ケイケイの映画日記
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2008年02月12日(火) 「チーム・バチスタの栄光」




本日観てきました。本当はラインシネマで、エリア・カザンの「波止場」を観るつもりだったんですが、ずっと濃厚に楽しむ作品が続いたので、ちょっとこの辺でクールダウンというか、息抜きしたくなったので、この作品にしました。原作は現役医師の海堂尊(私は未読)。映画の方は描き込みが浅いため、少し物足らない出来ですが、原作が言いたいことは、私にはそれなり伝わり、平凡な出来ですがまずまずでした。

東城大学では、アメリカで実績を積んできた桐生(吉川昇司)を助教授に向かえ、拡張型心筋症のバチスタ手術を行っています。驚異的な成功率を誇る「チーム・バチスタ」(バチスタ手術チームの8人)ですが、最近立て続けに三度失敗しています。医療ミスであるのかどうか、穏便にことを進めたい病院側は、解明の調査に心療内科の田口医師(竹内結子)を指名。彼女の調査では「問題無し」。しかし院長(国村隼)の友人で厚生省の役人白鳥(阿部寛)が乗り込んできて、いやがる田口を引き連れ、再調査に乗り出します。

バチスタ手術というのは、ドラマの「医龍」でも出てきて、それなりに知られているのかも知れませんが、私は毎週楽しみにしていた夫とは異なり、一回観て全然面白くなくパスしていたので、今回やっとどのような手術か、わかりました。素人でも難しい手術であるのがよーくわかる解説で、かつ手術には医療者側にたくさんの役割や分担があると、患者側にも教えてくれます。この辺はわかりやすくて秀逸です。

竹内結子の役は、原作では男性医師だそうな。彼女は美人さんですが、上手く「女性の匂い」を消し、天然風のちょっと抜けている田口を、女性としてチャーミングなのではなく、人としてチャーミングに見えるよう、上手く匙加減した好演でした。

心療内科医は、普段患者の死と直面することは少ないでしょう。そのため、初めて患者が手術中に死ぬ場面に立ち合い、その時の焦りや恐怖を、チームのメンバーと一緒に体感したことが、強引でとんでもなく自分勝手な白鳥とともに、再調査しようとしたきっかけだったのでしょう。立派な医師の誠意であると思います。

自分の秘密を隠す桐生、それを手伝うチームの鳴海(池内博之)、そしてある医師がいう「医者にも娯楽が必要だ」。私は原作が言いたかったのは、「医者も人間なんだよ」ということだと思います。医師という職業は高い倫理性とボランティア精神が求めらるものです。ですが、こう昨今医療者不足で猛烈に忙しく、人間らしい暮らしも出来ないほどになると、心も人間離れしてしまい、何が正しく何が悪いのか、判断がつかない医師も出てくるのでしょう。

しかしその辺は医療を提供されるものとして、それなりに意識を持って観ないと、この作りでは見過ごしてしまうでしょう。全体に描き込みが浅く、医師たちのため息や苦悩はあまり聞こえてきません。その中で佐野史郎演ずる垣谷医師の、とある術後の様子は秀逸でした。これは演じた佐野史郎が上手かったからでしょうね。

推理物としては、何故こう推理が出来たのか、伏線や描き込みが浅く、セリフで説明するため、あぁ、そうだったのか!という爽快感に欠けるのが難点。とっても迷惑、でも辣腕の白鳥も、ちょっと魅力が伝わってきませんでした。

しかし患者側には物珍しく勉強になる部分が多い作品で、面白味もそこそこあります。いい医療サービスを受けるのは、患者と医師の信頼が一番。それを実現するには、情報の公開と医師の待遇改善だよなぁと感じます。医師にとって患者に良い医療を施せるのは、患者にとっても医療者側にとっても、幸せなことなんだと、教えてくれる作品でもあります。


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