ケイケイの映画日記
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2021年10月05日(火) |
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」 |
ダニエル・クレイグ最後のボンド。仕事が振休で初日に観ました。今回最後と言う事で、165分!長い映画が大嫌い(ついでに最近はアート系も嫌。なので「ドライブ・マイカー」なんか、敵前逃亡だ)なので、少々怯みましたが、最後まで楽しさは緩むことなく鑑賞しました。個人的には大満足なラストショーです。監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。
エージェントを退き、マイアミで悠々自適の生活を送るジェームズ・ボンド。しかし、CIAの旧友フィリックス(ジェフリー・ライト)の求めに応じ、誘拐されたロシアの科学者を救出するのに手を貸しましす。しかし、この裏には予想を超えた危険を孕んでおり、ジェームズは古巣のMI6のエージェントに戻る事になります。
冒頭レア・セドゥ演じるマドレーヌとの蜜月の様子が出てきて、???。復習しなかったので、すっかり「スペクター」は忘却の彼方を確認(笑)。段々思い出しましたが、前作未見でも、全然大丈夫。だって「007」だもん(笑)。
冒頭からボンドが不死身の男っぷりを発揮するお約束も鮮やかで、まず掴みはOK。今回はと言うか、ベン・ウィショーがQになってから、裏方全面の武器やIT関係の背負ったり、マネーペニー(ナオミ・ハリス)がボンドの心情を察して助言するなど、色濃い「チーム007」の様子が展開します。そして新参者の007ノーミ(ラシャーナ・リンチ)も登場。当初こそ「007は永久欠番だと思っていた?」と、ボンドを挑発する彼女ですが、剝き出しの敵対心が、やがて同じコードネームを持つ者の先輩として、ボンドを尊敬する様子もいいです。
長尺のため、ストーリーの言い回しが冗長になってしまい、あれこれ詰め込んで、返って解り難くなった部分が難点かな?でもボンドのカッコ良さと、華麗なアクションの数々に酔い仕入れていればいいので、問題ないかも。
今回出色だったのは、CIAエージェントのパロマを演じたアナ・デ・アルマス。「合言葉は?」と言うボンドの問いに「そんなの覚えちゃいない。私、今日が初任務なの!」のパロマですが、銃撃戦でのガンさばきも上手く、長いスリットのロングドレスからの美脚の回し蹴りも綺麗に決まり、初々しく溌溂とした初任務ぶりで、すっかり魅了されました。「私の任務はここで終わりよ!」とのセリフに、えぇ!もう出番ないの?!と、ここはすごく不満でした。
今回敵役のレミ・マレックも良かったです。オスカー俳優ですが、私の認識は小粒な演技派です。しかし同病相憐れむようなマドレーヌに愛憎をぶつける様子や、童顔の大きな目が怪しく輝き、妖気漂うような哀しい悪役を静かに好演していました。先にオスカー取っちゃったけど、オスカーの呪いには負けない名優になるかもなぁ。
レア・セデゥはなぁー。「スペクター」でも美貌の大年増モニカ・ベルッチに負けていたし、今回もアナに大負け。マドレーヌのキャラが暗いのに合わせ過ぎた感があり、芯の強さは感じましたが、それ以上でもそれ以下でもなかったです。
ダニエル初登板の「カジノ・ロワイヤル」で愛を交わしたヴェスパー(エヴァ・グリーン)は、今回もまた、死して尚登場。いや、凄い。ボンドほどの男に愛されて15年、女冥利に尽きると言うもの。五作毎回出てきたので、クィーン・オブ・ボンドガールですね。この作品の時、アタクシはマッツを見染めたのよね(ウフフ)。
全作観ているわけじゃないですが、私が子供の頃のボンドはロジャー・ムーアで、リアリティはほぼ無しでも、とにかく見ていて楽しく、豪華絢爛の中、最後は世界を救うと言うモノでした。私のボンドのイメージと言えば、ホットでタフでワイルド。インテリジェンスとユーモアを持ち合わせ、スパイとして最強なれど、女好きで、毎回ボンドガールとよろしくやっている人、でした。これ多分、ムーアや、その前のショーン・コネリーから来ているのでしょう。
残念ながらジョージ・レーゼンピー、ティモシー・ダルトンは未見。ピアース・ブロスナンは好きな俳優で、私はまた「007」を見始めました。先達二人より少々小粒なれど、スマートなボンドに違和感はなく、楽しんだものです。
そしてダニエル。シリーズを通してとても真面目なボンドだった気がします。 先達三人が陽なら、ダニエルは陰。そしてユーモアが足りない。スパイとしては最強でも、人として余裕がない感じが、ずっと気に入りませんでした。それが「スカイフォール」辺りから、やれマンネリだ、荒唐無稽だと言われていた浮世離れしたボンドを、等身大の人間として描くボンドに変更したのを、ダニエルが頑張って演じているのだと、気づきました。まっ、今でも十分浮世離れはしていますが(笑)。
能面や畳の部屋などに、監督は日系の特色を出そうとしていたのは、少なくとも悪くはないな、と言う印象です。それよりも手堅く作品をまとめ、ダニエルにも007にも敬意を込めた描き方で、そこが一番良かったです。
思えば私が全作映画館と観たボンドは、ダニエルだけです。人生の成熟期とも言える15年、共に歩んだダニエルには、感謝の気持ちでいっぱいです。今は私の007はダニエル・クレイグだよと、胸を張って言えます。
今回瞳の青さを強調されたボンドですが、ダニエル初登板時は、金髪・青い目のボンドなんて!と言われていたのを思い出しました。次のボンド候補の一番手、イドリス・エルバも、彼で何作か作られれば、誰も黒人なんて!とは言われないと思います。でもエルバは年齢がもう50前なので、もう遅い気がするな。私はヘンリー・ガヴィルに一票です。
今回のラストは意表を突くもので、とてもびっくりしましたが、ダニエルにはこれ以上ない餞であるし、またエンドクレジットの一文は、「007は永遠に」、を強く感じました。「007」、死ぬまで観ますよ!
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