ケイケイの映画日記
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2016年02月13日(土) |
「スティーブ・ジョブズ」 |
当初は時間があれば的な、パスでもいいわと言う作品でした。でも監督がダニー・ボイルと知り、それは観なければいかんなと、近場のラインシネマで会員手続き更新もあり、初日に観てきました。訳わかんないまま、なのに全然退屈もせず、それなりに面白く観てしまったのは、やっぱりボイルの着眼点の秀逸さかな?今回はあらすじはパスです(書いてもあんまり意味はない)。
ジョブスの人生を辿るのではなく、彼の人生で良くも悪くも、ターニングポイント的であったろう、三度の大々的なプレゼンの舞台裏が描かれます。三度の間は年月を数年経ており、それは画面でも出てきます。しかし私はジョブズに関しては、マックの創始者+αくらいしか知らなくて、もう画面を追いかけて咀嚼するのに必死。でもそれも退屈しなかった要素かな?
とにかく長台詞の応酬で、ジョブズ役のマイケル・ファスベンダーと、片腕のジョアンナ役ケイト・ウィンスレットは大変だったでしょう。当初の共同創設者セス・ローゲン、アップルの元CEOジェフ・ダニエルズもしかり。もう監督サディストですか?と思ったくらい(笑)。私のような門外漢でも置いていかれず、何とか咀嚼できたのは、演技陣のお蔭です。
職業人としては天才肌のジョブズは、奇想天外な事を思いつきで言い募り、言い出したら絶対に聞かない。スタッフは振り回されて大変だった事でしょう。自分の意思は曲げず、どんどん経営が苦しくなり、アップルを首になり、また帰り咲いての道程がどんなものであったか、多分美化している部分もあったろうけど、面白く観られました。
美化と言うと、多分現実のジョブズは他者に対して失礼千万、嫌な野郎ではなかったのかな?その最もたるものが、元恋人との間の娘・サラを、長い間認知しなかった事。確かDNAで94%親子と出ているとの台詞があったので、これは完全に彼が悪い。しかし、養子として実の親から離れた過去を語らせ、父親になるのが怖かった、傲慢に近い仕事上のオレ様気質とは真逆の、弱い側面も描きます。
それら多面的なジョブズの、致命的な欠点を描いているのに、観終わった後は、のちに語り継がれるであろう時代の寵児の、人間味あふれる物語に感じさせてしまうのです。ボイルは着眼点とか構成とか、本当に上手いなと唸ります。ジョブズの人生の切り取り方、浮かび上がらせ方が秀逸。
数十年の時間の経過は、ジョブズを大人にし、丸くもしていました。パパと呼ばせるのを拒絶していた娘を、「ハニー」と呼びかけた時は、感激しちゃった(入ってきたのは、ダニエルズだったけど)。ジョブズはこの時、家庭を持ちサラ以外の子も持っていたはず。彼の人間としての成長を促がしたのは、彼の奥さんじゃなかったのかと思います。出てこない奥さんを投影したのが、ジョアンナの滋味深いキャラだったのかな?と思います。「仕事ではあなたの妻よ」と言ってたものね。
アラン・チューリングの話しが出たり、あぁこれがiphoneやipodを作るきっかけかぁと思わす箇所もあり、なかなかに楽しかったです。でも私のように、ジョズズはあんまり知らないわ、と言う向きは、ちょこっと彼の年表でも頭に入れて観れば、一層楽しめると思います。
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