# 『蒲公英』:ゾロルver.
2002年05月17日(金)

澄み切っているのではない、どこかほんわりとした青空が仰いだ先にあった。
風はなく。雲はまるで昼寝でもしているように空の青の中に身を委ね。
身体を包むうららやかな陽気。
広がる田んぼにはほのかな草の青と、蓮華の紫。
俺とアイツは、生きた土の上を歩み進めていく。

時折うたたねから目覚めた春の風が頬を撫でて遠く去っていく。
仰いだ空。白い太陽が目映い。
手をかざし、目を細める。
陽光は春の世界を優しく包む。照らすのでも差すのでもなく、光で包む。
気持ちのいい、春の午後だった。
「眠たくなるな」
洩れそうになる欠伸と共に笑いを零して小さく呟き、同意を求めて振り返ると、そこにアイツはいなかった。
少し前に自分が通り過ぎた場所、道端の一角にしゃがみこむルフィを見つける。
ほんの一瞬だけ、具合でも悪いのかと眉を顰める。ほんの一瞬だ。
すぐさまそれが杞憂と頭が思い出す。ルフィの癖。
道草癖。
「何か見つけたのか」
しゃがみこむ丸い背中に声を掛ける。
膝を抱えた腕に顎を乗せて、熱心に何かを見つめる横顔。
顔を上げてルフィがこちらを見た。笑う。
「たんぽぽ!」
短く答える。嬉しそうに頬を綻ばせて俺を見上げた。
まるで、ルフィの唇から春が零れ落ちたような、そんな無邪気で暖かい響きだった。
「たんぽぽ?」
笑みで綻ぶその表情を見つめて答えたその言葉を繰り返してから、ルフィが視線をやっていた場所に目を移す。
ちいさなたんぽぽひとつ。
黄色い、花。雑草の中に愛らしく咲いていた。
「…本当だ、たんぽぽだな」
顔を見て笑むと、ルフィは頬を崩して笑い、大きく頷いた。
「可愛いな、たんぽぽ!」
にぃっと嬉しそうに頷いてルフィが云った。
自然と俺の顔に笑みが零れる。
俺の顔を見ていた相手の視線が、不意に俺の向こう側の何かを捕らえた。
あ、と口を開いて立ち上がる。俺は目を丸くしてルフィを見る。
「あっちにいっぱい咲いてるぞ!すっげぇ!」
俺の脇をすり抜けて、ルフィが駆けて行った。それを俺の目が追う。
春めいた景色に駆けていく背中は、幼子のようだった。
思わず目を細める。
ルフィが立ち止まって振り返る。
笑顔で俺に、早く来い、と手で合図する。
春の太陽みたいに、あたたかくて柔らかくて、眩しかった。
「あんまり走ると転ぶぞ」
笑いながら歩き始めた俺の掛けた声に、転んだらゾロが起こしてくれ!と、楽しそうに返して笑うお前のそのあまりにも無邪気な姿が。
俺には、眩しくて。
早く駆け寄って春の太陽を腕の中にすっぽり収めてしまいたくて。
俺は足を速めた。





先日日記に書いたボーイズラブショートストーリーをゾロルバージョンに書き直してみた(笑)
ていってもたいして書き直してないし(笑)
もともと私の書く小説というのは、人物を入れ替えて書き直しが出来るタイプのものが多い。
そしてこういうアホな遊びをするのが好きだ(笑)
しかしいささかシャンバギでの書き換えは無理だな…
蒲公英をお宝に書き換えれば基本をそのままにして書き換えも可能かな?
それはそれで面白そうだ…(笑)

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