ケイケイの映画日記
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2009年08月09日(日) 「ボルト」(吹き替え版)




ピクサーアニメで秀作を連発するジョン・ラセターが、親会社ディズニーと組んで製作したアニメということで、観てきました。3D上映で観たかったのですが、なんばパークスまで行ける時間の余裕なし。ということで、普通の2Dで鑑賞です。かなり評判が高いので、だいぶ期待したので、ちょい期待値は割りましたが、良質の家族向けムービーであることには間違いない出来でした。

愛らしい少女ペニー(声・白石涼子)の飼い犬ボルト(声・佐々木蔵之助)。しかしこれはドラマの設定で、本当のボルトはスタジオ以外出た事が無く、自分を改造されたスーパー犬だと信じています。ドラマの設定でペニーが悪者に誘拐されたと信じ込んでいるボルトは、セットの外に飛び出してしまい、現実を知らされます。ペニーの愛情だけは信じるボルトは、外の世界で知り合った猫のミトンズ(声・江角マキ子)や、ハムスターのライノ(声・天野ひろゆき)と共に、ペニーの元へ戻ろうとしますが・・・。

という内容、何だか「トゥルーマン・ショー」みたいでしょ?これの犬版だと思っていただければ、結構かと。私が少し不満に感じたのは、毒の効かせ方や、真実を知ってしまった時のどん底感が希薄だなぁと思ったから。でもこの作品、ターゲットの客層はあくまでお子様なんですよね。それをすっかり忘れていたワタクシめが悪うございました。良い子の皆さんは、そんな浮世の辛さは、もっと年とってから知れば結構。「愛と友情と希望」。この三本柱は、きちんとわかりやすく押さえていました。

冒頭はドラマの追いつ追われつのアクション場面ですが、これが息もつかせぬ勢いで、相当楽しめます。特別斬新な見せ方ではないですが、つなぎ方が非常に上手く、本当にこのドラマの映画版を作ってくれないかしら?、と思ったほどです。

物ごころ付いた時から今の環境のボルト。飼い主と遊んだり甘えたりすることは知りません。自分をスーパー犬と思いこんでいるので、ひたすら愛するペニーを守ることしか知りません。そんなボルトを不憫がり、設定そのまま、ボルトに本物の愛情を注ぐペニーを最初の方で描いてくれるので、後の展開は気持ちに余裕を持って観られます。この辺は子供達にはとても優しい脚本だと思いました。

世間に長けた皮肉屋のミトンズ。一見自由なノラ猫の彼女ですが、そうなったのには深くて哀しい理由が。一匹狼的な生き方が好きだと見えたのに、本当は孤独で寂しいのです。ミトンズの哀しさの理由は、子供達には生き物を飼う上のでの心構えを教え、人間に媚を売る方法をボルトに教える姿は、大人には痛烈な皮肉に感じるでしょう。

ディズニーアニメは擬人化がいつもとても上手ですが、この作品でも本領発揮です。真実を知り、落ち込むボルトですが、彼を励ますのが、今までは家の中しか知らなかったライノ。ライノはボルトのドラマが大好きで、ライノにとって、ボルトは永遠のスーパーヒーローです。愚直なまでにボルトの力を信じるライノには、ちょっとウルウルきました。自分だけのアイドルの輝きに憧れ、つまらない日常を乗り越えてきたライノ。これって、人間の世界でもありますよね?ボルトに励まされてきたライノが、今度はボルトを勇気づけているわけです。

何もかも嘘だとわかっても、ペニーの愛だけは信じるボルト。誤解から傷つきながらも、ペニーを懸命に助けようとする姿と、その結果には、大人から見れば深い意味が詰まっています。普通の犬ではないと思いこんでいた年月が、ボルトに本当に普通の犬にはない機転と勇気を授けたわけです。人間に置き換えれば、イメージトレーニングかな?それには愛情を持って支えてくれる、ペニーのような存在が不可欠なわけで、それは子育てにも使えるでしょう?もちろん親がペニーですね。

商魂たくましいハリウッドの様子が最後に描写され、笑ってしまいました。平凡な「犬生」が一番というラストは、ちょっと年齢高めのオチですが、全ての観客が満足するには、やっぱりこれしかないかと。大人には少しコクが不足していますが、色々考えさせられる描写も多々あり、ファミリー映画として充分に楽しめるかと思います。


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