ケイケイの映画日記
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2009年04月07日(火) |
「トワイライト〜初恋〜」 |
皆さま、覚えておいででしょうか?あれは四年前、私が「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」で、将来有望株なので絶対覚えておいてと書き留めていたロバート・パティンソン、ついにこの作品のヴァインパイア役で大ブレイクです。しかしながらヴァンパイアと言うのは、あくまで味の素。描かれるのは斬新ではなく、普遍的なハイティーンの恋心でして。これがまた、善良なうら若き乙女の妄想をかきたてまくるロマンチックさ。元乙女のワタクシも、しっかり溜息つきまくって、楽しんでまいりました。原作はアメリカのティーン向け小説だそう。監督は女性のキャサリン・ハードウィック。
母の再婚により母から別れ、陽光降り注ぐアリゾナから、霧に包まれたワシントン州フォークスの小さな町に越してきたベラ(クリスティン・スチュワート)。久しぶりに再会する父(ビリー・バーク)の元から高校に通うことになりました。気遣ってくれる級友たちはいるものの、生来の内気さからか、なかなか学校には馴染めません。そんな時、ミステリアスな雰囲気の五人組の生徒たちに注目するベラ。中でもひと際目立つ存在のエドワード(ロバート・パティンソン)が気になって仕方ありません。それはエドワードも同様なようでした。ある時交通事故に遭いそうなベラを、超人的な力で守ってくれたエドワード。その力の秘密を探るベラは、エドワードがヴァンパイアであると突き止めます。人間とヴァンパイア。その障害を越えて、恋心を募らせていく二人でしたが・・・。
徹頭徹尾、女子目線で作られた青春ロマンス。しかしだね、これがお安い出来かというと、さにあらず。まず主役二人が、上品でお行儀が良いのですね。なので瑞々しさや切なさ、ぎこちなさ、純情さも、私のような親世代が観て非常に好ましく、言わば教育委員会推進路線的な恋なんですね。これを引き出しているのが、ヴァンパイアなわけね。
エドワードの一族はヴァンパイアと言っても穏健派で、普段は獣の血を吸って命をながらえています。本人曰く、ベジタリアンのヴァンパイア。しかしひとたび人間の血を吸ってしまうと、抑制が利かなくなり、相手をヴァンパイアにしてしまったり、殺したりしてしまいます(この辺普通の吸血鬼)。なので愛するベラにキスするのも、命がけなわけです。
燃え上がる恋心を抑えきれず、彼女にキスするも、自制心が利かなくなるのが怖くて、ベラを突き飛ばすエドワード。若い男女が主人公ながら、相思相愛になってキスするまで、映画の中で小一時間。セックスなんか、以ての外です。結局血を吸う=セックスを表し、ティーンがセックスに対して持つ、恐れや戸惑いを描いているんですね。確かに多くのヴァンパイアものでは、血を吸う、吸われるという行為に、セックスと同等の陶酔感として描いているものが多いです。
すぐに事に及んでしまうより、私なんかは30年前の自分を思い起こすと非常に理解出来るし、また親世代としても好感がもてるわけです。そして障害があれば燃え上がるという恋のスタンダードも、人間とヴァンパイアでクリア。恋をすれば、あなただけよと思いこみつつ、この世代には親も重要なファクターです。親がどんなに子を思っているか、さりげなく表現しながら、子もまた素直に親を思う気持ちが随所に出てきます。お互いの両親に付き合っている相手を紹介するなど、親への気配りや適度な依存も表現し、このあたりも可愛げがあります。一応ヴァンパイアものなので、学園ものとしての明るさは出せませんが、若々しい清潔感がとっても心地よいです。アメリカでは熱狂的にティーンに支持されたそうですが、アメリカの女の子は、意外と保守的で古典的な恋愛観を持っているんだと、妙に感心しました。
そしてロバート君!端正なマスクに、程よくヴァンパイアメイクなんぞ施しておるのでね、ミステリアスな憂いが出てます。背も高く逞しさも満点。ヴァンパイアなんで永遠の17歳なのですが、生まれは20世紀初頭なので、頭の中はクラシックな男女観でいっぱいです。
「命がけで君を守る」 「黙って僕のそばにいてくれ」 「僕はただ、君を知りたいだけなんだ」 「ライオンが羊に恋をした」 「人間と恋するなんて、地獄行きだ」 「君の寝顔が好きだ。ドキドキする」
普通ならこのケッ!と感じてしまう歯の浮くようなセリフの羅列も、設定とロバートの口から出ると、悶絶して卒倒する事必死。そしてこれら全てが有言実行なんですから、あーた、正に水嶋ヒロ百人分の威力。多分これを観た女子たちは、ベラに自分を重ねて、「私の全てを奪って」というコピーが、ガンガン頭を駆け巡ったことでしょうて。
霧が多く曇天の日が多い鬱蒼とした町の空気は、このお話の世界観に合っていました。野蛮な敵対するヴァンパイアとの同種格闘場面は、もう少し血みどろになっても良かった気もしますが、そうするとテーマが台無しになる恐れもあるので、これくらいのお上品さでも可。ヴァンパイアの人間外の身体能力を示す場面はCGを使っていますが、森や自然を多様しているので、これも神秘的かつ爽やかな印象を持ちました。
永遠の生命を生きるヴァンパイアとしての葛藤は、さらっとしか出てきません。「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」で、何十年経っても幼いままのキルスティン・ダンストが、豊かな胸の女性の絵を指差し「私はいつになたら、こうなるの?」と、トム・クルーズを詰るような、観る者の胸に突き刺さるような描写はありませんでした。その辺浅いけどね。テーマがまた別なのでね、不問としよう!(気にいりゃ何でもOK)。
ベラを演じるクリスティンも、長年子役から活躍している力量を示し、内気で大人しい子ほど、意外や大胆になるというのを、充分納得させてくれる好演でした。他の人物も登場時間は短めながら、キャラは確立されており、描き分けもきちんと出来ています。続編に含みを持たせるラストですが、これくらいの出来なら、期待感も盛り上がろうというもの。
上質の青春モノとして、全女性向けですが、倦怠期の結婚していない若いカップルも、出会った頃を思い出して、甘酸っぱい気分になるかも知れない作品です。私は大いに気に入りました。
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