ケイケイの映画日記
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これは賛否両論だろうなぁと、観た直後に思いましたが、意外や高評価の方が多い観たいです。ランティモス好きなら、自分に寄せて解釈してしまうのかな?あわやトンデモか?の瞬間も潜り抜け、私も感慨深く好きな作品です。監督はヨルゴス・ランティモス。韓国映画「地球を守れ!」のリメイクです。
製薬会社のCEOのミシェル(エマ・ストーン)。時代の寵児のように持て囃されている彼女の事を、見つめる男が二人。養蜂場を営んでいるテディ(ジェシー・プレモンス)と従兄弟のドン(エイダン・デルビス)です。テディはミシェルが宇宙人で、地球を侵略しに来ていると思い込んでおり、ダンを助手にして、彼女を誘拐・監禁します。
タイトルの「ブゴニア」は、牛の死骸からミツバチが自然発生するという、ギリシャの神話から来ているそう。ランティモスはギリシャ人です。再生、変容、予測不能な展開などの意味を含んでいるそう。確かにそんな内容の作品です。
私は歴史や物事には、「真実」は無くて、あるのは「事実」のみだと思っています。真実=主観、事実=客観。こう言い換えられると思う。これだ!と思い込みが始まると、ネットからは検索したのと似た内容ばかりが飛び出してきて、自分と同じような思考を集め出す。エコーチャンバーの始まりです。テディの思い込みの陳腐さに、こりゃ精神疾患を患っているんだと、私は勝ってに断定しました。
宇宙人の知識はYouTubeからと言うテディ。知識を得る方法が安っぽい。一見IQが高そうな言葉を並べているから、始末が悪い。自分の今の境涯の不満を、誰かを見下す事で鬱憤を晴らす風潮を、ランティモスがテディで揶揄しているんだと思っていたら、段々様相が変わってきます。
ミシェルは誘拐されたのを悟っても、喚くでもなく平常モード。冷静を超えて、冷徹。鉄の女っぷりで、可愛げは皆無。クレバーな彼女は心理学の学位も持っているそうで、会話の心理戦で追い詰めて、解放させようとしますが、上手く行かない。
一見テディから親愛の情を見せられているようで、実は見下されているドン。自分一人では事が運べず、ドンを利用しているに過ぎないテディ。ところが初登場シーンから、ドンは少々愚鈍ながら、純粋さを感じさせるのです。可愛いんだな。そして行き過ぎたドンを諫め、ミシェルの状況に同情する、繊細な感情も持ち合わせています。一言でいうと、この作品の良心だと感じたのは、最後まで観て間違いではありませんでした。
段々と明かされるテディの背景。このぐらいから、俄然目が離せなくなります。彼をかける保安官のケイシー(スタヴロス・ハルキアス)は、元ベビーシッター。過去を詫びる様子から、テディを虐待していたかと想像しました。そして母のサンディ(アリシア・シルバーストーン←そうなの!後で解った!全然解らんよ!)は、何やらミシェルの会社の薬剤の副作用が元で、入院生活を送っています。成る程なぁ、思い込みは復讐から来ているのか?
そして最大の謎は、テディの父親。昔、出奔しているようで、理由は解らないが、それが元で一家・一族は離散してしまい、テディとダンも一緒に暮らすようになったかと想像しました。ほとんど語られない父ですが、この作品を紐解く最重要人物かと思います。
テディの家は、禍々しい雰囲気が充満しており、「悪魔のいけにえ」の、レザーフェイスの家を彷彿させます。地下室は拷問部屋か監禁部屋のよう。そして秘密の扉の中にあった「モノ」。あれは父が集め、それがバレて出奔。そのせいで、テディと母親、そしてドンは、人目につかないように暮らすしかなかったのかと思います。様々な呪縛が、テディを蝕んでいたと感じました。
どんでん返しの繰り返しの中、目が点になるオチの前。一見テディを肯定するような画面から変化します。「Where have all the flowers gone?(花はどこへ行った)」が流れる中、延々繰り広げられるシーンは、「真実」「事実」の、そのもっと奥を見据える事が大事なのだと感じました。この曲は世界中で一番有名な反戦歌です。その奥から学ばなければ。あっと驚き、そして物哀しい感動が押し寄せるラストです。
エマはランティモスのミューズになったんだよな。あの顔中目だらけな顔が、今回は少しも美しく感じなかったのは、それも役作りだったんでしょうね。髪は丸坊主、血だらけや白塗りになりながら、硬質で猛々しいキャラに、全く負けていない。アプローチは違うけど、メリル・ストリープの後継者はエマかも?
ジェシーは、良い役者になったなぁ。キルスティンが彼と婚約した時、こんな小物を選ぶなんてと、失礼な事思ってすみませんでした。静かな狂気と心の空虚感が共存し、うらぶれたテディを大好演しています。何でオスカー候補からはずされたんだろう?
以上が私の解釈。もっとネタバレで考察したいけど、この辺で。観る人によって、様々な感想が出そうな作品です。
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