無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年07月07日(月) 今年も涙の雨が降る/アニメ『高橋留美子劇場・Pの悲劇』/『探偵学園Q』11巻(天樹征丸・さとうふみや)

 七夕だけど曇天。でもってまた午後から雨である。
 今年も灑涙雨(さいるいう)なんだねえ。
 以前も書いたが、七夕に雨が降ると、牽牛と織女の二人は天の川が氾濫して会えなくなってしまう。だもんで、悲しみのあまり、涙を流す。で、七夕に降る雨のことをこう呼ぶのである。
 ちょっと恥晒しな話であるが、昔、私はこの「灑涙雨」って字をうっかり「催涙雨」と書いてて、その間違いに全く気がつかなかった。これは「洒涙雨」とも書くのだけれど、「灑」も「洒」も「そそぐ」と読むのである。『奥の細道』にも「前途三千里の思ひ胸にふさがりて、幻のちまたに離別の涙をそそぐ」って文があったね。意味は「涙を流す」ということ。これが「催涙雨」だと、「涙をもよおす」になってしまうんだよねえ(^_^;)。オシッコじゃないってば。ああ、恥ずかしい。

 牽牛と織女が天の川を渡るときには、「鵲(かささぎ)」という鳥が、群れを成して二人のために橋を作るのだそうな。
 この「鵲」(別名カチガラス)という鳥はカラス科なんですね。腹の部分だけ白くて、全体は尾の先まで黒い。白い天の川に黒い橋が架かることになるわけで、ホントにかかったら白と黒のコントラストがさぞ美しいことでしょうねえ……って、夜だから見えないんじゃないか(^o^)。古代中国人は多分、天の川のところどころにあるオビのような「隙間」を「鵲の橋」に見立てたんでしょう。
 昨日見た『猫の恩返し』のカラスの群れのシーン、ここらあたりにアイデアのルーツがあったりして(『長靴をはいた猫』はハトだったしねえ)。

 この鵲の架ける橋は、和歌にも詠まれている。
 一番有名なのは、百人一首にも採られている中納言大伴家持の歌だろう。

  かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける
  (宮中の御階は、天の川に鵲が渡した橋みたいに黒いのやけど、そこに霜が白う降りてごっつキレイやってん、つい見とれてるうちに夜が更けてしもうたがな)

 この「かささぎの渡せる橋におく霜」を「天上に白く輝く天の川の星々そのもの」、と解釈する説があるけれど、さっきも書いたとおり鵲はほぼ黒い鳥だから、そこに星が輝いてるって情景がどうもピンと来ないんだなあ。それとも腹の白い部分を「星」に見立てたのか。

 家持の歌自体は非常に美しいのだけれど、私が好きな「鵲」の歌は、実はこの歌をパロッた、壬生忠岑による本歌取りの方。こっちはあまり有名じゃないんだけどね。
 出典は『大和物語』125段。
 忠岑は泉大将・藤原定国に随身として仕えていた。ある夜定国は、酒宴の帰りに酔っぱらった勢いで、左大臣藤原時平の屋敷を真夜中だというのにいきなり訪ねる。「オラオラオラ、開けんかい! 泉の大将のお出ましや! ……ひっく、うぃ〜」「な、な、なんや一体!?」
 当然、時平はビックラこいて、「どこの宴会のついでに寄ったんや、ワレ」と大激怒。そこへ壬生忠岑がヒョイと出てきて、「まあまあまあ」となだめる。
 「わしの歌でも聞いて、機嫌なおしてくれまへんかなあ」

  かささぎの渡せる橋の霜の上を夜半に踏み分けことさらにこそ
 (天の川に架かる鵲の橋かて、一年に一度わざわざ架けますのんやで、こないな寒い夜に、霜踏みながら来たのに、ついでっちゅうことがありますかいな)

 時平はプッと吹き出して、すっかり機嫌を直し、夜明けまで酒宴を張ったとか。この歌、定国が牽牛だとしたら、時平はなんと織女にたとえられたわけで、こりゃ笑うのもわかるよねえ。昔のことだからホントにそんな関係だったりして(^o^)。しかも詠んだ忠岑自身は自分を「仲人」役の鵲になぞらえてるんだから、結局は自画自讃。チャッカリしてます。

 それにしてもここ数年、七月七日がハレだった時ってあまり記憶にないんだが、もしかして牽牛と織女さん、もう何年もセックスレスなんだろうか(^o^)。
 牽牛くん、ほんのちょっとでも晴れ間を見つけたら急いで天の川渡ってコトに及ばないと、「もっとラテンな結婚がしたかった」って、織女に愛想つかされちゃうぞ♪

 職場には毎年なぜか笹が飾られる。
 子供っぽいけど、こういう趣向でもって、職場の雰囲気を和ませようって考えてるのかもね。誰がだ。
 私も毎年願い事の札を掛けてるんだが、ナカミはいつも同じ。
 「妻が家事をしてくれるようになりますよう」
 願い事がかなったためしなんて全くないから、神様っていないなあって思いますね、つくづく。



 新番組アニメを2本続けて見る。
 1本目は、『HAPPY☆LESSON ADVANCE』第1話「ピカピカ☆制服まつり」。
 ……サブタイトル書くだけで脱力しちゃうなあ。面白いのか、これ?
 美少女シミュレーションゲームが元になってるらしいが、もう企画自体が頭打ちになってないかな。「自分の好みの女の子をゲットする」ってとこまでは理解できなくはないが(それにしたところで、あまりにも「志が低い」ので私は美少女系のゲームは殆どやらなくなってしまったのである。『センチメンタルグラフィティ』と『TO HEART』で止まっちゃいました)、相手がみんな「女教師」って、病んでないか。そのくせ、キャラが全然女教師っぽくないのもよくわからない。
 でも長々と感想を書く気にもなれないので、このへんでやめときます。ケイエイエスのアニメって全部こんなんばっか。

 2本目、『高橋留美子劇場』は『Pの悲劇』。
 CMコピーでは「全部が傑作!」とか言ってるけど、「誉め殺し」はよくないですね。高橋留美子も小池一夫の悪影響で、キャラを作りこみすぎる傾向があるんだけど。いや、「一見動物嫌い」の筧さんのことではないです。
 仕方ないとは言えるが、高橋さんは男がうまく描けない。『Pの悲劇』も、主人公の裕子の夫がいきなり「商取引相手からペンギンを預かってくる」ヤツだってのにムリがあるんだよね。つーかこんな設定自体、古色蒼然としてると思うけど。もちろんそういう設定がないとこのドラマが成り立たないのは分るけど、おかげでこのダンナさん、相当オチャラケでいい加減な人間に見えてしまうぞ。なんでこんなのと結婚したんだ裕子。
 作画レベル、演出はまあまあ。裕子が宇宙を感じるシーンはちと長過ぎたけどね。筧さんの林原めぐみは上手いけど、こういう冷たいおばさんの役がまわってくるということは、ベテランになったということでもあるけれど、ヒロインを後進に譲り渡しつつあるってことでもあるんで、ちょっと寂しい。林原さんが演じてきた「元気少女」が80年代の産物だとすれば、もうその時代は消えちゃったってことなのかな。


 マンガ、天樹征丸原作・さとうふみや漫画『探偵学園Q』11巻(講談社/少年マガジンコミックス・440円)。
 もうトリックがどうの、なんて文句は言いません。
 「前代未聞の密室トリック」とかハッタリかましてるけど、フタを開けてみたら「抱腹絶倒」「笑止千万」「羊頭狗肉」「軽薄短小」なトリックに決まってるから。
 だもんで、これから先はキャラとか設定についての話だけに限定します。
 今巻からの新キャラは福井県警の嶺刑事。安手のミステリにありがちな「主人公の探偵に敵対するヘボ刑事(だけど一応2枚目)って役回り。ミステリの歴史って百年以上も続いてるんだから、もういい加減でレストレード警部の呪縛から離れてもいいと思うんだが、相変わらずこんな薄っぺらなキャラ作るんだよねえ。人間的に深みのあるキャラクターを作ろうってアタマが天樹さんにはないのだろうか。いや、ないってことはもうわかりきっちゃいるんだけど。
 まあ、本物の刑事にも高慢なだけのバカはいるのかもしれないけれど、フィクションの刑事は本物以上にリアルじゃないと、その存在感が簡単に崩れてしまうのである。いくらDDSに反感を抱いてるからって、死体の第一発見者で、これから尋問しようって相手に対して、いきなり「目障りだ」なんて反感買うようなこと刑事が言うかい。特に子供相手なんだから、ヘタすりゃ大問題になるぞ。
 こういうティテールのいい加減さもバカミスにはやたら多い。しかしこのマンガのファンって、何が面白くて読んでるんだろう。わからん。

2002年07月07日(日) 叶わぬ願い/DVD『風のように雲のように』/『映画欠席裁判』(町山智浩&柳下毅一郎)ほか
2001年07月07日(土) オタクな××話/『こんな料理に男はまいる。』(大竹まこと)ほか



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