ケイケイの映画日記
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2009年07月16日(木) 「ハリー・ポッターと謎のプリンス」




仕事休みだったので、初日の初回に観てきました。レディースデーとは言え、平日なので空いているだろうと思っていましたが、何とほぼ満席。やっぱり強いですね、このシリーズ。私も全部劇場で観ています。ハリー始め幼かった生徒たちは皆思春期を迎え、ハリーの両親を殺したヴォルデモードの謎を探る今作は、青春ロマンスとミステリーを上手くミックスさせて、今回も水準以上の出来をキープしていました。

闇の帝王ヴォルデモードが、人間界と魔法界で力を増す中、それを危惧するダンブルドア校長(マイケル・ガンホン)は、ハリー(ダニエル・ラドクリフ)を連れ、引退した元同僚で重要な鍵を握っているスラグホーン(ジム・ブロードベント)を訪ね、再びボクワーツに迎え入れます。それとは対照的に、進展しないロン(ルパート・グリント)とハーマイオニー(エマ・ワトソン)の関係や、ロンの妹ジニー(ボニー・ライト)に秘かな思いを抱くハリーなど、同級生たちは皆思春期を迎えていました。

私がこのシリーズで一番良いと思っているところは、小さな脇役に至るまでキャストがずっと同じというところです。どうしてもギャラの問題やらスケジュールやらで、これだけシリーズが長く続くと(六作目)、普通キャストの交替は致し方ないのですが、このシリーズに限っては、残念ながら亡くなったリチャード・ハリス以外は、皆同じです。魔法と言えど学校が舞台ですから、キャラそのままの俳優陣の成長も楽しめるし、前作から時間が経ってもすぐ作品に入り込めます。何より観る方は情が移るしね。

ハーマイオニーがロンを好きなのは、その他の作品を通してそこはかとなく描かれていますが、今回は嫉妬に身を妬く彼女が描かれます。賢くて可愛くて、でもプライドの高いハーマイオニーは、自分から好きだとは言えないんですね。ロンの鈍感ぶりも善良男子の鉄板ですし、ロン命になる女の子ラベンダーの鬱陶しさも少女期ならでは。NO・1女子ハーマイオニーを射止めたいキザな男子や、幼馴染から恋心へ移り変わるハリーとジニーの間柄も青春そのもの。シリーズ開始時は小学生だった若い観客も、きっと現在の自分たちと重ね合わせて、感情移入することでしょう。

しかし少しずつダークサイドに傾くシリーズは、今回ミステリー色も一番です。いつもどちらの味方なのか、最後までわからないスネイプ先生(アラン・リックマン)は、今回作品冒頭で意外な誓いを立てます。そしてここ数作精彩のなかったドラコ・マルフォイ(トム・フェルトン)ですが、今回はハリーが光の世界で選ばれし者なら、ドラコは闇の世界でヴォルデモードに選ばれし者。その任務を遂行しようとするドラコの葛藤も見どころになります。

人は(まっ、魔法使いなんですが)善き行いをしようとする時は、心も活力も充実するものです。しかしこれは本当はいけないことなのだ、と思う行動をする時、気持は荒み、怖気づくもんじゃないでしょうか?同じ選ばれし者としての苦悩を抱える二人ですが、勇気や友情、たくさんのことを学び成長するハリーに比べ、ドラコの苦悩は哀切に満ちています。深いけど、この作品の原作は児童文学。是非この辺の表現を、若い観客の皆さんには、的確に感じて欲しいと思います。

ダンブルドアの命により、スラグーンに近づくハリー。彼は優秀な生徒が大好きなので、スラグホーンに取り入り、ヴォルデモードの秘密を探って来いと言うお達しです。おいおい校長の言うことか?という命令ですが、闇に支配されるくらいなら、少々のスパイ活動もいとわずってことかな?でもスラグホーンがハリーに心を開いてくれたのは、魔法界を守りたいと言うハリーの必死の思いが伝わったからで、小細工が効いたからではありません。正直大人になったら、こういう小細工が必要な時もありますが、若い頃はまずは正々堂々、真っ向から取り組んで欲しいので、この展開もグット。

保護者にもお勉強になることがいっぱい。繰り返しハリーに「私を信じられるか?」と問うダンブルドア。全幅に信頼すると言う事は、非情な辛さも伴うものだ、ということも、今回の作品は教えてくれます。子弟や子供に、その辛さを乗り越えさせるのは、何よりも大人世代が信頼に値する人になる、これに尽きると思います。子供達にああだこうだと言う前に、やっぱり大人がお手本を見せろということですね。

成長する主要キャストの中で、今回一番良かったのは、私はドラコ役のトム・フェルトンでした。このシリーズでのいやみな純血種という役どころはそのまま、哀しさを感じる陰の部分の表現も上手かったです。今回のドラコは、父が投獄され家を背負った息子としての責任と、少年の純粋な部分の残る幼さの混濁した難しい造形でしたが、好演でした。なかなかイケメンに成長しているし、ブロンドの髪は地かもしれませんが、髪が先に目につき顔立ちが生かされないので、ブラックやブラウンに染めた方が、大人の俳優としては使いでが良いかもしれません。頑張ってトム!

あとはハーマイオニーが本当に綺麗になっている!教頭役のマギー・スミスは、今回皺が深くなっていて、六年の歳月を改めて感慨深く思いました。このシリーズも残すところあと二作。次は前後編ですってよ。今回は最近流行りの、次作に向けての前振り的要素も多かったですが、これくらいの水準をキープしてくれていたら、文句はありません。あっと驚く展開になるダンブルドア校長が、ラスト近くスネイプ先生に向けた言葉は、私はハリーの解釈は間違っていると思うなぁ、うんうん。ハリポタファンの皆様、では安心してお楽しみください。


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