ケイケイの映画日記
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2011年08月07日(日) 「この愛のために撃て」




いや〜、すんごい面白かった!昨日は梅田ガーデンシネマで、「復讐捜査線」と「海洋天堂」を観て、難波に移って「モールス」を観るつもりだったのですが、あと一本観たらガーデンのポイントが貯まるのに気づき、三本目はこの作品に変更しました。これが大当り!先に観た2作品もとても気に入り、昨日は本当に良い日でした。監督はフレッド・カヴァイエ。

看護助手をしているサミュエル(ジル・ルルーシュ)の病院に、不信な患者サルテ(ロシュディ・ゼム)が、交通事故で運び込まれてきます。訳ありそうなサルテは、不法侵入の者に殺されそうになりますが、サミュエルの機転で未然に防げます。しかし翌朝、出産間近の妻ナディア(エレナ・アナヤ)が何者かに誘拐されます。開放条件はサルテを病院から連れ出す事。平凡で幸せな日常を送っていたサミュエルは、愛する妻を救い出すため、大奮闘することになります。

サミュエルは誘拐の取引の常套句、「警察に知らせたら人質の命はない」と言う言葉を真に受けたのが運のつき。サルテを逃がしたいがために、自分まで警察に追われるのです。もう本当に普通の平凡な男性で、逃亡中もドタバタ。最初警察に電話すりゃ、済むことじゃんと思いながら観ていた私ですが、逃亡の仕方の、全く先を考えない命懸けの破れかぶれぶりに、次第に胸が熱くなってきます。何故ならそこには、愛する妻とお腹の子を絶対救いたいと言う、夫としての愛が、画面からほとばしっているから。

「あれ?違うの?」「えっ?何でここで殺される?」とキョトンとしていると、ばっさばっさ画面は勢い良く進みます。しかしキョトンも一瞬、上手くその後をフォローしているので、混乱することはありません。何せ時間は85分、その間、手に汗握る大興奮が続きっぱなし。先が読めない。誰が味方で誰が敵なのか謎めいたまま、二転三転の筋運びの中、敵であるはずの人物の変貌も、上手く浮かび上がらせています。

ルルーシュは本当に平凡で人の良さそうな旦那さんなので、命懸けで傷だらけになる姿には、思わず目頭が熱くなりました。決してカッコいいタイプじゃないので、昨今流行りのノンストップアクションについて行くのにやっとの感じが、妙にリアリティありでした。アヤナは夫にそう思わす愛らしさ満点、妊婦の気丈さもちゃんと感じました。




サルテ役のゼムが出色の好演。斜視気味の鋭い眼差しが、ただの冷酷非道な悪党なのか、そうでないのか、観ている方も迷わせます。次第に明らかになる大物らしさに似つかわしい、クレバーな男ぶりで、すっかり魅了されました。

サスペンスなので、今回はこれくらいに。「お前に警官役は無理だ。顔が善人過ぎる」と言うサルテの台詞が、私のこの作品でのお気に入りです。時間も短く、映画好きさんにも、ただの暇つぶしにも持って来い。暑気払いに抜群のお薦め作品です。フレッド・カヴァイエ、これから追いかけて行こうと思います。




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