ケイケイの映画日記
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2021年08月29日(日) |
「孤狼の血 level2」 |
あー、面白かった!現在緊急事態宣言真っ只中の大阪ですが、仕事と家庭の往復ばかりが二年近く続くと、相当心身に来ますよ。頑張ってずっと自粛していますが、少し息抜きしないと、メンタルぶっ壊れそうだったので、観てきました。相当ストレスが溜まっていたので、殴り合い殺し合いで血みどろなのを観たら、スカッとするかと思い(前作も面白かったしな)、この作品にしました。私は久しぶりだし、すごく楽しみましたが、先行で観た親愛なる映画友達の方が、「もうこの手はいいかな」と呟いておられて、それもよーく理解出来る内容でした。監督は白石和彌。
先輩刑事大上(役所広司)亡き後、その意思を継いで一匹狼となり、広島の裏社会を収めてきた日岡(松阪桃李)。何とか近衛を保っていたものの、上林(鈴木亮平)と言う男が、七年の刑期を終え出所してきた。上林は、自分が服役中に殺害された五十子会組長(石橋蓮司)の真相を追っていました。
冒頭からドンパチ、犬として五十子会に侵入させているチンタ(村上虹郎)から、間違えて刺されて、日岡が瀕死になるなど、私の期待を裏切らない展開(笑)。以降、口角から飛沫飛ばしまくりの怒号の連続、チャカにナイフに殴り合いのイケイケドンドンの展開に、内容より、あんな大声出したのはどれくらい前だったろうか?気持ちいいだろうなぁーと、全然関係ない事が浮かぶ私(笑)。
まぁ内容的には、やくざも警察も、新聞記者させ同じ穴の貉、「全員悪者」です。舞台設定は30年前の広島で、「仁義なき戦い」の残り香もある展開です。年長者には懐かしく、若い人にはVシネの世界かな?でも名の通る腕のある役者を、これでもかと揃えると、厚みも底上げもすると言うお手本になっています。
主役の桃李は、やくざにしか見えない風貌で、前作からの年月と出来事を表し、安定の好演でしたが、今回一番凄かったのは、巷の評判と一緒で鈴木亮平です。狂犬と表現するのは、生易し過ぎる上林ですが、極貧の在日に生まれ、親に虐待された出自の陰影を、色濃く感じます。目が怖い笑顔が怖い、残忍で苛烈な上林から、拭いきれない哀しみも感じて、出色の演技でした。
虹郎もすんごい良かった!チンピラ感満載の中、賢くはないけれど純粋なチンタを前面に押し出して、熱演でした。最後まで日岡について行ったのは、在日として差別され、浮遊した人生を歩んできた自分の人生に、確かな足跡を残したかったんだと思います。あと、民団から通知が来るときは、本名ですから。通名で書類が届いていましたが、あれは間違いです。
中村梅雀の件は「背信の日々」のデブラ・ウィンガーを思い出しましたが、FBIより日本の公安の方が上手だなと感心したり、斎藤工が出てくる度に、尾崎紀世彦を思い出しました(笑)。そっくりな事、ない?
他に良かったのは、断然音尾琢真!「仁義なき戦い」で、金子信雄演じる山守の、チャーミングな食えないオヤジっぷりに魅了された人は多いと思います。山守から思うとだいぶ小物だけど、出てくるだけでニヤつく存在は、血生臭い作品で貴重な一服となるので(これも作品の底上げの一つ)、もし続編があるなら、絶対出て欲しいな。
作家の勝目梓が自分の書く小説に伸び悩んでいる時、暴力とセックスは万人に備わっているもの。それなら自分にも書けると開眼して、一連のバイオレンス小説でヒット作を連発したとか。
こちとら寄る年波で、セックスはどうでも良いのですが(笑)、私も修業が足りず、こいつを一発殴らせてくれるなら、仕事辞めてやらぁ!みたいなのが、時々出てきます(今は居ません、念のため)。既視感バリバリでも、この手の作品に一定の需要があるのは、日々の憂さ晴らしに持ってこいだからじゃないかなぁ。自分の代わりに殴ってくれるんだもん(笑)。ラストシーンの神々しい狼を見つめる日岡の心境に自分を重ね、コロナ禍の鬱屈した日々も、頑張って耐えるぞ!と、思わしてくれる作品です。
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