ケイケイの映画日記
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2011年11月06日(日) 「ミッション:8ミニッツ」




面白かったです!デヴィット・ボウイの子息であるダンカン・ジョーンズ監督は、前作の「月に囚われた男」も大評判でしたが、見逃したのを本当に後悔しました。同じ日に観た「ウィンターズ・ボーン」とは全く毛色の違う秀作で、何だかんだ言いながら、やっぱりアメリカ映画はまだまだ底力があるなと、嬉しくなりました。

スティーヴンス大尉(ジェイク・ギレンホール)が列車の中で目を覚ますと、そこには知らない女性(ミッシェル・モナハン)が目の前に居て、親しげに彼に話しかけます。当惑する彼は、鏡に写る自分の姿が別人である事の愕然。ほどなく列車は爆発します。次に目覚めると、彼は軍のカプセつの中。ラトレッジ博士(ジェフリー・ライト)の開発した軍の特殊プログラムで、8分間だけ爆発直前の乗客の一人の意識の中に入り込み、犯人を探ると言うもの。グッドウィン大尉(ヴェラ・ファーミガ)の案内により、8分間を繰り返すスティーヴンスは、違和感と共に様々な感情に苛まれます。

SFと見せかけた人間ドラマ。プログラムについての統合性は、私にはよくわかりませんが、8分間の中で如何に変化が起こっても、現実には何ら変化がないというのは、納得出来ました。それにも秘密があるんですが。犯人及びスティーヴンスの秘密は、私は浴びるほど映画は観ているので、途中でわかってしまいます。しかしこの作品は、そこからが本番です。

知らないはずの女性の名はクリスティーナと言い、最初は恋人同志かと思われたのが、8分間を繰り返す内に、同じ車両に毎日乗り合わせ、親しくなったのだとわかってきます。スティーヴンスが潜入捜査のような事を繰り返す度、プログラム内の8分間は少しずつ違った様相を呈し、袖すり合うだけだった乗客たちの背景が浮かび上がり、その様子に観客の心も少しずつ揺り動かされて行きます。

何故スティーヴンスは、あんなにも父親への電話にこだわるのか?そしてグッドウィンはどうしてはぐらかすのか?その秘密に薄々気付いていた私は、こんなになっても、まだ軍人を過酷な任務に就かせるのかと、アメリカの軍隊に怒りが湧きます。人に対しての敬意なんて、全くなし。中東風の容姿の男性に対し、クリスティーナが「外見で判断するのは偏見よ」と言うセリフも、作り手の見識なのでしょう。

スティーヴンスの心を操るように任務に就かせる事に、今度はグッドウィンの心が疲労して行きます。うんうん、どこだってどんな組織だって、上と下との意見は相違し、中間管理職的な仕事が一番ストレスが貯まるんです(うちの事務長も大丈夫かしら・・・心配)。その人間らしい感情にも共感していきます。

ジェイクは久しぶりに観る気がしますが、相変わらず若々しくてハンサム、演技が上手いです。彼に突然キスされたら、そりゃポ〜となりますよ。納得のシーンがあるので、お楽しみに。今作でも様々な苦悩や葛藤を抱えるスティーヴンスを好演しています。モナハンは普通の親しみやすく知性的な女性をやらせれば、彼女の右に出る女優はいないと、個人的には思っています。今回も素直に演じて好感が持てます。ファーミガは絶好調を手堅く継続中で、クールな仕事の出来る女性が垣間見せる母性は、観客の心を鷲掴みします。

この作品のキャッチ・コピーは「このラスト、映画通ほど騙される」です。私は映画通と言う言葉は嫌いで、自分はただの映画好きといつも称してしますが、映画通=映画をたくさん観る人と置き換えるのなら、私もその類です。確かに人として軍人としての苦悩を見せられたあと、あんな幸福感に包まれたラストを用意されているとは、思いませんでした。しかし!ここで終わってくれりゃあなぁ。その後のラストのラストが蛇足に感じました。暗に軍批判をしていたのに、これじゃどっちつかずに感じます。

と、ちょびっとラストにミソをつけましたが、出色の出来である事は確か。映画はたまにしか見ないので、辛気臭いのは嫌な方、たくさん見るけど大味な大作やお手軽なプログラムピクチャーは外したい方、全方面で満足出来る作品だと思います。抜群のオススメです。


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