ケイケイの映画日記
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2017年07月05日(水) |
「22年目の告白−私が殺人犯です−」 |
韓国の「殺人の告白」のリメイク。私は元作を観ているので、一番大事な部分を知っての鑑賞です。個人的には、泥臭くて破天荒ながら、パワー全開の「殺人の告白」の方が好きですが、この作品も、事件以外の様々な要素をぶちこみながら、端整な仕上がりになっており、上手いリメイクだと思いました。監督は入江悠。
1995年東京で連続殺人事件が起こりました。当時の担当刑事である牧村(伊藤英明)は、時効を過ぎ、悔しくてたまりません。そこへ突如、犯人を名乗る曽根崎(藤原竜也)と言う男が現れ、事件の全容を書いた本を、出版すると言います。美しい容姿の曽根崎は、一躍マスコミに持て囃され、苦々しい思いの遺族や牧村をよそに、本はベストセラーに。そこへ、真犯人を名乗る人物が、ネットに犯人しか知りえない動画をアップします。
元作の幹を上手く生かして、枝葉にオリジナリティを感じさせて、これは良かったと思います。枝葉に神戸の震災、生き残った者の葛藤、精神障害者の罪と罰など。そして、これは韓国版でもそうでしたが、殺人鬼が持て囃され、事件を書いた本がベストセラーになるのなど、許されていいのか?と言う点。これは昨年、例の少年Aの書いた著書でも耳目の集まった事柄なので、タイムリーでした。
各々の理由に結論を出さず、問いかける作りです。曖昧な感じは残りますが、ヒットを狙うならこの方が賢いかな?野村周平登場で、元作鑑賞組は、その後の筋立てがわかります。亡くした愛しい人への思いは、元作の方が情愛が濃く感じましたが、ここは国民性でしょう。決して今作の遺族たちが、冷静でいたわけでは、ありません。
伊藤英明は、「3月のライオン」(前後編とも見たのに、感想未。良かったです)の、陰影のある極悪キャラでは、常に眉間に皺を寄せ、苦みばしったいい男っぷりで、おぉ〜!とアタクシも目が輝いたもんですが、今回はいつもの伊藤英明で残念。フツーでした。この人、敵役や悪役の方が、光るかもね。「悪の経典」も良かったし。
藤原竜也は、面白い役者になったなぁと痛感しました。この人、確かに美形なんですが、童顔だし肩幅狭くて、一向に大人の男の匂いがしない。でももう、35歳なんですよね。男の匂いがしないのに、何故か妖艶で、男女どちらでも相手に出来そうです。男性の年齢不詳系かつ美形は見当たらないし、「ドリアン・グレイの肖像」的な作品でも企画されたら、私は観たいな。
こちらの犯人は、ちょっと強引な気はしますが、ぎりぎりセーフ。帰りのエレベーターで、ご夫婦と思しきカップルの男性が、「あんなん絶対動機として無理やん。全然わからんわ」と仰ると、奥様は「私はわかる気がするけどなぁ」と仰る。前者には正義感と人間の強さを信じる心を感じるし、後者は人の心を思いやる想像力と、感受性の豊かさを感じます。私は後者の方です(ワハハ!)。つーか、男性と女性の特性の違いですかね?
とまぁ、日本でリメイクした値打ちはある作品に仕上がっていましたが、韓国版を観た者としては、何となく物足りない感覚も残ります。元作がビールなら、こちらは発泡酒かな?でもうちの夫は、ビールは飲みなれた発泡酒が好きだそう。だから、好みと言うことで(笑)。
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