無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年12月29日(土) これでもだいぶ短くしました。/映画『シュレック』/DVD『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』

 体調もいいので、朝からキャナルシティに向かい、映画『シュレック』を見る。
 AMCでは字幕スーパー、日本語吹替版をダブルで上映してくれていて、好きなほうを選べるのが嬉しい。こういうのがシネコンのいいとこだね。
 通常、私は字幕版を見るか吹替版を見るかで迷うことは全くないんだけれど、今回はしげが「マイク・マイヤーズもエディ・マーフィも嫌いだしぃ、山寺宏一さんの方にしようかなあ」と悩んでいるので、見るギリギリまで迷うハメになる。
 結局、「そういや、日本語版、藤原紀香だっけ?」としげが眉間にシワを寄せたので字幕版を見ることにしたが、なんか嫌わなきゃならない理由でもあるのか。確かに「客寄せパンダ」であることはハッキリしてるんだけど、予告のテレビ特番じゃ、そう悪い出来でもなかった感じだったけど。そう言えば『サウスパーク』にも出てたな、金魚役で(^o^)。
 ハマちゃんもどの程度のテンションでやってるのか気になるし、DVDが出たら吹替版も確認してみたいところだ。

 さて、映画本体の出来だけれど、見ている間、楽しめはしたのだけれど、商業論理に引きずられた映画作りにはやはり疑問は残る。
 ディズニー映画のパロディにするつもりならば、フルCGではなくてセルアニメーションで作んなきゃ意味ないじゃん、というのが実は致命的な欠点。
 『FF』もそうだったけれど、所詮は「CGでここまで出来るようになりました」ってレベルを越えられてないからなあ。唯一、CG作品をCGでパロったプリンセス・フィオナの『マトリックス』シーンは、ギャグのレベルとしては『最終絶叫計画』と変わりない。ここで「あえて『マトリックス』のパロディをやらない」というギャグに関しての厳しさがドリームワークスのスタッフには欠けているのである。でも、CMでこれを流しまくっているのはいかにもキャッチーだからなんだよね。商業論理が優先されている、というのは、そういうことなんである。

 アニメと言えばディズニーというイメージに挑戦した作品はもちろんこれまでにも世界各国で作られていて、本作はそれらの集大成であるとは言える。けど、それはまあ親切な解釈で、悪く言えば既成作品の稚拙なパクリとも言える。
 ドラゴンとの城での攻防戦は、構図や演出面から言っても、『やぶにらみの暴君』や『長靴をはいた猫』にインスパイアされていることは明白だし、ロビン・フッドのミュージカルシーンなんかメル・ブルックスの『ロビン・フッド キング・オブ・タイツ』そのまんまだ(『アリババと40匹の盗賊』も入ってたな)。 もっと言っちゃえば、おとぎばなしのパロディならば、テックス・アヴェリーの方がよっぽど切れ味のいいギャグを何十年も前にやっている。「赤ずきんが実は○○」とかな(^o^)。「お姫さまが実はお転婆」なんてこんな古臭い設定でパロディになると考えてるんだったら、パロディという手法自体、舐められたもんだなあ、と鼻白む思いさえする。
 つまり、ディテールを見て行くと、そのほとんどが反ディズニーの既成作品の寄せ集めになっているわけで、その点では芸がないと断ずるしか仕方がないのだ。

 確かに、ドリームワークスのアニメ部門がこれ以上失敗できない苦境に立たされていた、というのはわかる。
 『キング・オブ・エジプト』が成功したとは言い難いこと、セルアニメ(厳密には手描きではないけれど)だとウリがないことなど、それらの点を考慮してのフルCGという選択は確かに間違いではなかろう。
 実際に本国ではディズニーの『アトランティス』を蹴散らして大ヒットしているそうだから、「どうして手描きアニメにしなかったのか」なんて批判は野暮だ。そんな風に野放図に言い放ったところで、「それじゃ客は来ないよ」、の一言で済まされてしまうだろう。
 でも、結局それって、「本当に面白い映画を作ろう」という思いからはほど遠いのは否定出来ない事実だろう。
 同じネタで、日本のスタッフが作れば、ずっと面白くはなる、それは確実だ。。しかし、そうなると今度は毒が強すぎて、アニメ慣れしていないアメリカじゃ逆に受けなくなるように思う。でも、原恵一や大地丙太郎が監督した『シュレック』の方が10倍は面白くなると思うんだけど、それだったら見てみたいと思いません? 既に『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの冒険』(こっちは本郷監督だけど)にそういう要素はあったけどね。

 ファークアード卿の悪役ぶりの見せ場が少なく(コイツがまた「やぶにらみの暴君」ソックリ)、ラストが盛りあがらないこともあるし、物足りなさはやたら感じる。オチもまあ、『美女と野獣』に反発すればああなることは予測がつく。つまるところ、「映画を見てビックリ」というワクワク感はあまり感じられなかったのだ。
 けれど、作画、演出、テーマの全てに渡って、これまでディズニー一辺倒でクソ駄作を乱発してどん底状態にあったアメリカアニメが、その呪縛から解き放たれて、ようやく鑑賞に堪えるアニメを作り出した、という点は大いに評価しなければなるまい。というか、アメリカ人にもディズニーに飽き飽きしてた人間も多かったんじゃないか。『パワーパフガールズ』のヒットと『シュレック』のヒットは、明らかに連動しているのだ。
 私の場合、似たような映画をこれまでやたら見ちゃってるせいで新味を感じないだけで、素直に見れば退屈することのない佳作なんである。
 日本じゃ本国ほどにはヒットしてないみたいだけれど、日本にも「ディズニーって、夢があるから好き」なんて目をうるませてる藤○朋○みたいな○○○はいるからねー、そういうやつらにはぜひ見せたいアニメだったりするのだ。
 
 しげに感想を聞くと「まあまあ」。
 まあ、そんなとこだろう。


 今日もラーメンスタジアムに行ってみようかと思ったが、既にホールが人で溢れ帰っていて断念。けれど、これは明らかに「反博多ラーメン」の機運が高まってる証拠じゃなかろうか。
 アンケート結果で、優勝するのは果たして博多ラーメンかその他のラーメンか。どこのらーめん屋に行ってもとんこつ細麺しかないって偏ってる状況を打破してくれそうな気配は確実に感じる。 

 でも、食い損なうと昼飯にはラーメンに拘りたくなるのである。
 ウチの近所のベスト電器を回って生ビデオテープを買いこんだあと、ウチの一風堂に立ち寄る。
 気がつかなかったが、しげと二人でここに来るのは初めてだった。私はときどき一人で食べに来てたんだが。
 「なん、いつの間にアンタ、来とったん」
 とウラミがましい目で見るしげ。でも私はしげだって、私に隠れていろいろ美味しいものを食べてることがあるのを知ってるので、聞き流す。
 広い通りに面しているとは言え、筑紫通りから横に入ったところにあるので、それほど混んでないんじゃないかと思っていたらアテが外れて、こちらも昼どきで満員、10分少々待たされた上に、学生らしい男ふたり連れと相席である。
 真向かいにいるからどうしても二人の会話が聞こえてくるんだが、やっぱり話題は「ラーメンスタジアム」。
 片方は横浜のラーメン横丁かどこかにも行ったことがあるとかで、「やっぱり横浜は美味い」なんて喋ってる。意見は意見としてわかりはするんだが、ラーメン屋の中で他のラーメン屋の話をするってのは、礼儀としてしないって感覚がこの人たちにはないのかなあ。メシに毒でも入ってない限り、その店の中でその料理の悪口は言わないってのは、誰にでもある常識だと思ってたんだが、今どきはそうでもないのか。
 ここのラーメン、麺の固さやスープの味が選べるので、とんこつ嫌いの私でもまあ、食べられる。たまには濃い味が食べたくなることもあるので、辛口を頼むが、やっぱり水を大量に飲まないと「舌にもたれる」。
 岡田斗司夫さんも一風堂には来たことあるそうだけれど、舌に合ったのかなあ。


 休日を堪能しようと、帰宅して、買ったままでまだ読んでない小林よしのりの『戦争論2』を探すが、見当たらない。
 ウチはともかく既に本棚に収納スペースがなく、床がどんどん平積みの本で侵食されて行っているので、どこに行ったかわかんなくなることが多いのだ。
 あちこち探して、ソファーの上にとっ散らかったしげの上着やら下着やらの中に『……2』と書いた本らしきものの背表紙が見えて、「あ、こんなところに!」と取り出してみたら、それはしげが買ったばかりの『螺旋回廊2』というエロゲーであった。
 ……たいして中身に差はないかもしれんが。


 DVD『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』見る。
 オタク的に細かいことを言うと、「地底怪獣」と書いて「バラゴン」と読むのが正しい(^^)。
 ついでに言うと、どこぞのライターが「怪物を、もともとは博士の名前である『フランケンシュタイン』と呼ぶようになったのは、この映画のせいではないか」なんて書いてたが、この混同は既に本国の『フランケンシュタインの花嫁』のときから始まっている。タイトルロールの「花嫁」ってのは理屈で考えると、博士の花嫁なんだけど、たいていの観客がエルザ・ランチェスター演ずる「怪物の花嫁」のことだと思ったのだ。
 しげは額が広いので、昔「フランケン」と仇名されてたそうだが、これも正確には「モンスター」と呼んであげなくちゃいけない(^^)。
 こんなどーでもいことに拘ってるから、オタクは嫌われるんだけどもな。特に女の子に。
 最近、某チャットで、それと気づかず中学生の女の子と会話しちゃったんだけど、初手から「私、オタクって嫌いなんです。すぐ自分の考え押しつけてくるから」と言われて、「オタクにもいいオタクと悪いオタクがあるんだと思ってください」なんて言い訳をして、自己嫌悪に陥ってしまった。
 オタクにいいも悪いもあるかい(-_-;)。女の子に嫌われたって、「オレはこれが好きだ!」と自信をもって叫ぶくらいの気概がなくてどうする。全く修業が足りんことである。
 いわゆる劇場版と海外版の2種類があると巷間伝えられる『フラバラ』(あまりこの作品省略して言う人いないと思うがめんどくさいんでこう略す)だけれど、今DVDのリーフレットで、ようやく「海外版と言われているが実はテレビ放送されたもの」との解説が入る。実際、劇場公開を見ていない私はこれを何度となくテレビで見ているのだが、そのたびごとに「海外版のみ」と言われるオオダコとの対決で終わるので、「なんじゃこの唐突なラストは」と不審に思っていたのだ。
 実際に「幻」だったのは、劇場公開のタコなしバージョンだったのである。実際に目にして見ると、結末の座りがいいのはやっぱり劇場版の方である。バラゴンを倒し、勝鬨をあげながらも業火の中、地割れの中に沈んでゆくフランケンシュタインの哀れさは涙をそそる。ガッツポーズ取ってるヒマがあったら、さっさと逃げりゃいいじゃん、というツッコミは置くとして(^_^;)。
 オタクならば先刻ご承知、本作には『サンダ対ガイラ』という日本特撮史上屈指の名作と言われる続編が存在する。アメリカとの版権が切れなきゃ、多分更なる「フランケンシュタインシリーズ」が作られた可能性もあるんだろうけれど、二作で終わっちゃったってのはちょっと残念。


 滞っている日記の更新を頑張る。
 横目で見ているしげが「10行ぐらいで書けばいいじゃん」と言い、私も納得はしているのだが、「ただこういうことがあった」だけじゃなくて、どうしても「ディテールを書きたくなる」のが人情というもののだ。
 しげの言動なんかも細かく書いていったら、今の文章の十倍は笑えるんだが、いかんせん、分量も今の十倍かかる。
 短くしてもどうしてもこれくらいはかかっちゃうのだ。
 まあ、性格だと思ってください。


 オタクアミーゴスの総合パティオを覗いてみると、唐沢俊一さんから、この日記の記事の一部を削除したことについてご返事がある。
 オタアミ当日の唐沢さんの言動を私が日記にアップしたことで、ご迷惑をかけたと言うのに、唐沢さんは「気にされなくていいですよ」と気遣ってくださっている。つまりは唐沢さん本人の気持ちは問題ないのだが、周囲がちょっと騒いだ、ということらしい。
 だからといって、いったん削除したものを再アップする気はないので(それなら最初から削除はしない)、その旨更に謝罪のご返事を書きこむ。
 唐沢さんの「悪口」は芸の一つでメチャクチャ面白いので、それを世間にご紹介する誘惑に打ち勝つのはなかなかに難しい。実際、「こりゃさすがに書けんわ」ということでオミットしているネタは、ほかにも数限りなくあるのである。しかし、世間には、悪口言われて本気で怒るココロの狭いやつがゴマンといるからなあ。
 悪口を許容できない社会というのはタブーが多い社会、つまりは未開社会であり、差別的な社会だということになるのだが、全く逆に捉えてる人も多いのだ。
 みんなで悪口が言いあえる優しい世の中にしていきたいけど、被害者の味方面したファシストがやたらいやがるおかげで、この国は随分キュウクツになっている。
 この日記で伏字しつつも悪口を書いていってるのも、そういう「自由な雰囲気」を作って行きたいからなんだけど、道はまだまだ遠いなあ、という感じなのである。

2000年12月29日(金) やっと年末



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