ケイケイの映画日記
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2015年10月11日(日) 「バクマン。」




もうサイコーに良かったです!全20巻のコミックが原作だそうですが、原作未読の私には違和感なく、テンポよく元気よく、青春の感傷も葛藤もたっぷり。そして何より面白い!最近では出色の青春映画です。監督は大根仁。

人気漫画家だった亡き叔父(宮藤官九郎)を持つ高校生の最高(佐藤健)。ひょんな事から、その高い画力を同級生の秋人(神木隆之介)が知る所となります。秋人は小さい時から漫画家志望なのですが、絶望的に絵が下手。しかしストーリーテリングの腕には自信があり、自分の夢を実現する相棒を探していました。最高が恋する同級生の亜豆(小松菜奈)が絡み、勢いでコンビを組むことを承諾した最高。夏休み、一心に描いた漫画を、少年ジャンプ編集部に持ち込んだ彼ら。編集者服部(山田孝之)は、二人の将来性を見抜き、手直しした物を持ってきてくれと告げます。

とにかく熱いです。躍動感が素晴らしい!クラブ活動もせず、さりとて勉強にも励まなかったと自嘲する二人の、それこそ青春を賭けて漫画を描く姿に、拳を握って声援を送りたくなります。寝食忘れてお風呂も入らず、あちこちインクだらけの二人。特に私が感じ入ったのは、秋人のスマホがインクまみれで汚れていた事。今どきの子は、スマホ命でトイレでもお風呂でも持って入るそうですが、この二人に取っては、ただの通信手段。逆説的に、友人との繋がりだけを必死で追い求め、人の評価をとにかく気にする今の子たちの心情も、お蔭でわかる気がしました。

実在の少年ジャンプの編集室が描かれ、どうやってデビューするのか、編集者と漫画家との間柄、非情なアンケート至上主義の現実など、どうやって少年誌NO・1のジャンプが出来上がるのか?を知る事が出来ます。漫画の描き方も丁寧に教えて貰い、私は面白く観ました。

時々息子ご推薦の漫画が廻って来ることがあるのですが、面白かったのに、どうしてみんな最後は天下一武道会になっちゃうの?と不思議でしたが、それは編集者の助言や「王道」の名の元、読者の人気を取るためと知ります。しかしその助言とて、当たるとは限らない。叔父の「漫画は読者に読まれてこそ漫画」、編集長(リリー・フランキー)の「しっかり作ってある。でも面白くないからダメ」の言葉は、そっくり映画にも当てはまり、ハッとしました。

「理解出来ないようなもんなら、同人誌にでも書け」の言葉もそう。映画なら自主制作ですね。人気至上主義の裏側には、読まれてなんぼと言う概念があるのですね。これだけ入魂の漫画バカっぷりを見せられては、きちんと読まなきゃと言う読み手の責任も考えました。(もちろん映画もね。考えているから、真剣に感想書いているんだが)

ジャンプのテーマは「友情・努力・勝利」である事は、よく知られた話。映画でも同じ事が描かれ、同期の新人漫画家たち(桐谷健太・新井浩文・皆川猿時)と切磋琢磨したり、協力する様子は、やはり私の心も熱くします。全編貫くこのクサいテーマを、爽やかに感じさせる語り口が抜群に上手い。

最高たちと同じ高校生の天才漫画家・新妻エイジ(染谷将太)とのランキング一位争いも、難攻不落の孤高の天才VS精鋭軍団の図式です。ここも最高たちに肩入れしたくなるよう作ってあり、始末の付け方も原作通りなのでしょうが、現実的で上手いです。ライバルとは、長いスパンで決着をつけるものです。火事場のバカ力的打ち上げ花火のような力も、私は本物だと思う。秋人が言った「俺たちすごいよ」を、そっくり二人にも同期たちにも、言いたくなります。

当初こそ、最高と秋人のキャストは反対じゃないのか?と感じましたが、相手を射るようなストイックな眼力を発する佐藤健、原作作りと言う重責を果たしながら、広報的な役割も如才なく果たす秋人を、神木隆之介が好演するのを観て、これで良かったんだなと納得。キャストはみんなそれぞれ上手かったのですが、最近の邦画は、主役・脇役入り乱れて、全部この人たちの使い回しの感があります。良かったですけど、主役二人くらいの新鮮さが欲しかったかな?これは贅沢な注文かもしれません。

この年代の子を描くのに、親が出てこないのは不思議なシーンがあります。出す余裕が時間的になかったのが実の所でしょうが、私は別の感慨に浸りました。この作品、最高と秋人の視線で描かれています。この年頃は、自分の夢があればそれに一生懸命で、親なんか目に入らないと思います。逆を言えば、常に親が気になるのは、親が子供に心配をかけているから。画面に親が出てこない事で、この子たちの親は、子供に心配かけない、子供を信じて見守れる親なのだと、思いたいです。全ての子供たちがそういう環境で、夢を追って貰いたいな。

原作もここで完結でしょうか?創作で良いので、是非二人のその後も観たい!漫画書いてなくていいし、芽が出なくてもいい。もちろん人気漫画になっていれば、尚嬉しい。だってあのラストは、希望と未来がいっぱいだったもの。


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