無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年08月18日(土) オトナの玩具はコドモ/『悪魔の手毬唄』(横溝正史・つのだじろう)ほか

 8月3日、埼玉県東松山市のショッピングセンターの駐車場に停めてあったワゴン車から、生後6ヶ月の赤ちゃんがさらわれて7時間後に保護された事件、犯人は18歳の女子短大生だったとか。
 動機は、「車内で赤ちゃんが泣いていたのを見てかわいそうになって」と供述してるらしいが、さて、そりゃホントのことなのかねえ。
 それだったら、連れ去ったりしないで、ショッピングセンターに赤ちゃんを抱いて行って、「この赤ちゃんのお母さんは誰ですか! なんで車の中にほったらかしにしてるんですか!」と親を叱りつけてやればいいのである。
 衝動的な犯行であることは確かだが、その「衝動的」ってところがやっぱりこの犯人、ちょっとイカレた傾向があったんじゃないかと思えて仕方がない。
 あるいは男に捨てられたばかりだったとか。その男の子供を宿してたんだけど流産した、なんてことだったりしたら、いきなりトチ狂って赤ん坊をほしくなったりもするんじゃないかね。
 勝手な憶測はするもんじゃないけど、犯行の動機がどうにも腑に落ちないので、つい、いろいろと考えちゃうのである。解決とは言っても、人の心の奥までが見えたわけじゃない。本当のホンモノの真相なんてのはカミサマにだってわかりゃしないのである。

 兵庫県尼崎市の運河に、勢田恭一くん(6歳)の遺体が捨てられていた事件、逮捕されていた母親が、ようやく虐待死と遺棄の事実を認める供述を始めた。これまでは「無実です」一辺倒だったのに、なにがきっかけで自白する気になったのかな。
 物的証拠を突きつけられて観念したってところなのかもしれないが、だいたい、他に容疑がかかる人間もいないし、逮捕された時点で観念せざるをえない状況だったはずなのである。だからこそ夫婦ともに、捕まったらそれまでだと大暴れしてたんだろうし。
 のワリに、どうしてこうも往生際が悪かったのか。というか、それ以前にどうして捕まる前に逃げ出そうとしなかったのか。まさか黙ってフツーに生活してれば、どうにかなるなんて甘いこと考えてたわけじゃないよなあ。
 「殴ってたら死んだ」ってのも、バカじゃねえか、としか言いようがない。そりゃ殴り過ぎればオトナだって死ぬわい。事件自体は陰惨でむごたらしく、殺された恭一くんが余りに哀れでならないのだが、犯人の両親のバカっぷりのほうが目立ってるような気がしてならないのである。

 栃木県黒磯市で秋元美穂ちゃん(7歳)が誘拐され、無事保護された事件も、犯人の目ぼしがついたらしい。美穂ちゃんが犯人の特徴を随分細かく覚えていて、犯人二人のうち、「顔中にホクロがあって前歯が欠けてる男」の似顔絵にソックリなヤツがいるそうだ。
 しかもこいつは事件後失踪している。さっきの恭一くん殺しの夫婦よりは頭がいいというべきか。
 でもそれだって、まあ、まだマシかなって程度で、証拠をやたら残してる点でやっぱりバカなのである。……捕まえて、ただ逃がすだけって、キャッチ&リリースかってーの。
 多分、犯人は、美穂ちゃんをいったんは誘拐してみたものの、ニュースで警察にバレたことを知って怖気づき、慌てて解放したのだと思う。でも、本当によく殺されなかったものだ。凶悪な犯人だったらメンが割れてるからって、殺してどこかに遺棄してたりしてたっておかしくはないのに。

 気になるのは、どの事件も解決に向かっている理由が、別に警察の優秀さのおかげでも何でもなくて、犯人のバカさ加減にあるってことだ。
 いや、「犯人もっとしっかりせい!」って言いたいんじゃなくてね(^_^;)、ちょっと頭のいい犯人だったら、これらの事件、全部迷宮入りになってたっておかしかないってことなんだよ。
 警察にしてみれば、「犯人がバカで助かった」ってとこだろう。
 でも、こんな警察にとってラッキーな事件ばかりが続くはずはない。これから先、幼い命が断たれても、未解決のままで終わってしまうって事件もどんどん増えていくのではないか。

 これらの事件、やはりあの大阪の池田小学校乱入殺傷事件の余波なのではないかと思うのである。
 あの事件は世間に対していったい何を知らしめたのだろうか。
 潜在的な犯罪者予備軍(もちろん殆どの人間がそうであろう)に対しては、「どんなに力のない大人でも、弱い子供が相手なら自由にできる」という認識を与えてしまったと言えるのではないか。
 岡田斗司夫さんが指摘したように、現代社会の「自分の気持ち至上主義者」たちは、内実を伴わない自分自身の個性に押しつぶされて、生きてるだけでストレスを感じるようになっちゃってる。
 だから確実に断言できるのだ。
 子供が犠牲になる犯罪はもっともっと増えるだろうと。
 「キレる大人」たちは、自分たちの欲望をぶつけるための格好の「モルモット」を見つけてしまったのだから。


 朝、テレビで『ウルトラマンダイナ』の再放送をやっていたので、何の気なしに見る。本放送時、山田まりやが見たくって初めの数話だけ録画はしてたのだが、ストーリーがアホだったのと、山田まりやのボディラインをまるで生かしていない隊員服に幻滅して(おいおい)、見るのをやめていた。
 そういうわけだから、本当に何の期待もせずに見たのが『第41話 ぼくたちの地球が見たい』。
 実に期待を裏切らないアホな話(^w^) 。
 宇宙ステーションで生まれ育って、地球の大地を踏みしめたことがない子供たちを乗せた輸送船が、地球にやって来る途中で、宇宙昆虫ダイオリウスに襲われて卵を生みつけられるってんだけどね。
 まあ、「宇宙昆虫」ってアイデアはギリギリセーフかなと。外骨格だから真空中でも生きてられるんだろうってことで。
 でも、羽ばたいちゃイカンよ、宇宙空間なんだからさあ。
 こんな子供ダマシの映像作ってるから小学生にだってバカにされるんだよ。

 平成ウルトラマンシリーズを評価する人は多いけど、なぜなのかね。
 私も全ての作品を見てるわけじゃないが、丁度たまたま見たヤツは全部クズだったんだが。
 デパート屋上のアトラクショー並のストーリーのどこに感動しろってのかね。
 『劇場版ウルトラマンコスモス』もバカ映画って評判だし、見に行こうかどうしようか未だに迷うんだよなあ。

 朝食は切干大根と人参の煮付け、味噌汁に牛乳。なんかこれっていう目玉がない。退院しても朝はこんなもので押さえとかなきゃなんないんだろうなあ。
 運動がてら、岩田屋まで足を伸ばしてリブロへ行く。本屋回りもすっかり日課になっちゃったけど、こんなにしょっちゅう本屋に行くのは大学のとき以来かも。
 少年ジャンプの別冊か何かに、『ヒカルの碁』アニメ化の情報が載っている。
 ヒカルの声優は『少女革命ウテナ』『宇宙海賊ミトの大冒険』の川上とも子さん。特にダメって印象はないな。藤原佐為は千葉進歩、塔矢アキラが小林早苗。この二人については詳しく知らないので、声を聞いてみないことにはいいとも悪いとも言えない。
 それにしても、スタッフの紹介が全く記載されてないのはなぜなんだろう。アニメファン=声優ファンって認識はとっくに過去のもんだと思ってたんだがなあ。もっとも未だに『ボイスアニメージュ』だの『h.m.3』だのって声優雑誌が何種類も発行されてる事実を考えると、アニメそのものより声優をターゲットにしたファン層の方が厚いってことなのかねえ。
 マンガの新刊を何冊か買ったあと、ゲームセンターに寄って、UFOキャッチャーでヘッドホンをゲット。……こんなことしてるから、しげから「ENJOYしてるね」なんて皮肉を言われちゃうのだ。でも、病院で支給されたイヤホーン、耳に嵌めてるとどうしても耳アカがたまっちゃうし、100円でヘッドホンを手に入れられたんだから、すごく安上がりだったんだよう。

 昼食はおかめうどん、ゆかり和えにパイナップル数切れ。
 うどんのつゆはやっぱりさっぱりした薄味。献立表の材料のところを見ると、砂糖1g、薄口醤油8g、みりん2gにダシ汁が200g。このくらいのほんのり味が私の舌には合うので、私自身に文句はないのだが、他の患者さんたちは物足りなかろうなあ。

 芝居の台本を見ながら、中で使う予定の曲に歌詞を考えて当てる。
 もともとこの脚本自体、私が書いたもので、それには既に詩を書いておいたのだが、しげが「この曲がイメージに合う」と探してきた曲が、その詩に全く乗らないのである。
 で、結局、作詞を一からやりなおさねばならなくなったのだが、イマイチいいフリーズが思いつかず、中断する。


 気分転換にテレビをつけると、今日から毎年恒例の24時間テレビ。
 いったい今年で何回目になるんだろう。第1回の総合司会が欽ちゃんとピンクレディーだったってこと覚えてる人も少なくなったろうなあ。……第1回だけは私もさすがに募金しちゃったね。5000円くらいだったと思うけど。もちろん、ピンクレディーのためにだ。えへへ(* ̄∇ ̄*)。
 いや、あの時のテーマソング『OH!』は名曲でしたね。「LOVEという字がなくなった~♪」って、誰も知らんな(^_^;)。
 今はもう、「愛は地球を救う」ってテーマも、謳ってないんだなあ。もしかして毎年変えてるのかねえ。で、今年のテーマは「家族って何?」。

 多分、福岡だけの番組なのだろう、オープニングドラマとして、テーマをそのままタイトルにした『家族って何?』ってのを放送していた。主演は田中健、高橋ひとみ。福岡出身者ってことで制作してるのかな。
 田中健が保護監察官に扮して、グレた少年を構成させるって話なんだけど、いくらテーマが家族だからって、少年のグレる原因が「母親の再婚」って、いくら何でも古臭すぎないか……?
 「母さんは父さんのこと忘れちまったんだな!」って、離婚すりゃ忘れるよ、普通。ましてやかつての夫は布施博だぞ(^▽^) 。
 福岡放送のキャスターたちが大挙して出演、シロウト演技を披露しているのもイタイ。しかもみんながみんな説教臭くってよ。
 どうして地方のドラマってのは、どれを見ても山田洋次ですら扱わないような松竹大船浪漫を追い求めちゃうのかねえ。……それともこれは、橋田壽賀子の悪影響か?

 チャンネルを変えて『ウルトラマンコスモス』を見ている最中に、しげが見舞いに来る。画面を見るなり、「なんで嶋大輔が隊長!?」と目を丸くする。もっともだよなあ。小林昭二、中山昭二、塚本信夫(ああ、みな故人)と続いてきた毅然として名誉ある隊長の末裔がヤンキー上がりだもんなあ。
 しかし「EYES」の制服もやっぱりボディーラインを隠し過ぎだよなあ。いったい何のために坂上香織を起用しているのだ。脱げとまでは言わん(脱ぐわきゃないが)、せめて私服のシーンを増やせ。
 ……実は私は、未だに『電影少女』時代の坂上香織のファンなのである。『らんま1/2』のED、『プラトニックつらぬいて』を歌ってたころまでは正統派アイドルだったのになあ。最初に脱いだのはもう十年前、18歳のころか。当時、アイドルラインを外れるにはちと早すぎるんではないかい、とか、そんなに簡単に脱ぐんだったら、『電影』でも脱いどかんかい! とも思ったものであった。……なにかツライことがあったのかなあ。
 でも、この『コスモス』で『ウルトラ』のファンになった子供たちも、思春期になって『藪の中』や『マトリの女』、『卍』なんかを見て、「ボクのシノブ副隊長があんなことされてる!」とか言って傷ついたりするんだろうか。
 まあ、私の場合、桜井浩子やひし美ゆり子がヌードになってることを知ったのは思春期も遥かに過ぎてだったので、ホンのちょっとの傷ですんでるけど。
 今日の話は『怪獣一本釣り』で、主演がドイガキ隊員の須藤公一。「スドーまで出てるの!?」としげがまた驚嘆。なんか昔『あっぱれさんま大先生』に出演してた子役だそうな。特撮モノは昔も今も、いろんな人が面白い役で出てるのが意外やら笑っちゃうやら。
 今までで最高だったのは『ウルトラマンレオ』の蟹江敬三の「ブニョだよ~ん」だったな(o⌒∇⌒o)。

 『コスモス』、今回の話はまるで往年の『ウルトラマンタロウ』を髣髴とさせるオチャラケ路線だったので、特に最後まで見ることはないかと、夕食に行く。メニューはかんぱちの照り焼き、シューマイに豚ロースの角煮、キウイフルーツ。
 食べ終わった後、病室で待っていたしげに「何食べた?」と聞かれたが、とっさのことで「かんぱち」という言葉が出て来ない。というか、食ったものの記憶なんて、殆ど食い終わった瞬間に忘れているのである(この日記でメニューをきちんと書けるのは、献立表の記録をメモしていたおかげ)。
 「食は文化なり」ってこと、納得もしてるし、唐沢俊一さんの「食について書かれてない日記は日記ではない」っていうリクツも解りはするんだけど、なかなか「料理の美味さ」なんて、文章に表せないんだよねえ。味の記憶上の再現ってのが人間には一番ムズカシイことなんじゃないかとも思うのである。


 シナリオの打ち合わせを簡単にする。
 歌詞がうまく曲に乗らないことを説明して、「曲自体、変更できないか明日の練習のときにでもみんなと検討してみて」と頼む。
 しげはなんとなく不満そうだが、しげの探してきた曲、ムードはあるけれど、今いちギャグとしての効果に欠けるのである。

 しげと外出して、古本屋などを回る。
 今朝行ったばかりなのに、またリブロにも行っちゃったよ。
 初めて入った古本屋で、臼井儀人『クレヨンしんちゃん』6巻、なんと『アクション仮面VSハイグレ魔王』の帯付きがあったので、迷わずゲット。……よくこんな9年前の単行本が残ってたよなあ。
 西新は、ここのほかにも何軒か、「BOOK・OFF」のようなチェーン店ではない、昔ながらの古本屋が何軒かある。退院するまでにできるだけ回ってみて、めぼしい本を探してやろうっと。
 『ヒカルの碁』の声優の話、しげに告げたが、余り意に沿わないようなそぶり。「よしひと姐様が、どうせなら『ミスター味っ子』みたいに、原作離れてバカみたいにやってくれたほうがマシ、なんて言ってたよ」と教えてくれる。
 ……碁盤が光って爆発でもするのか。
 これがホントの「光るの碁」。……座布団一枚、取んなさい。
 リブロで、マンガを物色しながら、しげとムダ話など。どっちかと言うと、買い物そのものより、なにげなく私と会話してた方がしげは楽しいのだろうな。
 「あのね、シイナさんの奥さんって、福岡の出身なんだって」
 「だれだよシイナさんって。誠か」
 「違うよ。シイナさんと言ったら椎名高志さんだよ」
 「決まってねえよ、そんなこと」
 「で、椎名さんも今、福岡に帰省してるんだって。どこかですれ違ってるかもね」
 それはまずないな。なんだかなあ、しげってこの「偶然の出会い」っつ~か、「運命の邂逅」ってシチュエーションがえらく好きなんだよね。やっぱりこれって、女性の「オンリーユー・フォーエバー症候群」の典型なのかねえ。……でも私としげとは赤い糸で結ばれてるって言うより、しげの赤い投げ縄が私の首に引っかかってるって感じなんじゃないかって思ってるけど。


 時間が7時を回ったので、しげと別れてコンビニでお茶やむ雑誌を買う。
 入院してると外出の時間も限られるので、いつもは立ち読みですましている『SPA!』や『ダ・カーポ』なんかもつい買ってしまう。

 『SPA!』は西原理恵子の『脱税できるかな』集中連載が抜群に面白い。
 いやマジですごいよ、コレは。
 第二回で、一億円の追徴課税を五千万まで値切って、なおもまだ「誰が払うか!」と開き直っているぞ。
 と言うか、値切れるのか税金って。
 特集、『映画通が選ぶDVD』、加藤夏季が「ヒロインで見るアニメ映画」というお題で、『BLOOD THE LAST VAMPIRE』『天空のエスカフローネ劇場版』『ああっ女神様っ劇場版』『新機動戦記ガンダムW ENDLESS WALTS 劇場版』『アキハバラ電脳組 2010年の夏休み』の5本を挙げている。
 ……映画の出来不出来はこの際、関係ない。
 こりゃ、ホンモノのオタクアイドルだよ。西村知美の非ではない。こうなりゃ火田七瀬もシャンブロウも阿素湖素子も、みんな加藤夏希で映画化してもらおう!
 ああ、『ステーシー」、福岡じゃ公開しないのかなあ。先にDVDが出ちゃうんじゃないか。私は劇場で見たいんだよ! 筒井康隆も出るって言うのに。

 8時から『USOジャパン』見る。
 幽霊がお化け屋敷のエレベーターに篭っているという九州熊本県のMランドって、全然仮名になってないやんけ。
 お隣りにシュワッチ「Uランド」もあるとこだよ。
 いかにも胡散臭い女祈祷師が除霊してたんで、今はなにも出ないと思うので、安心して遊びに行こう。
 ……実は九州に住んでいながらまだ一度もMランドにもUランドにも行ったことがないのだ。これでウルトラファンを名乗ろうとは片腹痛い、と言われそうだし、しげがまだ童顔のうちに、ちょっと頭の足りない女の子を連れてるように見せかけて遊びに行きたいな。


 マンガ、魔夜峰央『親バカ日誌』(白泉社)。
 確かこの人、『より抜きパタリロ狂騒曲Ⅱ』のコメントで、「マンガ家が私生活のことを読者に知らせるのは結構弊害があってよくない」とか書いてたんじゃないかなあ。
 昔、「花の独身ミーちゃん28歳」とか書いてたのを“今でも”そうだと信じてる読者がいるそうである。魔夜さんはバンパイアか。
 と言うか、こういうマンガを描いたってのは、「もう私は結婚してて子供もいますよ~」と昔の読者に知ってもらうためだったのかもしれない。
 でもそれで離婚でもしちゃったら、離婚マンガも描かなきゃならなくなるよなあ。内田春菊だよ、それじゃ。
 離婚はないにしても、子供がグレる原因になる可能性はあるな。それもマンガに描いたらすごいんだけどね。

 マンガ、横溝正史原作、つのだじろう作画『悪魔の手毬唄』(講談社漫画文庫)。
 昭和50年代、あの空前の横溝正史ブームの真っ最中に、怪奇漫画を描かせるならこの人ということで白羽の矢が立ったのだろう、つのだじろうの手によって描かれた一連の金田一耕助シリーズの一編の復刊。
 他に『犬神家の一族』『八つ墓村』があり、これも漫画文庫で復刊される予定らしい。それならついでだから、本来完結編として描かれる予定だった『病院坂の首縊りの家』も新作として発表してほしいなあ。当時は原作の連載が長期化して、漫画化が中止されちゃったのだ。
 『手毬唄』のマンガ化に関しての最大の変更は、舞台を昭和30年代から現代(50年代)に移したことだろう。殺される三人娘がトップレスのアイドルグループってのも思いきりエロな改変だし、手毬唄自体、彼女たちが歌っている歌謡曲ってことになってる。
 でもそれよりも原作ファンが怒るのは、金田一耕助が、和服ではなく洋服姿だってことだろうな、しかも丸メガネに口ヒゲの小男(^o^)。
 「どうして原作通りじゃないの!」といきり立った女性ファンは多かろうが、実はこれ、必ずしも原作無視とは言えないのである。なぜならこのキャラクターデザインは、原作者の横溝正史が金田一のモデルにした劇作家、菊田一夫そのまんまなのである(ちょっと菊池寛も入ってるような気がする)。
 横溝正史が初めて出会ったときの菊田一夫は、作家部屋でゴロゴロしていた和服姿の書生であった。後に、功成り名を遂げて菊田は洋装するようになる。だから金田一も現代では洋装している、というわけ。
 更に言えば、金田一が変装して犯人を追いつめるのは、映画の片岡千恵蔵が金田一を変装の名人としていたことへのオマージュである。
 その辺を押さえて読めば、この本、マニアには楽しい一冊なのだ。
 解説の二階堂黎人、そういった制作事情に全く触れようとしていない。つのだじろうの経歴を紹介するのはいいけれど、これが『悪魔の手毬唄』の漫画化だってこと、忘れちゃ困るんである。

2000年08月18日(金) 気が滅入る話/『明日があるさ』(林原めぐみ)ほか



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