ケイケイの映画日記
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2016年02月10日(水) |
「残穢【ざんえ】 ‐住んではいけない部屋‐ 」 |
あぁ〜、怖かった!座席は本当は誰もいない列の端が好きですが、今回何故か嫌な予感がして、ちょっと真ん中目に。観たのはレディースデーと言えど平日だったのに6割の入りと、これも本当に助かりました。視覚に訴える怖さではなく、思わず前後左右見渡してみたくなるような、心理的なじっとりした怖さで、ホラーとして拾い物です。監督は中村義洋。
ホラー作家の「私」(竹内結子)は、読者からの実体験を元にした短編を、雑誌に連載しています。その中で目に留まったのが、女子大生の久保さん(橋本愛)からの手紙。一人暮らしの彼女のマンションで、毎夜物音がすると言うのです。気になって彼女のマンションを訪ねる「私」。久保さんと二人で、謎を追い求め始めます。
人気作家の原作を、手堅く映画化するヒットメーカーの中村監督のホラーなんて珍しいと思っていたら、「本当にあった!呪いのビデオ」シリーズに、ずっと携わっているんですね(今も)。そのスキルが発揮されたのが今作のようです。
全体にムードはどんより曇っており、セピア色の写真、昭和の建造物、新聞の切り抜き等々、私の年代なら覚えのあるものが、上手く再現されていて、禍々しい雰囲気を煽ります。作り込んではおらず、再現ドラマのように適当にチープにした感じが一層禍々しさを演出するのに効果的。
その再現フィルムのような作品中、竹内結子と愛ちゃんの芝居のさじ加減が絶妙。無名の役者さんたちにインタビュー形式で、不可思議な現象の謎を追いかける、狂言回し的役です。女優として華やかさいっぱいの二人が、ずっと体温低い演技で、上手く存在感を消して、作品に埋没しています。これにはすっかり感心しました。作品と役柄を理解しているんですね。
謎は単なる祟りではなく、幾重にも上書きされた、複雑なものでした。最初の「河童のミイラ」のお話が、回り回って繋がる脚本も上手い。現代から昭和、都会から地方と、段々土俗的に物語が進み、祟りの正体に切ないものを覚え、成仏させてあげたいと思わせるのも、良いです。段々時を遡って、たくさんの家や登場人物が出てくるので、若干わかり辛い(と言うか、途中で誰だっけ?と忘れてしまう)箇所もありますが、工夫で乗り越えています。
祟りは「話しても聞いても着いてくる」なんて劇中言われたんで、本気で一人暮らしでなくて、良かった!と思いました。車でも土地でも家でも、直近の事故物件は、現在は法的に隠してはならないのですが、それ以前の事は、知る人も少ないです。続かないお店、住人が定着しない部屋などは実際あるし、精神病を患う人は、確かに先祖の祟りのように、昔は言われましたが、この作品のように、何の罪科がなくても祟られちゃうんじゃ、どうしようもなし。祟られる人、そうでない人の線引きは、どこにあるのかしら?
ラストにあるものに向かってお経をあげる上田耕一扮する住職さんの姿は、皆々に代わり、霊を鎮めるために、お経をあげていたように感じました。肝試しに廃墟や因縁のある建物に侵入なんて、言語道断。取りあえず「穢れ」には近寄るべからず。心霊現象に出くわしたら、ご先祖様を頼って、墓参りに出かけようと思います。
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