼ばれようが、そんな「他称」はどうでもいいのだけれど(そこまでの知識はないんだけどねえ)、ともかく“見もしないで批判する”ような、作品評価の基本もわかってない馬鹿ったれな「自称オタク」たちと、いっしょくたにされたくはないからね。
しかし、こうあちこちで『下妻物語』の評価が高いと、やっぱりDVDで買うべきかどうか本気で悩む。ちょっとしたらCSで流れるってことも、わかっちゃいるんだがなあ。
2003年01月18日(土) 『青空侍』2冠目!/『イリヤッド 入谷堂見聞録』1巻(東周斎雅楽・魚戸おさむ)ほか 2002年01月18日(金) バンパイアの夜/『ビッグマックプリーズ!!』(小屋一平)/『光の島』1巻(尾瀬あきら)ほか 2001年01月18日(木) はな゛がつま゛ってくるしい/アニメ『ジャックと豆の木』ほか
日記の表紙へ|昨日の日記|明日の日記
☆劇団メンバー日記リンク☆
藤原敬之(ふじわら・けいし)
|