ケイケイの映画日記
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2016年07月03日(日) 「セトウツミ」

昨日この作品を観てきて、うちの24歳の三男に
「あんた、『セトウツミ』て、知ってるか?」と言うと、
「高校生の子が喋るだけの映画やろ?シュールなん?」
「ううん、あんたとY(三男の親友)が喋ってるみたいやった」
「ほぉ。アホな事ばっかり、喋ってるだけなんやな?」
そうそう(笑)。
二人とも、うちの息子かと思いました。ほとんど若い男の子二人が喋っているだけの映画です。それが、メッチャ面白い!場内笑いの渦の中、ペーソスもあり、お茶目で、大変好感の持てる作品です。 監督は大森立嗣。

とある大阪の高校二年生の同級生、瀬戸小吉(セト・菅田将暉)と内海想(ウツミ・池松壮亮)。お調子者で愛嬌のあるセトと、クールで低体温のウツミは対照的ですが、仲の良い二人。毎日川沿いで放課後の一時間を、ただ喋って過ごしています。

びっくりしますよ、新人の漫才師かと思いました(笑)。それも超有望株。会話に無理がなく、自然とボケ(セト)とツッコミ(ウツミ)になっている様子が、本当におかしい。正に「相方」と言う表現がぴったり。これが噂のブロマンスですか?(笑)。

内容は、しょうもない話ばっかりなんですが、本当に面白い。そして息子三人、かつて高校生だったもんを持つオカンとしては、リアリティ抜群の会話です。セトが「ほぉ、ほぉ!」と相槌打つんですが、うちの息子もそうです。お前はふくろうか?なんやねん!と、良く思うもん。ウツミがドヤ顔する時、煙草を吸う真似をするんですが、これもしょっちゅうです(笑)。これ大阪の子だけ?他の地方の子は、どうなんでしょう?

いくつかのエピソードが分かれて描かれていて、そこでの会話や回想場面で、少しずつ二人の背景が見えてくるようになっています。そして全てに、ほっこりするオチがあります。私は原作知らないのですが、ウツミは進学私立校の専願に落ちて、仕方なく中堅の公立高校に来たのかな?部活に汗を流すか、はしゃぐかの同級生が疎ましく、学校では浮いている。そして塾に行くための一時間を、毎日川べりで一人過ごすのが、日課でした。対するセトは、サッカー部で頑張っていたのに、嫌いな先輩を無視してフリーキックして、逆鱗に触れ退部。なかなか反骨心があるやん(笑)。そして時間潰しをしていたウツミの傍に、人懐こく侵入し、今に至る二人。

何故他の同級生と、対して変わらないセトを、ウツミが受け入れたのか?他の同級生のように、人の噂話をしないからじゃないでしょうか?セトの話しは主語が必ず「俺」。俺が誰を好きか嫌いか、俺のオカン、俺の部屋、俺の家のみーにゃん(猫)と、全部自分の事で、自分が何を思い何を感じるかと言う内容です。同級生を毛嫌いしているウツミには、好ましく映ったはずです。まぁ、子供っぽいからなんですがね(笑)。子供っぽいは、純粋に通じるものね。

酔っ払ってくだを巻くセトのオトンを、「あんた!、もう!」と言いながら、介抱して、家に連れて帰るセトのオカン。ウツミに見られて、恥ずかしくて堪らないセトですが、「ええ夫婦やん・・・」としみじみ言うウツミ。高校生が小馬鹿にせず、微笑ましい光景と受け取れるのは、この子が自分の家庭で、きっと屈託を抱えているからです。

対するセトは、あけすけに自分の環境を語るも、祖母は入院、祖父は認知症で徘徊、両親は離婚寸前、父親の仕事は立ち行かない(多分)と、なかなかに過酷。なのに全く圏外のいるように、ケロケロしている。セトはみーにゃんのせいで、親が離婚しそうと思っているけど、多分違うよ(笑)。しかしちょっとおバカなセトは、誰よりウツミの優しさ、大人な思考ができる事など、長所を愛しているのです。

高校生〜短大時、どこかに行かなくちゃ、遊ばなくちゃ、クラブ活動しなくちゃ、と、私も大昔、ガラにもなく焦った時があります。「らしく」と言うのに、囚われていたんですね。ウツミのように、「何でせなあかんねん」と、開き直れたら、どんだけ心が解放されたかと、羨ましく思いました。自分らしくって、人の数ほどあるやんね。こうやって友情を育む素晴らしさ。これも青春だけに許される光だと思います。大人になったら、この羨ましいユルイ時の流れが、許されないから。帰宅部も陰じゃないぞ。その証拠に、二人は脇道に逸れず、高校生活を送っています。

大阪出身の菅田はともかく、池松の大阪弁が、イントネーションも含めて、パーフェクトなのに、びっくり。ここでちょっとでも、大阪感が損なわれていたら、この味わいは出なかったと思います。

人気の二人が主演と言う事で、昨日のテアトル梅田は全ての上映ソールドアウトでした。ヒットしたら、続編もと言う話もチラホラ聞きました。20代半ばの二人に、いつまでも詰襟着せるのは申し訳ないけど、この作品を観たら、この二人以外にキャストは考えられません。お寺の子・樫村さん(中条あやみ)との三角関係はどうなるのか?鳴山は、大物になっているのか?マクドのドナルドのバッタモンみたいな、風船作りのバルーンさんは、ベラルーシに帰郷出来るのか?気になって夜も寝られへんわ(嘘です)。続編を絶対作って欲しいです!

では、HPから、本編では観られなかった二人の会話、
「スタンディング・オベーション」を観て下さいね。ほ〜ら、あなたは段々観たくなる〜(笑)。


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