ケイケイの映画日記
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2022年03月24日(木) |
「ガンパウダー・ミルクシェイク」 |
すごく良かった、めちゃくちゃ良かった、とにかく痛快でカッコいい!女性ばかりのアクションです。主役のカレン・ギランこそ若いものの、他はアンジェラ・バセット、ミシェル・ヨー、カーラ・グギノ、レナ・へディと言う、数々の名作やアクションにバンバン出演していた、お歴々。大笑いするユーモアと爽快なアクションが共存する、すごい拾い物でした。監督はナバット・パプシャド。
ティーンの頃、訳あって殺し屋の母スカーレット(レナ・へディ)と離れ離れになったサム(カレン・ギラン)。母の雇い主だったネイサン(ポール・ジアマッティ)にその後育てられ、今では組織の名うての殺し屋です。組織の金を持ち逃げした会計士をターゲットに、金の回収を命じられたサムですが、その金は誘拐された娘エミリー(クロエ・コールマン)を助け出すためだったと知り、エミリーの命を優先したため、回収に失敗。組織から追われる立場になります。
白状するとな、冒頭母娘の別れのシーンで、泣き叫ぶサム、咽び泣くスカーレットに既に爆泣き。私は母と子がお互いに恋しがるシーンに異常に弱い。もう孫も出来たので、少しは耐性で来たかと思っておりましたが、もっと酷くなっておる(笑)。しかしこれで、絶対楽しめると確信しました。
とにかくサム強ぇ!演じるカレンは身長180cmだそうで、長い手足を生かしたキレのあるアクションが、全編に渡り炸裂。見せ方も工夫があり、ネオンキラキラのボーリング場、動かない両手の使い方、エミリーを膝に乗せてのドライビングなど、盛沢山です。最初にサムの無敵っぷりを浸透させているので、ドキドキと言うより、ワクワク楽しめます。
追い詰められたサムが頼るのが、元殺し屋のアナ・メイ(アンジェラ・バセット)、マデリン(カーラ・グギーノ)、フローレンス(ミシェル・ヨー)が運営する図書館。もちろんそれは表向き。彼女らはスカーレットととも旧知で、サムを娘、エミリーを孫のように包みます。
逃亡の途中で再会する母と娘。実は常に娘を陰から見守っていました。スカーレットは夫(サムの父)を殺した相手を殺し、やはり逃亡者となっていました。サムに「殺した事を後悔した」と言います。それがため、娘と離れ離れになってしまったんですもんね。仕方なかったとは言わないところに、潔さを感じます。アナ・メイは、当初不義理をしたスカーレットに厳しかったものの、この言葉に「人間だもの。感情が先走る事はある」と、和解。
あー、これなのよ、これ。私が観たかったのは。世代を超えた女同士の連帯です。現実はなかなか難しく、女の敵は女みたいなリアリティ満載の映画も良いけれど、映画くらい、力強くてしなやかな連帯が観たいのです。その絆の核が何かと言うと、子供を守りたいと言う母性愛。なんと解り易い。それがね、何百人死んじゃう(殺しちゃう)中で、深々と伝わってくると言うこの不思議(笑)。
後半はお姉さま方、昔取った杵柄とばかり、とにかくバンバン銃をぶっ放す。これもまた、カッコいい!何が素晴らしいかと言えば、お姉さま方にもたっぷり花を持たせながら、ちゃんとサムが一番引き立っていた事。監督只者じゃないね。
花の持たせ方に、リスペクトがあったのもポイント高し。サムにもエミリーにも一番優しかったマデリンが、「久しぶりに図書館に子供が来てくれて、嬉しかった」と言う場面で、ワタクシ二度目の爆泣き。演じるグギーノね、「スパイキッズ」でママだったでしょう?私は「3」まで全部観たよ。ヨーにも高所から飛び降りさせてるし、へディはドラマの「ターミネーター」でサラ・コナーやってたでしょう?多分ちゃんと彼女たちの作品も観ているんですよ。熟年女優をこれだけ華やかには、なかなか撮れないです。
逃亡が行き詰まると、「ママ、プランBは?いつも用意してくれていたじゃない?」とサムは言いますが、スカーレットはここで殺せば、娘と暮らせなくなるのに、銃をぶっ放してしまう人です。プランBなんか無いよ(笑)。行き当たりばったりがたまたま成功したのに、離れていた歳月が、まだ母を無敵だとサムに思わせているのですね。子供の信頼を、大人は決して裏切ってはいけないのです。
お子様が出ているのに、こんなに殺しまくっていいのか?と言う問題(ほぼ大虐殺)は、みんな悪い奴だからいいんだよ、これは映画のお話しだから(笑)。主要人物で黒一点のジアマッティ。食えない親父っぷりで貫禄もあり、ハチャメチャで華やかな女性陣に、決して負けていなかったのが、作品の底上げに繋がっています。
ポニーテールにジーンズにスカジャンのカレンは、20代後半くらいに見えましたが、30半ばだそうです。うん、あと10年はこのキレは保ってくれると思うので、バンバン続編作って欲しいな。そう感じたラストでした。痛快で爽快な快作です。
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