オミズの花道
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『 蜜の在処 』
2004年05月24日(月)
この仕事を始めてからずっと疑問に思うのは、誰あろう自分自身の事だったりする。
水商売に携わる女性は精神的に不安定な人が多いのだが、ひょっとしたら彼女等はその不安定さの穴を埋める為に、この仕事を選んでいるのではないかと時折感じる事がある。
それは鶏が先か卵が先かの言い回しの如く、『この仕事に携わっているから不安定になる』のか、『何かを埋めたいからこの仕事を選択する』のか、それは私にも解らないしそれぞれのパターンがあるだろう。他人事ではなく、瞬間の充実感を求める私自身も、どこかしらそういう部分があるのかも知れない。
この世界は昼間の世界で言うと営業職に似ていて、自分の評価や他人の評価が一目瞭然だし、自分贔屓のお客様が居ることで達成感や充実感を味わえる。
競争、駆け引き、鬩ぎあい、評価、そういう世界が苦手な人間はきっとこの世界が合わないだろう。
精神的に追い詰められて辞める子も多いが、退きはせずとも色々な意味で淘汰されていく。時給をこなすだけになっていったり、派遣業専門になったり。
それが悪いとは言わない。
人間は日々の生活の糧を得るために労働に準ずるのだから、銭を得るのに奇麗事など要らない。
それに時給をこなすだけ、派遣業専門、と言えどもそれはそれなりの苦労があり大変な仕事なのだ。
人は感情を持ってしか動けない生き物だから、自分で『時給だけ』と割り切っているつもりでも何処か引きずられてしまうものだし、開き直ろうがなんだろうが嫌な思いもする。
それに水商売の派遣は一発勝負、文句を言わせない接客技術の苦労があり、太い神経が無いと勤まらない。
・・・・いやむしろ、充実感や達成感がなく淡々と仕事をこなすほうが、この仕事に存在する蜜のような麻薬を味あわずに済むのだから幸せだと言える。
私の言う事は漠然としているだろうけれども、一度でもクラブやキャバクラにおいて売り上げで働いた方なら、また営業職のような業種で働いた方なら、此処に存在する麻薬の事を理解して戴けると思う。
先日、引退した黒服と少し話をした。
24歳である彼は今の彼女と結婚を考えており、水商売を退いて昼間の仕事に就き、彼女の両親に会いに行きたいのだと言う。
だが今、自分がどんな職業を望んでいるか、まだ掴めないのだと言う。
そんなものだろう。自分が彼と同じ年齢の頃を振り返っても、遣り甲斐のある仕事に就いてはいたが、自分の本当にやりたい職種は他にあるのではないかと模索していた。
今は確かに自分のやりたい事をし、それによって収入も得ている。そして文筆業による収入は水商売の方の収入より多く、オミズせずとも生活できない事は無い。
と、ここで冒頭の疑問に戻る。我ながら不思議でしょうがないのだけれども。
ここでどの道を選択するかは個々の問題で、彼の生き方は私が口を出す事でもないから、『これからどのジャンルに進んでも、接客業が役に立つと思って頑張ってね』とだけ告げた。
男性であるが故か、それとも若さか、この仕事からアッサリと身を引ける彼を少し羨ましく思いながら・・・・。
ひょっとしたら私は自分で思う以上に寂しがり屋なのかもしれない。
この仕事が好き、お金のため、と言いながらその実、お客様との縁と達成感、それに伴うこの蜜の呪縛から逃れられない、ただの中毒患者なのだろう。
もしくは無意識に自分の心の弱さを自覚していて、心に筋肉をつけてマッチョになり、打たれ強くなろうとしているのかも。
まあ、そういうのも悪くないかなと思う。随分と自虐的だけど。
まだまだやりたいジャンルの仕事もあって、それが将来具体化し、私にとっての蜜の場所が変わったら、やっとこの仕事から抜けられるのかなと思う。
そしてその時に、この時期を懐かしく思い出し振り返るのだろう。
願わくばその時に『も』、まだやりたい事がちゃんとあって、それに向かって進んで生きていける、そんな人間でありますように。
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