ケイケイの映画日記
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2008年03月09日(日) |
「バンテージ・ポイント」 |
10日ぶりの映画です(嬉泣き)。おばあちゃんの面会が1時半からのため、なかなか時間の都合がつかず、こんなに間が空いてしまいました。しかし姑の容体はまだ小康状態なので、ここはサクサク観て、パパッと帰れる作品ということで、評判の良い90分サスペンスのこの作品をチョイスしました。自転車で行けるラインシネマで上映だしね。削げる所は全て削いで、骨格とアクションに重点を置いた脚本は大正解で、時差を上手く使っての謎解きも上手く、とても楽しめました。
テロ撲滅の国際会議の行われるスペインのサラマンカ。アメリカのアシュトン大統領(ウィリアム・ハート)の演説の途中、大統領は狙撃されます。爆破事件も同時に起こり、大混乱の中、SPのバーンズ(デニス・クエイド)たちの狙撃犯探しが始まります。
冒頭シガニー・ウィーバーをディレクターに据えてのテレビ中継の様子は、観慣れた描き方ながらも緊張感が伝わり、さりげなくアメリカが当地で歓迎されていない様子も挿入していて、掴みはOK。これが後半の展開に、説得力を持たせます。
狙撃後の描き方は、バーンズ、アメリカ人観光客ハワード(フォレスト・ウィテカー)、覆面刑事エンリケ(エドゥワルド・ノリエガ)、テロ犯たち、大統領の、各々の視点の大統領狙撃23分前が描かれます。謎の残った部分、思わせぶりだった部分の解答が、別の視点から用意されており、この辺の筋運びが上手いです。下手な時空いじくり系のわかりにくさは皆無で、どんどんスピードアップされていく展開にも、充分ついていけます。
バーンズは半年前、護衛中に大統領をかばい負傷。そのトラウマが抜けきれぬ間の復帰が危惧されています。ハワードは妻子と別居中で傷心。エンリケの恋心は?などなど、秘めたるエピソードが散りばめられていますが、人間ドラマ部分はばっさりカットし、サスペンス部分だけを強調した作りです。しかしそれが功を奏したのは、キャスティングにクエイドやウィテカーなど、演技巧者を配したので、立ち姿や目の表情だけでも、心情が表現出来ていたので、物足らなくはありません。無駄な豪華キャストでないところも、ポイント高し。
クエイドはコンスタントにアクションから「エデンより彼方へ」のようなメロドラマでも活躍している人ですが、今回私的にはハリソン・フォードを彷彿させました。地味さが渋さへと、変換されていると思います。私は未見ですが、「デイ・アフター・トゥモロー」のような大作でも主演を張るなど、もっと日本でも注目されていい人だと思います。後5年は今の路線で頑張れると思うので、超のつく大作での主演が観られるかもです。
ウィテカーは、オスカー受賞後にこの作品のオファーを受けたのは偉い!演じる人が下手であれば、沈んでしまう役ですが、彼のお陰でとても含みのあるキャラになったと思います。彼の持ち味は、今回のような、ちょっと間の抜けた暖か味と誠実さが滲み出る役だと非常に際立ちます。偶然出会った少女への思いやりは、センチメンタルな旅であるという土壌と、彼の持ち味がプラスされ、味わい深く筋に絡んでいました。
ノリエガは私は好きなんですが、今回は平凡でした。ラテン系はバンちゃんの成功以後、ガエルやディエゴ・ルナ、そして今年のオスカーを取ったハビエル・バルデムなど、続々とハリウッドに進出していますが、もっと早くに本国スペインで人気があった彼は、出遅れちゃったかな?髭はない方が絶対ハンサムだし、次に期待します。
難点を少し上げれば、後半のカーチェイスは息もつかせず面白かったけど、もうちょっと切っても良かったかも。それくらいですね。大統領がバーンズが護衛についた時、「あの時はありがとう」とか、全然声をかけないのが不思議だなぁと思ったんですが、こういう秘密があったとは。報復を迫る側近に、「報復は憎しみしか生まない」と答える大統領は、民主党の設定かしら?と、ついつい時節柄思ってしまいました。ああ面白かった!と、気分よく劇場を後に出来る娯楽作です。
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