ケイケイの映画日記
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なんばパークスに出向くこと三回、ソールドアウト続きでやっと観られました。前2回は日曜日だったので、今回は満を持しての平日鑑賞です。それも納得、ウォンビンが超カッコいい!「レオン」を想起させる内容もまずまず。娯楽アクションのドラマ部分を底上げするのに、天才子役の誉れ高いキム・セロンちゃんが好演しています。彼女絡みで三回も泣いちゃった。監督はイ・ジョンボム。
街の片隅でひっそりと質屋を営むテシク(ウォンビン)。仕事以外誰とも接触せず、孤独に生きています。そんな彼を隣に住む小学生のソミ(キム・セロン)は、「アジョシ(おじさん)」と呼び、慕います。ある日ダンサーのソミの母親が覚せい剤を盗み、胴元のヤクザに追われソミ共々拉致されます。ソミを救うため母娘を追うテシクですが、ヤクザのマンソク兄弟の罠にはまり、警察に捉えられます。そこでテシクの意外な過去が明らかにされます。
ウォンビンが「おじさん」なんて、若いのに可哀そうじゃんと思っていましたが、彼、もう34歳なんですね。小学生から見たら立派なおじさんです。兵役を怪我で中途除隊した後、しばらく休んで復帰作に選んだのが「母なる証明」でした。それまでの容姿優先のソフトな弟キャラから、これからは演技派を目指すんだなと思っていたら、今作では一変して、見事なアクション俳優ぶりです。
「ボーンシリーズ」ばりの俊敏な素手+ナイフや拳銃を使う本格的なアクションは、ほとんどウォンビン自身でこなしているとか。韓国の男優は辛い兵役も芸の肥やしになっている模様で、銃の使い方など、欧米の俳優のように様になっている人が多いです。イ・ビョンホンが他の韓流スターより頭一つ抜けていて、国際的に活躍しているのも、彼が非常にキレの良い身のこなし出来るからだと私は常々思っているんですが、ウォンビンも勝るとも劣らぬ動きです。
それとやっぱり美しい容姿。今作でも何度も敵役から意味なく「ハンサムだ」「男前だな」のセリフが出てくるのは、意図的なのでしょう。美しいと言っても耽美的ではなく、ワイルドな男臭さとも違う、暖かみのある品の良い端正さで、もちろん華もある。守られる方から守る凛々しさへ、今作では年齢相応のイメージの転換も図っており、演技も韓国映画界上げての期待(多分)に、充分応えていました。
ドラマの方も、韓国内外に蔓延する麻薬や覚せい剤、臓器売買に児童人身売買、ネグレクトの親など、裏社会がどこかしら皆繋がっている様子を描写し、悪は悪だときっぱり断罪しているのも潔いです。毎度お馴染み、韓国の警察の間抜けさは、今回は若干ましかな?
その中で異彩を放っていたのが敵の一人ラム役、タナヨン・ウォンタラクン。タイの俳優さんだそうで、劇中でも話すのは英語のみ。非情で残忍なのに、ニヒルな陰りに魅力がありました。ウォンビン相手の格闘シーンも迫力あったんですが、クラブでの二人の睨み合いのシーンがクールで、私のお気に入りです。
そんなラムの心さえ動かすソミ役キム・セロンも絶品の演技でした。子供らしい溌溂さの中に、あばずれでふしだらな母親に育てられている哀しい憂いが浮かんでいます。この母親のせいで学校でもイジメにあっているのに、何度も出てくる「ママに会える?」のセリフが本当に痛々しくて。親は心して子供を育てなくちゃね。
「私はおじさんの事、嫌いにならないよ。だって嫌いになったら、好きな人がいなくなるもん」のソミのセリフが、最初の号泣でした。テシクは自分の過去の事で、いつも死に場所を探していたのかも知れません。誰かを愛すれば、また生きたくなる。それは過去に対して罪だと思い込んでいたのかも。その気持ちに相反するソミのセリフ。それは愛する人がいることは、生きる縁(よすが)だと示しているのだと思います。父親になれなかった男と父親を知らない娘。陽炎のような自分の想いを、相手に重ねたのでしょうね。
もう本当に面白いです、堪能出来ますよ、太鼓判!大阪はヒットしていますが、首都圏でははや間引き上映とか。何でかなぁ〜〜〜!この感想が少しでも動員に役立てるよう、切に祈っています。
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