ケイケイの映画日記
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2013年06月02日(日) 「グランド・マスター」




1日の映画の日に観てきました。新作ラッシュで予定が大変な事になっていて、この作品も、本当は観たい度下位作品でした。でも1日の日は夫も仕事が休み。せっかくなので夫婦で観られる作品をと思い、「これイップ・マンの話やねんで」と、ウォン・カーウァイ作である事は隠し(てか、名前言っても知らんし)観てきました。夫はドニー兄貴の「イップ・マン 葉問」はケーブルで観ており(ワタクシ未見)、「ドニーのは面白かったけど、まぁ娯楽作やな。こっちはドラマ重視で作ってあって、なかなか味わい深い」などど語り、へぇ〜意外〜と思っておりました。しかし今日は、「大した映画やなかった」と「本音」を言うじゃございませんか。実を言うと、私も「オブリビオン」にしとけば良かった・・・と、思っております、ハイ。いやいや、決して出来が悪かったわけじゃございませんけど。

1930年代の中国。北の八卦掌の宗師、ゴン・パオセン(ワン・チンシアン)は引退を決意。南北統一の悲願を託せる後継者を探しています。候補は一番弟子のマーサン(マックス・チャン)。ゴンの娘ルオメイ(チャン・ツィイー)も後継者に名乗りを上げる中、ゴンが後継者に氏名したのは、人格的にも優れているイップ・マン(トニー・レオン)でした。憎悪を募らせるマーサンは、師匠であるゴンの命を狙います。

カーウァイで武侠映画なんて、どんな出来かな?と、そそられるでしょう?まさか天下一武闘会になるとは思っていませんでしたが、ちょっと肩透かしでした。何故なら直接対決があまりありません。カンフー場面はふんだんに出て来て、各々満足は出来るんですが、後継者争奪戦の感じはありません。

印象に残った戦いは、イップ・マンVSルオメイの濃密なラブシーンのような戦いと、マーサンとルオメイの名誉と家名をかけた戦いです。そうなんです、イップ・マンのお話のはずが、終わってみれば、ルオメイの一生を追った感じなんです。

チャン・ツィイーは流石に二十歳の小娘の役は無理があるだろうと思いましたが、なんのなんの、可憐で気の強い令嬢役を軽々こなしていました。カンフーもところどころスタントを感じますが、基本的な振り付けは充分及第点です。父を思い女の幸せを捨て、家を守る健気な姿も共感を呼びますが、圧巻だったのは、ラスト近くのイップ・マンとの逢瀬のシーン。今までの凛とした姿ではなく、けだるい哀愁と死の匂いを香らせて、朽ち果てる直前の女の色気を発散させています。そんな彼女の口から「ずっとあなたが好きだったの。ただそれだけ・・・」のセリフに、私は思わず落涙。結婚せず子も持たず、武道家として弟子もなし。恋もなし。家名を守るためだけに生きた彼女の一生は、いったいなんだったのだろう?と、とにかく哀れでなりませんでした。

他に印象的なのは、イップ・マンと妻(ソン・ヘギョ)との、愛を感じる夫婦の風景です。キスやセックス一切なしで、この濃密さ。素晴らしい!妻を演じるへギョがまた、可愛くってねぇ〜。こりゃ夫たるもの、全力で愛しますよね。妓楼の風景もクラシック音楽が奏でられ、品はあるけど淫靡な華やかさが素敵でした。

と、思い出すのはグランド・マスター争奪戦以外の事ばっかりです。映像はそれぞれ美しく、カンフーシーンも雨有り雪ありで、これもロマンを感じさせます。まぁ、カーウァイらしいっちゃ、らしいのですが。チャン・チェンも争奪戦メンバーなんですが、何で出てきたの?と言うくらい、絡むシーンほとんどなし。謎の登場人物でした。

イップ・マンは、清朝・中華民国・香港と、中国が変貌していく中を生きた人であるのに、イマイチ高潔で人格者である武闘家、以外には、彼が浮かび上がりません。トニーは登場すれば魅力的でしたが、印象には残っていません。とにかく圧倒的にツィイーの好演と、数奇なルオメイの一生が私の心を捉えた作品でした。

天下一武闘会をご期待の向きには、あんまりお勧め出来ません。まっ、こうなることは半分わかっていたのに、夫を誘った私が悪うございました。ストーリーより完璧にムードと映像の武侠映画なので、カーウァイファンの方なら、それなりにお楽しみいただけるかも。

大阪では7月下旬から、シネマート心斎橋でウォン・カーウァイ特集を上映予定です。この作品の絡みでしょうから、感謝しております。そんな作品(どんな作品やねん)。


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