ケイケイの映画日記
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2014年12月27日(土) |
「毛皮のヴィーナス」 |
あぁ〜、面白かった!80歳の御大ロマン・ポランスキーが、愛妻エマニュエル・セニエをヒロインに据えての数度目のコラボは、やっぱり変幻自在に妻の魅力を余すところなく引き出し、結婚生活20年過ぎても、まだまだ妻への興味は尽きないようです。多分今年はこれで最後の映画ですが、世は満足じゃ、の作品。
マゾッホ原作の「毛皮を着たヴィーナス」を舞台化するため、ヒロインをオーディションしている脚本家のトマ(マチュー・アマルリック)。今回初めて演出も担当。しかし気に入る女優は誰もおらず、落胆して帰ろうとした時、飛び込んできたのは、ヒロインと同じ名のワンダ(エマニュエル・セニエ)。せっかくなのでオーディションして欲しいと強引に迫る彼女に押し切られ、トマは自分が相手役になりオーディションします。しかし、全く使い物にならないと思っていたワンダは、素晴らしい演技を披露。トマは魅せられて行きます。
マゾッホとは、言わずと知れたマゾヒズムの語源の人。ドMとかドSとか言う言い方は、頭が軽そうで私は好きじゃないんですが、さもありなん。サドマゾの世界観とは、こうも知性とイマジネーションが必要なのかと、感嘆します。
オーディションをしているはずが、演じているワンダに魅せられるトマですが、現実と芝居を行ったり来たりするワンダにはぐらかされ、哀れトマはキスも出来ず抱きしめる事もなく、靴も舐めさせて貰えない(笑)。でもそのじれったい精神性がマゾなんだろうなぁと、おぼろげながら理解出来るので、まっ、これは嬉しいのかも?。
とにかく主演の二人が絶品!セニエは、無教養で下品な売れない中年女優から一変、高貴な若い貴婦人に見える。その表情は、時にはグロテスクなドラッグクィーン風、時には社会問題に取り組む女闘士、時には妖艶な娼婦、そして豊かな包容力まで感じさせて、ミステリアス。トマだけではなく観客も魅了し翻弄していきます。
私が感心するのは、監督の撮るセニエは、いつも至高のエロスを振りまくのです。彼女は存在感抜群の良い女優さんですが、他の監督の作品では、それほどエロスを求められているとは感じないのに、夫の作品では、どうざんしょ?と言うくらい常にエロい。「赤い航路」を観終わった時、ポランスキーは女優としての妻の多面性を描き、愛しているんだなぁが、最初の感想でした。この作品も全く同じ。違うのは妻が女優としても女性としても、より成熟していた事です。
迎え撃つアマルリックは、さしずめ監督の分身かな?尊大だったトマが、ワンダに導かれ、自分の性癖が露呈する様は、ユーモラスでスリリング。その豊かな表情の変化や、苛められる様子が可愛くってもぉ。アマルリックは冷酷な役、インテリの役、何でもござれの人ですが、今回は愛嬌たっぷりの彼が楽しめます。
つくづくセックスとは想像の世界だなぁと感じます。想像力を引き出すには、知性も教養も必要ですよと言う事で。肉体的な性は、いつか枯れてしまいますが、精神的な性は、幾つになっても楽しめますよ、フォッフォッフォッって事ですか?監督(笑)。
印象的だった「 神、彼に罪を下して一人の女の手に与え給う」と言う言葉。ですってよ、男性の皆様。甘んじて受ければ、トマのような至福のエロスが待っています。
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