ケイケイの映画日記
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2020年09月21日(月) 「オフィシャル・シークレット」




約二か月ぶり、大変ご無沙汰しておりました。九月に入り、コロナの第二派も少し落ち着いたかな?と言う頃合いで、映画館に復帰しております。復帰第一作がこちら。本当は政治的な社会派、サスペンス、思い悩む人間ドラマはスルーして、洋画でひたすら心温まる作品が観たかったのですが、それらは時間が合わず。で、結局政治的な作品に。ご贔屓のキーラ主演なので、まぁいいかと思いきや、遠いはずの題材が思い切り身近に感じて、社会に対して、純粋で真摯なヒロインに感激してしまいました。とても良心のある作品です。監督はギャビン・フッド。

 2003年1月。英国の諜報機関GCHQ(政府通信本部)の職員キャサリン・ガン(キーラ・ナイトレイ)は、米国の諜報機関NSA(国家安全保障局)から送られてきたメールに震撼。そこにはイラク戦争を強行したい米国政府が、そのために必要な違法工作を英国政府に依頼したものでした。正義感からその情報を反政府団体にリーク。しかし情報はキャサリンの思惑を超えて、新聞の一面に大々的に掲載されたのです。政府の犯人探しが始まり、彼女は窮地に立たされます。

キャサリンは当初正義感から、義憤にかられた一市民として、反政府活動をしている元同僚に情報をリーク。それは諜報部員としては反逆的な行為です。
キャサリンにはトルコ人の夫(アダム・バクり)がおり、難民認定が下りなかった夫は、週に一度、在留資格を延長しています。そんな家庭の事情もあり、告発の後、怖気づいてしまう彼女。この辺勇気はあるが、私たちと何ら変わらない、善良な小市民であることがわかります。

疑われる同僚。見当違いの目星がつけられ、良心の呵責に耐えかねたキャサリンは、自ら自分がやったと申告します。私が目を見張ったのは、ここからです。

仲の良かった同僚は、「あなたは勇気がある。あなたは正しい事をした」と、涙ながらにキャサリンに告げにきます。「あなたは悪い事はしていない」と、反対に慰めるキャサリンに同僚は、「でも正しい事もしていない」と、きっぱり返答します。あー、と私が嘆息。同僚はキャサリンの行いを見て、自分を恥じているのです。これ私だよなと思いました。キャサリンの行動を、機密漏洩として、非難する向きもあったでしょう。でもキャサリンが身近にいたとして、私も彼女の味方をしたい。でもでも、私も「正しい事」をした記憶なんて、何もありません。

裁判で裁かれることになったキャサリン。国選弁護人は、「私は離婚など民事専門なの。私ではこの裁判は勝てない。人権派の弁護士を紹介するわ。頑張って」と、ここでも陰ながらキャサリンを応援する人がいます。紹介された先が、エマーソン(レイフ・ファインズ)でした。

ここからが怒涛の展開。キャサリンは職業人としては規律違反を犯しましたが、人としては「正しい」事をしたまで。一面にしたのは、政府のオブザーバーの新聞社です。要するに提灯持ちの新聞です。ガセだとしたら、会社は転覆するはず。しかし危険を冒しても、ジャーナリストの矜持が、社運を賭けても民衆に届けたかったのです。「正しい事」をしたはずが、当初逃げ腰になってしまったキャサリンですが、周囲のうねりや励ましの中、幼い正義感が、強靭な正義感に変貌していきます。政府に向かい合い、裁判に向かい合い、夫に向かい合い、そして自分にも向かい合う。刑事の尋問に、「君は政府に使える身でありながら」と言われると、「私は国民に使えているのであって、政府に使えているのではない」と、きっぱり反論する場面が、強く印象に残っています。このセリフを聞くだけでも、現在の日本の政治家にも、観て欲しいと本当に思いました。

晩期にはスキャンダルにまみれた前政権が、コロナ禍の中、正体見たりと民衆に叩かれたのは、自分たちの納める税金の使い方が、あまりに杜撰だったからです。身近に感じる事で、これ程世の中は動くのかと、少々驚きながら眺めていました。戦争、難民、その他諸々。民衆がキャサリンのように弱者の辛さを身近に感じる時こそ、世の中は変わるのです。念願の選挙権を手にした今、誰が平和をもたらしてくれるのか、しっかり見つめていきたいと思います。


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