無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2002年11月16日(土) バカとバカによるバカ論/舞台『WAHAHA本舗全体公演・大福祭』

 本日は休日出勤。っつーかウチの職場、基本的に休日がないので、休む時に波「休みます」と言わないと休みが取れないのである。土日ごとに休みが全く取れないなんてバカな話があるか、と毎回休みを取っていて、もちろんこれを職場は拒否も出来ないのだが、上司や同僚の見る目は厳しくなる。たまにはこうして出勤しないと職場の方針に対して反抗的だと見なされちゃうのだ。反抗してんだけど。
 でも、盆と正月までこの伝で経営されちゃたまらんのだがな。
 ここで職種をバラすわけにはいかないが、本来ウチは年中無休のコンビニではないのである。それをどの口から「年末年始もお願いします」と平然と言えるかなあ。私が入籍を大晦日にしたのも、この日に仕事を休んで文句言うやつなんて、日本にゃいないだろうと踏んだんだが甘かったなあ。


 午前中でお仕事は終わり。バスで博多駅回りで帰るが、このコースをたどるのも久しぶりである。前にも書いたが福岡空港を迂回する超ロングコースなので、車で15分の距離がバスの乗り継ぎだと1時間半かかるのである。
 某有名店で食ったラーメンがイマイチだったので、うどんで口直し。ここも以前は行き付けのうどん屋で、オニギリだけ頼むとスープをオマケしてくれてたのだが、おばちゃんが別人に変わっている。カラダ壊したかどうかしたのかなあ。
 紀伊國屋を回って本を物色。


 夕方からエロの冒険者さんと待ち合わせ。福岡サンパレスで行われるワハハ本舗公演『大福祭』鑑賞の前に、今度のAIQ公演のチラシ配りをするのである。
 しげの車に乗りこむが、暖房が蒸し暑く気分が悪くなる。窓を開けようとするが、しげが「寒い」というので仕方なくガマンする。気分はますます悪くなってくるが、しげはそんなこちらの具合には全く頓着せずにクドクドと埒もない無駄話ばかり喋りかけてくるので、段々腹が立って来た。
 「オレって物忘れヒドイよね」と言うから「バカだからだろ」と言ったら「だったらバカの車に乗るなよ!」と怒る。自分でネタ振っといてバカにされたら文句言うんだから勝手なものだ。バカであることは罪でもなんでもないが、バカであることを自覚していながら、それを恥とも思わないのはバカを通りこして罪悪ですらある。
 他人はしげのバカを見ていても遠慮してなかなかバカとは言えない。私のバカを他人が遠慮して直接は言いにくいのと同じだ。夫婦でお互いにバカと言いあって何が悪いか。私はしげの指摘する自分のバカはバカだと認めてるのに、しげだけは自分のバカを素直に認めようとしないのである。
 なんだか本気で帰ろうかって気になってきたが、チラシ撒きの仕事があるのでそうもいかない。 

 エロさんとはお宅の前で合流。
 待ち合わせ場所は予め教えられてるのに、注意力散漫なしげはトロンと通り過ぎてしまって、近所をグルグル回るハメになってしまった。こういうところがやっぱりバカなんだが、バカと言われるのがイヤなら事前に場所を調べておくとかくらいのことはしておくものだ。バカと言われない方法など簡単なのである。たいした手間でもないのにそういう大事なことをサボるからしょっちゅう失敗ばかりしているということに気付いてほしい。マジで。
 随分早くに出発したつもりだったのだが、相撲の九州場所が始まっていたせいか、福岡サンパレスまでの道が異常に混んでいる(興行がある国際センターはサンパレスの隣なのである)。
 サンパレスの前まで既に30分以上かかり、時計は5時半を回っている。駐車場にすぐに入れないと困るので、とりあえずエロさんと私が車を降りて、チラシ撒きに行くことにする。実際の会場は6時、開演は7時なのでまだ余裕はあるが、念のため、と考えたのは賢明であった。
 サンパレス下の通りでエロさんとチラシ配りを始めたのだが、6時を過ぎてもしげは戻ってこない。不思議に思って電話連絡を入れると、しげ、なぜか笑っている。
 「どうしたんだよ、今どこだよ」
 「今、箱崎」
 福岡在住でない人にはよくわかるまいが、サンパレスのある博多埠頭のところから数キロは離れたところである。
 「……なんでそんなところにいるんだよ!」
 「車線移動しそこねて、どこ走ってんだろうなーって思ったら目の前が『夢タウン』」

 箱崎の「youme 夢タウン」とは、サティなどと同様の郊外型のショッピングセンターである。確か前にここまでしげがタコ焼きを食いに来たことがあったと思うが、外見がゴテゴテしててショッピングセンターっぽくないな、という印象があった。箱崎には放生会で有名な箱崎宮があるのだが、日頃から繁盛しているわけではない。日常的に集客できる場所が必要、ということで作られたのだろうが、箱崎に住んでる者以外で、たかがショッピングセンターにわざわざ足を運ぶ人もいまい。
 なんでまたそんなところにまで、とは思ったが、このときには、この「夢タウン」ネタでこの日もう一度「イタイ」目に会うとは、全く思ってもみなかった。

 しげのあまりのアホぶりに呆れたが、ともかく「さっさと戻って来い!」と叱って、チラシ撒きを続ける。エロさんに「しげ、今、箱崎だそうです」と伝えたら口をアングリと開けて絶句していた。こういうマンガみたいなドジをやらかす人間が現実にいるとは信じられなかったのだろう。
 しかし、アナタが信じようと信じまいと、バカは確かにこの世に実在しているのである。

 実際にしげが戻ってきたのは更に1時間後。交通規制に引っかかって戻ってこれなかったそうだ。けれど道を間違えなければもっと早く戻ってこれたはずだから、こんなの自己弁護の言い訳でしかない。
 公演ギリギリまでチラシ配り、三人でおおよそ五、六百枚ほど配ったろうか、以外と手に取ってくれる人が多かったのは嬉しかった。このうち何人が公演に来てくれるものだろうか。

 7時よりいよいよ『〜千年に一度のカーニバルがやってくる!〜 WAHAHA本舗全体公演・大福祭』。
 会場ナレーションが名古屋章だったので驚く。最近テレビで見ることが少なくなっているが、たまに見かけるともう随分老け込んでいて病気じゃないかと思うほどであった。ご本人もそれを自覚して露出を避けているのかもしれない。やや括舌がはっきりしてなくて「ワハハ本舗」が「わはぁあはほんぽ」と聞こえはするが、お元気そうで安心した。二代目ドン・ガバチョ、健在なり。
 最初は神輿と大団扇でのお祭り騒ぎで、祭り衣装にフンドシのワハハメンバー、舞台はおろか客席も走り回る。今回は全ての演目が「祭」のキーワードで括られているのだ。
 何十人もの乱舞はさすがに迫力だったが、特に久本雅美嬢が私の真正面で踊り狂ってるのを目の当たりにしたのは圧巻であった。ナマはやっぱ凄いわ。
 よく見ると、フンドシメンバーの中に知った顔が何人かいる。向こうもこちらに気がついたようで目が合ってニヤリと笑う。知り合いの某大学生が何人か、ワハハのお手伝いに来ていたのだ。ヤバイなあ、あいつらまた私のことをヘンにウワサするんだろうなあ。
 実はこのオープニングセレモニーで、とってもおもしろいことがあったのだが、エロさん、ご自身の日記にも恥ずかしがって書かれていないことなのであえて書かない。聞きたい人はエロさんご本人に聞くように。私は記憶力がないのでそろそろ細部は忘れている(^o^)。

 思いつくままに演目をご紹介。

 柴田理恵、久本雅美嬢による「神輿漫才」。
 お二人が神輿の上に乗って互いの私生活を暴き合う凄まじいもの。神輿を担いだメンバーが二人の罵倒に合わせて「ハグキ、ハグキ、ハグキ(もちろん久本さんのことである)」「ブス、ブス、ブス(もちろん……私はそうでもないと思うんだが)」と罵り合う。久本さんが担ぎ手を○○○に誘った途端に「カンベン、カンベン、カンベン」と一斉に裏切って手を横に振るのが笑える。

 佐藤正宏「新体操日舞」。
 ギャグ一切無しの躍りだが佐藤さんがやるからこそ可笑しい。別にトリックでもなんでもなくちゃんと新体操を日舞の和服でやるのである。生半可な練習でできることではない。客を喜ばせることよりも先に「感心」させてしまうことは、必ずしも舞台役者の本意ではなかろうが、佐藤さんっていかにも失敗しそうじゃないの。驚きと感心がやっぱり先に立っちゃうのだね。

 オムニバス「奉納」。
 メンバー全員がいろんなモノを「奉納」する。
 梅ちゃんが勝栄さんたちに「タン(牛の舌ではなく口から吐くやつである)」を「奉納」されてたのはかわいそうだったが、もっとかわいそうなのは前列の客だった。霧吹きの中に吐いた「それ」を裸の梅ちゃんに吹き付けるものだから、「匂い」が客席にまで漂ってくるのである。我々は前から五番目だったが、それでもしっかり「匂って」ました。一応芳香剤入れてたみたいだけどね。
 すずまささんが博多ネタを披露。
 駅のキオスクで買って来た博多名物「博多ぶらぶら」(そういうお菓子があるんである)を見せながら歌うのである。
 「駅のおばちゃんが歌うんだよ〜、『博多ぶらぶらぶらさげて〜♪』、おばちゃん『知らんね?』って言うけれど〜、そんな歌、全国区じゃないよ〜、おばちゃんも続きを覚えてない〜」
 ……博多の人間にはイタイネタである(-_-;)。
 更にすずまささんは歌う。
 「駅のおばちゃんに聞いたらね〜、『博多の新スポットってどこなの〜?』、おばちゃんしばらく考えてポツリと言ったよ〜、『夢タウン?』」
 場内大爆笑である。私はシンクロニシティにもだえていたが、隣のエロさん、ビックリして「どうしたんですか!?」と私を心配してくれる。心配いりません、心がイタかっただけです。
 このネタは他地方ではやってないだろうから、ここでご紹介しておくのは意味があろう。

 「WAHAHA合唱団」。
 ドリフ合唱団を想起していただきたいが、ナマの舞台だけにアレより過激。
 例えば「健忘症によるハンガリアン舞曲」。なんかおととい聞いたばかりなんだけど。WAHAHA全員によるア・カペラは九響とは迫力が違う。
 文字ではとても写せないが、「あっあああっあっ、あっあっあー!」と、あの旋律に乗せて健忘症の人たちが思い出したような思い出せないような仕草で歌うのである。アイデアが秀逸。
 またもや久本嬢が「男日照のジムノペディ」を披露。
 「占い師が三十五で、結婚できると〜、言ったのは三十七〜♪」と久本さんが歌うと、後ろでコーラスが一斉に「結婚♪結婚♪」と唱和。
 「ファンからこないだ言われたの〜、『ぶっちゃけレズでしょ〜?』♪」
 「お帰りなさいを言ってくれるのは〜、いつもセコムの声〜♪」
 ……見てるこちらは大爆笑だが、歌ってて本気で寂しくないか、久本さん(^_^;)。
 会場参加による「ブーブークッションによる演奏」もあったけど何の曲だったかは忘れた。最後は梅ちゃんによる「次の舞台までの場繋ぎのための『運命』」。
 「ネタがないぞー!」と愚痴る梅ちゃんが情けないけど面白い。


 佐藤正宏・中山省吾「ベアーズ」。
 あー、新宿2丁目限定のギャグシリーズだそうです。
 さすがにこのネタだけは詳しく書きたかね〜な(^_^;)。
 つまり、子供服に身を包んだこの二人、ホモなのね。赤塚不二夫や江口寿史が好んでやってたあのネタなわけよ。
 で、今日はワハハの男メンバーが全員でさ、ホラ、あのポキッて折ると光る棒があるじゃん、あれをお○○に突っ込んで、場内の照明を落として……。
 「ホタル」。
 これがきれいなんだよ〜(T∇T)。色とりどりでさあ。
 演劇史上、最も汚い美しさであろう。
 最後、使った棒は会場のファンに配りました。貰うやついるんだからスゴイよなあ。私の後ろの女の子も「ほしい!」と呟いてたし。……○○コ付いてるけど舐めるの?

 「世界の祭」。
 世界各国の祭で『遠山の金さん』とか『ぶらり日本歩き旅』とかの日本のテレビ番組を世界の人々が演じるというなんだかアタマがクラクラするようなスケッチ集。
 一番受けたのは『渡る世間はケチャばかり』。
 赤木春恵(柴田理恵)と泉ピン子(勝栄)の口ゲンカを回りでみんな「ケチャケチャ」言ってるのである。意味はないが意味がないからこその迫力がそこに生まれる。佐藤さんの角野卓三は実物ソックリで驚き。

 とても中身を全部は書ききれないが、最後は歌って躍って、花を会場に撒き散らして終幕。3時間半、あっという間であった。いい席を取ってくださったエロさんに感謝である。

 エロさんをご自宅に送って帰宅。
 しげ、公演の間中ムッツリしたままだったので、バカって言われたことずっと気にしてたのかと思ったら、そうではないらしい。しげにはワハハの笑いがイマイチ趣味に合わないようなのである。
 もともと私がWOWOWでワハハを見ていたら、「なんでそんなん見るん!」と怒るくらいワハハを嫌っていたので、よく公演に行く気になったな、と思っていたのだが、「芝居をナマで見られる機会があるなら別」なんだそうである。
 「でも、つまんなかったんだろ?」
 「『渡る世間はケチャばかり』はすごく好きだよ。でももっとやりようがあると思うけどね」
 ……やっぱりけなしてるじゃん。確かに洗練された芸というのとはほど遠い舞台だが、「笑いはこうでないと」というシバリは、喜劇の場合は舞台を硬直化させかねない。下品でも直裁的な感覚に訴えるギャグもあっていいと思うが。


 ヨソの芝居を見てばかりもいられない。
 ウチの芝居の原稿、明日までに多少加筆せねばならないのである。
 帰宅したあとは徹夜で原稿書き。
 こういう時にこそ、しげに「はい、夜食♪」とか言ってオニギリでも握ってくれたら嬉しいんだけど、さっさと布団に潜りこんで寝てしまったのであった。
 なんだか今日は終日、しげに振りまわされてたような。

2001年11月16日(金) 若葉マークはどこへ行く/歌劇『さまよえるオランダ人』(ドイツ・ザクセン=アンハルト歌劇場)ほか
2000年11月16日(木) 風邪がまだ治らんがな



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