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2002年01月29日(火) 疼き

今のままでは耐えれないんだ...。

いつかは、こうなると思っていた。
そう、理性は抗おうとするのだが、本能がそうしろと告げるのだ。

そして、わたしはその部屋に訪れた。

「良く来たな...。」

初めて出会うのに、相手はそう切り出してきた。
まるで私が訪れるのを、判っていたかの様に...。

ここで逃げる事も出来たのだが、その時のわたしは何かに魅入られた様
に、ただ部屋の中に勧められるまま進んでいった。

殺風景な部屋の中には椅子があり、そこに掛けながら相手から自分につ
いて相手が用意していた紙に書くことを求められる。そしてその紙には
簡単な質問があり、答えねばならないようだ。

わたしは正直に書いた。もちろん秘密は厳守されるそうだ。だが、嘘偽
りを書いたところで、どうだというのだ?
そう、もう相手の領域に足を踏み入れているのだから...。

書き終わった所で紙を相手に渡すと別室に通される。

その時気付いたのだが、私の他に別の客が訪れているみたいだ...。

「世の中にはこういう事を望む人間は多かろう。普段は何食わぬ顔をし
て生活を送っていたとしてもな...」


ふと、そんな言葉が頭をよぎった。

別室には安楽椅子が数脚あり、その一つに座るように促された。
わたしはこれから始まる事を想像するあまり、少し緊張していたのだ
が、いざとなってみればじたばたしても仕方ないと思い大人しく相手の
言う通りにその安楽椅子に腰掛けた...。

男がやってきた。

これから始まることを簡単に説明され、そして先ほどの質問の答えにつ
いても2,3問われる。まぁ、仕方ないだろう。意志の疎通がなければ
お互い不利益になるのだから。

そして男は「写真を撮っても良いか?」と尋ねてきた。

わたしは、頭を縦に振り無言で了解の意志を伝え、そして撮影室に入っ
ていった。

そこで身につけているモノを外し、カメラの前に立った。カメラは私の
周りを回りながら撮影を行い、思ったよりすぐに終了した。

私は元の姿に戻り、先ほどの安楽椅子まで返った。

現像が終了するまで手持ちぶたさに窓の外等を眺めていたが、すぐに現
像が終わり、その写真を手に先ほどの男が今日行おうとすることについ
て話始めた...。

「さて、始めようか...?」

男がそう言い、先程は気付かなかったのだが安楽椅子の横に置かれた器
具を手にした。

軽い恐怖と緊張。

いくつになっても慣れないモノだ。

でも、自分の望んだ事であるのは間違いない...。
そして、男はそれをかなえてくれる。

男の「作業」は始まった。
最初に体中に何か液体を入れられる。
感覚を鈍らせる為の薬のようだ。
時間を少しおき、その薬が効いているのを確認した上で、これから私の
中に挿入されるであろう器具を手にしながら男が言ってきた。

「痛かったら、合図しろ」

わたしは、鈍った頭でその言葉を聞き、緊張のあまりに手を堅く握りし
めながらわたしはうなずいた。

そして、その器具は私の中に入ってきた。
えぐり、押し込み、かき回す...。
頭にまで響く衝撃だった。
だが、不思議と痛みは感じない。そう、先ほどの薬のおかげみたいだ。
男はこちらの反応に安心したのか力と技術の限りにわたしを責めてくる。
そう、何度も何度も器具を変え、奥の奥まで衝いて全てのモノををこそ
ぎ落とそうとするかの様に...。

わたしは耐えた。
痛みは無いとはいえ、体の中をかき回されて何も思わないわけがない。
本当は恐怖で身が縮む思いだ。
だが、今の自分はこれが必要なのだ。これをしなければ腐り落ちてしま
うのだ。
そう思い、必死に身体がこわばり筋肉が悲鳴を上げても耐え続けた。
終わった、そう思い身体を起こしては、又責められ続けた。
身体も心も限界に近かった...。

「もう、正気を保っていられるのも...」

そう思ったときに、不意に男が言った。

「終了だ。今から先程処置した所に薬を入れるから、今日はそこに
触らないようにな。後、痛むかも知れないから痛み止めも用意してある。」

と...

寸前で解放されたのだ。
わたしは最後の気力を振り絞って帰り支度をし、その部屋を出ようとし
た。
すると
「又、来いよ。今日の続きが有るんだから。そうだな、来週のこの
時間だ。わかったな?」

と、言われ素直にうなずいた。...うなずくしかなかった。
そう、まだわたしはここから離れることは出来ないのだ...。

わたしは暗鬱な気持ちのまま夜道を一人、少し朦朧としながら帰宅した。

「もう、戻れない...。」


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