ケイケイの映画日記
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2016年07月22日(金) 「ファインディング・ドリー」(吹き替え版)




懐かしい「ニモ」から13年、今回はニモの過保護のお父さんマーリンと、ニモ探しに奔走した、忘れん坊のドリーが主人公です。お子様向きに作ってあるものの、昨今言われる「障害は不幸ではない。個性である」と言う言葉の、具体的な意味を示唆していて、今回も大変気に入りました。前回は小学生だった三男と吹き替え版観て、私の中では、ドリー=室井滋なので、今回は躊躇なく吹き替え版をチョイスしました。監督はアンドリュー・スタントン。

大冒険から一年後のニモ、マーリン(声・木梨憲武)そしてドリー(室井滋)。楽しく三匹で暮らしています。ドリーは相変わらず忘れん坊で、周囲を困らせていますが、明るく元気な性格を、ニモとマーリンは愛しています。しかしドリーには気がかりが。それは離れ離れになった、大好きな両親にもう一度会いたい事。今回はドリーが恋しい両親を探しに、冒険の旅に出ます。

再三出てくる、ドリーの奇想天外なチャレンジ精神。そのポジティブさは、どこから来るのか?それは「忘れる」からです。人間(ここでは海洋生物)は、記憶を元に、出来るか出来ないか、アバウトに判別していくものです。でもドリーは忘れちゃう。だからいつも「頑張れば出来る」と思って、挑戦するんですね。あぁ、そうなのか!と、今回目から鱗でした。その対岸にあるのが、マーリンであり、今回ひょんなことから、ドリーの冒険の相棒となるタコのハンク(上川隆也)です。記憶が彼らを、臆病にしている。

忘れると言うのは、本当は「力」なんだと思います。忘却力かな?年が行くと、あれこれ忘れるけど、長い人生、喜びばかりじゃない。哀しい事辛い事、恥ずかしかった事、腹が立った事。ごまんとあります。そんなのいちいち覚えていちゃ、しんどくって生きていけないわ。だから、老いて忘れっぽくなると言うのは、神の与えし恩寵だと思っていましたが、ドリーのような力もあったんですね。

あれこれどんどん忘れていくのに、不思議と楽しかった事は、ドリーと同じく私も覚えているのです。それが子育て。大変だったことがいっぱいあったはずなのに、本当にみーんな忘れた。両親だってそう。私の親は、褒められた親じゃなく、本当に辛い事が多かったのです。なのに今になると、家族旅行や楽しい思い出も、辛い事と同じくいっぱいあったなと、思い出せるのです。記憶が邪魔をしている時は、楽しかった感情が封印されるのですね。

何故楽しい思い出は忘れないのか?そこに「愛」があったからじゃないかなぁ。愛し愛された記憶は、脳が忘れても、心に体に沁み渡っているからじゃないでしょうか?ドリーのポジティブさと愛すべき人柄は、両親の愛情いっぱいに育った事が基礎になっていると、今回描かれます。ドリーの両親のように真っ当じゃないけど、私の両親も、私を愛してくれていたのです。

やっかいな子を持つ親のお手本のように描かれていた、ドリーの両親。しかし人知れず、ドリーはこの先一人で生きていけるのだろうか?と、母は涙し、父が支える場面があります。ここで泣きました。子供の前では、心細さを隠し、気丈に振る舞っていたのです。私たち「普通」と言われる子供を持った親は、ここを忘れている。

大変だろうと想像はついても、心細いだろうとは、想像しない。障害児を持った親は親で、心細さを乗り越える手段として、学校や保護者たちには、強気に見える態度を示す。結果理解が得られない。悪循環ですね。学校や保護者は、障害児を持つ親の要求を渋々飲むのではなく、「頑張っていますが、悩んでいます。一緒に考えて下さい」と、言い易い雰囲気を作るのが、本当に受け入れる事だと思います。

義足のジャンパー、ドイツのマルクス・レームが、健常者の大会で健常者を超える記録をコンスタントに出し続けていると、健常者の選手から、待ったがかかったそう。曰く義足が記録に有利に働いていると言う理由です。色んな方面から検証されていますが、まだ結論は出されていません。ただこれだけは言えると思う。これはレームが、「障害者芸」の粋を出てしまったから、打たれたのです。レームが障害者枠として頑張る時は励まされると応援するのに、自分たちを脅かす存在になると、排他する。これを差別と言うんじゃないかしら?

ドリーと喧嘩したり、うっかり傷つける事も言って、ニモに皮肉を言われ、たしなめられてハッとするマーリン。(ニモ、成長してるよ!)これはドリーを、仲間、あるいは家族と思っている証拠では?だから、どれだけの時間離れていても、ドリーはニモとマーリンを忘れないのです。

暑い暑い毎日ですが、深海の様子はとっても涼しく、打ってつけの暑気払いです。笑って笑ってスリリングな場面の連続にハラハラして、ちょっぴり泣いて、そして考えさせられる作品です。今年の夏一番の観客動員が予想されますが、納得の作品。


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