ケイケイの映画日記
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2008年11月02日(日) 「ハンサム★スーツ」




ぶちゃいくな男性が、謎の「ハンサムスーツ」を着ると、容姿端麗のイケメンに早変わりし、その後どうなるか?という、設定だけで面白要素がいっぱいの作品。こういういわば定石のコメディこそ、監督の手腕が問われると思いますが、これが初監督の英勉は、ある意味本当にオーソドックにまとめて、笑いあり切なさありで、観た後心もホカホカ。万人が観て楽しめる作品に仕上げてあって、私は充分合格点があげられると思います。

大衆食堂を営む大木琢郎(塚地武雅)は、亡き母の遺志を継ぎ、味と値段を守る好青年。琢郎を「ぼっちゃん」と呼ぶ、母の代からの従業員の明(ブラザー・トム)と共に切り盛りし、お店はお客さんにも喜ばれ、大繁盛です。しかし琢郎には唯一最大の悩み事がありました。それは「ブサイクなこと」。女性とは全く縁のない生活を送る琢郎でしたが、ある日友人の結婚式のためのスーツを買いに「洋服の青山」に立ち寄ると、ハンサムな中年の店長白木(中条きよし)が、「これを着ると、超容姿端麗のイケメンになります」というスーツを、琢郎に差し出します。それを着た琢郎は、背丈もぐんと伸び、超イケメンに。試しに街を歩くとモデルにスカウトされ、名前を光山杏仁(谷原章介)と名付けられます。こうして琢郎と杏仁の生活を、行ったり来たりするようになった琢郎ですが・・・。

とにかく配役がもんのすごくぴったり。今回キング・オブ・ブサイクに選ばれたも同然の塚地ですが、確かに背も低いし太っているしブサイクですが(ごめんよ〜)、とっても愛嬌があるでしょ?人間の着ぐるみを被っている白豚というか(ひどいこと言ってるか?)、そういう可愛げがありますよね?なのであちこちで女性たちにキモがられる散々な描写を観ても、これは作り物なんだって笑えるのでしょう。本当に気持ち悪いような人がやっていたら、笑うに笑えないでしょう?このへんスプラッタ映画に通じるもんがあるよなぁ。

イケメン時が谷原章介というのも、本当に決まり過ぎ。この人本当にキザが似合う超ハンサムなんですが、その二枚目を逆手に取って笑いを取るという高等技術を使わせると、右に出るもんがいない人です。ハンサムなんだけど、変人が協調される阿部寛とは、根本的に違うと思う。あくまで「二枚目」目線なんだけど、でもなんか変な人、というのが谷原章介の持ち役なわけで。この作品でも急にイケメンになったため、ブサイク時の習性が抜けなかったり、逆に男前ならやってみたかったことを実行したりと、大いに笑いを取ってくれます。

あからさまなタイアップで「洋服の青山」が出てきますが、ハンサムスーツを観ると、そんなこたぁ、どうでもいいさ!と、思っちゃうほど、可愛いのがこれ。「ゴーストバスターズ」のマシュマロマンそっくりでしょ?この漫画チックさが堪りません!



物語はモデルとしての活躍ぶりや、二重生活を送る中でのシチュエーションで大いに笑わせながら、どうやっても自分の容姿に対して強いコンプレックをぬぐえない琢郎を描き続けます。友人も多く心も優しい彼がそのことに囚われるあまり、心までもブサイクになり、清楚で可愛い寛子(北川景子)に、その卑屈な思いをぶつけるシーンが、とても印象に残ります。

私も容姿には自信がないし、琢郎ほどではないにしろ、若い頃はコンプレックスがいっぱいでした。だからこのシーン、「寛子ちゃんは綺麗やから、そんなことが言えるねん!」と八つ当たりする琢郎の気持ちが理解出来ました。今も若いころと比べたら、とんでもなく太ったし、老けてしまいましたが、でも私は今の自分の容姿にそれほど不満はありません。何故なら山あり谷ありの、それなりの人生を潜り抜け、一つ一つを頑張って越えて来た自分の内面に、外面以上の誇りがあるからです。ですから今は、すんごい美人の横に立っても、「いやー、別嬪さんやねー」と、卑屈にならず心から言える自分がいるわけね。

なのでいい歳をしていつまで経っても、自分の容姿の自慢をしたり、反対に異常にコンプレックスを持ったり、はたまた他人の容姿をあげつらう人は、内面の薄さをまだ埋め合わせ出来ていない人だと、私の中ではランク付けしています。反対に美貌には全然恵まれないのに、内面の充実度が容姿を凌駕し、どんな美しい人と並んでも引け目ない人もいますよね?うん、こっちを目指そう!

私が思っていることを体現しているのが、「こころ食堂」店員の本江(大島美幸)。北川景子、佐田真由美他、モデル役の美形がいっぱい出てくる中、劇中で一番観客の心を照らすのは、「ビジュアルで差別されるのは慣れている」と言う本江です。知らなかったのですが、脚本は大島の夫の鈴木おさむ。この本江役は妻の本当の姿なんです、だから好きになったんです、と言われているようで、夫の妻への愛を感じさせ、私はとっても微笑ましい気分になりました。



どたばたした終盤の展開から、ラストは平凡ですが、倫理的や教育的指導と言う感じではなく、人の感情ってそういうもんだよね、理屈じゃないよと感じさせ、とっても気分の良いものでした。ちなみにラストに明かされるある事は、私は最初から気づいていましたのでね(ガハハハハ!)。これはちょっと卑怯っちゃ卑怯なんですが、乙女心に免じて許してしんぜよう。昨日は5時半頃の回を観たせいか、映画の日にもかかわらず、空いていました。しかし場内は笑い声でいっぱい。ちょっと肌寒かったけど、心ホカホカで家路に向かいました。


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