ケイケイの映画日記
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2006年07月13日(木) 「サイレントヒル」


出来が良いと聞いていたので、楽しみにしていました。いや満足満足。ゲームソフトを元にした作品で、「バイオハザード」とそこら辺はいっしょですが、私はこちらの方が楽しめました。

クリストファー(ショーン・ビーン)とローズ(ラダ・ミッチェル)夫妻には9歳になるシャロン(ジョデル・フェルランド)という娘がいます。シャロンは情緒不安定で、夢遊病のような行動を取ることで、夫婦は悩んでいました。時折シャロンのつぶやく「サイレントヒル」という言葉も気がかりです。サイレントヒルという街が実在すると知ったローズは、この街にシャロンの行動の秘密があると信じ、夫の反対を振り切り、シャロンを連れてサイレントヒルを訪ねることにします。この街に恐ろしいことが待ち受けているいとも知らず。

導入部はササっと済ませ、ほどなくしてサイレントヒルに到着するテンポが良いです。街はおどろおどろしさはなく、ちょっと不気味で幻想的。火事が原因でゴーストタウンになったという設定なので、灰が降るのですが、それが粉雪のようで、それも効果的です。ローズを追ってきた婦人警官シビル(ローリー・ホールデン)の登場シーンも、ちょっと怪しげで味方か敵かわからないのも盛り上げます。

続々出てくるクリーチャーは、最初のゾンビもどきから、被災した霊魂風、三角頭の怪物、大量の地を這う虫、顔を隠したマネキンのような看護婦など(これが一番好き)、どれもこれもなかなか気持ち悪くてグッド。続々と出てくる場面では口を半開きにして、顔をしかめて見ている自分に気づき、思わずニンマリ。だってこの作品、ラインシネマでは来週から小さい試写室のようなスクリーンに移るので、そんなんでは気持ち悪さが半減するではないかと、急いで観た甲斐があったんだもん(マニアな喜び)。スプラッタシーンもグロさもほどほどで格調高く、生理的嫌悪をほどよく刺激し、この手の作品が好きな私のような者を十分満足させてくれる出来でした。

最初のホラー色の強い出だしから、徐々にドラマ性が強くなり、サイレントヒルの秘密に近づき明かされるまでの間合いもスムーズでした。ただその秘密というのが、魔女狩りを核にしたお話なのですが、集団ヒステリーや宗教の怖さを感じさせますが、たったこれくらいの理由では少々こじつけ気味。もうちょっと描き込んでいれば、傑作と言っても良い出来だったのにと残念です。

そのこじつけを、まぁいいかーという気にさせるのは、出演者の頑張りです。ラダ・ミッチャルの奮闘振りは素晴らしく、シビル役のホールデンの強さと女性らしい愛の深さは、ジーンとさせるものがありました。しかし一番の功労者はジョデル。ちょっと東洋的な容姿は、子供ながら神秘的で存在自体がファンタジックでもあり、作品の幻想的なムードを盛り上げました。ショーン・ビーンは、うーん。悪くはありませんが、こんな普通の良い人だけな役、彼でなくてもいいんでないかい?最近善良な役が続いている彼、最初はこんな良い人の役、と嬉しかったのですが、こう意味無く続くともったいないような。デボラ・カラ・アンガーはびっくりの扮装で出来てびっくり。クローネンバーグの「クラッシュ」で初めて彼女を観た私は、そのクールなセクシーさがとても気に入ったのですが、何もこんな役やらんでも・・・。彼女はもっともったいないです。

こうしてストーリー性を強めたことと出演者の頑張りで、B級ゲテモノではない、切ない哀しさを伴った出来の良いホラーとして、作品の格を上げたと思います。

ゲームでは主人公は父親だったらしいですが、映画では母親。同じように原作が夫だったのを妻に変更した「リング」は、母は強しを強調したかったはずですが、私は上手く演出されているとは思えず不満でした。この作品は元のゲームを知らないためか違和感もなく、母親の苛立ち、浅はかさ、子供を愛する強靭な心など、よく描けていたと思います。

監督のクリストス・ガンズはゲームをやっていたようで、ここをこういう風にクリアしたら次のステージだなと、観ていてどういう組み立ててで、ゲームが進行していたかがわかるのがご愛嬌。そういう監督だから、映画化が成功したのかもわかりませんね。


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