ケイケイの映画日記
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面白い設定だし、お友達各位、それなりに高評価だったので、期待していました。殺人事件で出所した人たちの扱い方が、あまりに雑で、折角俳優陣が演出に応えて好演しているのに、とても残念な気持ちになりました。監督は吉田八大。今回苦言が多いので、ネタバレです。
過疎化の強まる富山県魚深市。市役所に勤める月末(錦戸亮)は、上司の指示で、6人の男女の移住者(田中泯、北村一輝、優香、市川実日子、水澤伸吾、松田龍平)の世話をする事に。しかし彼ら仮出所してきた元殺人犯で、国の極秘のプロジェクトで、過疎化する町に定住させるために連れて来られた人々でした。それぞれ刑務所で取った資格を手に、仕事を得ます。事実を知らされた月末は、戸惑いながらも誠実に彼らに応対します。そんな中、同級生で月末が恋する女性、文(木村文乃)が町に戻ってきます。
まずこのプロジェクトに難があり過ぎ。上司と月末の2人だけの極秘と言うのは、如何なものか?最初にこんな案件があると、月末に相談もなしに、後出しで知らせるとは、これ如何に?そして何故月末?彼は善良で誠実なれど、愚直な男で、案件を知らないはずの後輩に出し抜かれ、色々情報を得るなど、些か鈍いところのある人です、適任とは思えません。そして、上司のパソコンから、すぐにこの案件を後輩が覘けるなんて、どこが極秘なのか?
真面目に更生しようとする人々に対し、中村有志や安藤玉恵の、心の篭った対応は素敵でした。しかし中村有志のところで働く水澤は、多分酒乱です。アルコール依存症かも知れない。殺人も酒の席なので、その事は警察ではわかっているはず。どうして事前に役所にだけでも知らせないの?水澤の失態は、それだけで防げたはずです。
月末の身体に障害のある父(北見敏之)を誘惑する優香。彼女が恋愛依存症なのは明白で、デイサービスで老人だらけの中、まだ男の残り香のある北見を見込んだのでしょう。交際に反対する月末に、「私は今後誰かを愛してはいけないのでしょうか?」と、涙ぐみますが、いけません。あなたは北見を愛しているわけじゃないから。手近にいた男が、北見だっただけで、他に若い男が見つかれば、そちらに行きます。なので、「僕が反対する話じゃなかったです」とか、反省するな、月末!今は親子の立場が逆転しているのだから、老いた父親が傷つかないよう、守るのもあんたの役目でしょ?元殺人犯で恋愛依存の女性と、自分の父親が付き合うのに、理解を示す脚本が謎です。
「愛してはいけませんか?」は、私はDVの恋人を殺めた市川実日子に言って貰いたかった。
サイコパスの龍平。もうこれが一番謎。どうして何の情報もなく、野に放つのか?北村一輝にしろ、龍平にしろ、アトランダムで選んじゃいけないでしょ?成功する人材を選りすぐるべきで、これを寓話としと観ろと言われたら、私は腹立たしいです。だいたいこの案件は、地方都市の活性化以上に、元受刑者の人権にも大いに関わる案件なのですから。一口に殺人と言いますが、全く同情できないものから、大いに情状酌量があるケースと、千差万別のはず。上々酌量組から選ぶべきです。
ラストの方の、のろろ様を使った顛末も、土俗的な言い伝えを踏襲したかったのでしょうが、私はギャグかと思いました。この始末の付け方も、すごく残念です。
俳優では、純朴で鈍感な冴えない好青年を演じて、錦戸亮が好演していたのに、びっくり。優香のフェロモンむんむんした演技も印象に残ります。他にも床屋での錦戸と水澤の髭剃りシーン、錦戸宅での、龍平とのの背筋が冷たくなる会話も良かったです。
と、折角良いシーンがあるのに、思いつきだけで起こしたような、杜撰なプロジェクトの中身が、私には最後まで許せず、結局乗れず仕舞いに終わりました。この設定は、中身をもっと吟味したら、実現するかも知れない案件です。人権に関わる事は、軽々しく扱わないで欲しいです。
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