ケイケイの映画日記
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2006年03月22日(水) 「SPIRIT スピリット」


土曜日またまた家族で観てきました。普段なら観るのが微妙なボーダーラインの作品ですが、夫も末っ子も観るというので、これに決定。入院間近でいつどうなるやらの私にとっては、もう映画館で観られるというだけで有難い。ジェット・リー主演の、各国の武闘家の大格闘技大会のシーンだけが見せ場の作品と思いきや、実在の中国の武闘家を題材に、武道の心を私のような素人にもきちんと教えてくれる、爽やかな作品でした。

100年前の中国天津。武術にも人間的にも優れた父を持つフォ・ファンジア(成人からジェット・リー)。しかし息子が喘息の持病を持つのもあって、父は武術を教えず勉学にばかり励めと言います。そんな父の思いを無視し、隠れて稽古するファンジア。やがて天津随一の武闘家となったファンジアですが、彼の慢心は思わぬ不幸を呼びます。傷心の彼は・・・。

前半・中盤・後半と、三部に分かれたような構成です。前半は父と武道とに強い憧れを持つファンジアの幼き日を、学問に長けた親友ジンスンとの交流を織り交ぜて描き、子供心の純粋さを感じさせ、ユーモラスで明るい描き方に好感が持てました。大人になり、腕っ節だけが自慢の彼の慢心振りも、彼が何故こうなったのか、何がいけなかったのかが、観客が考えられるようわかりやすく描写しており、この辺も良かったです。ライバルとの料亭でのバトルは、エキゾチックで美しい調度品の中、階段や池など上手く使って見応えがあり、いつまでも観ていたい気がします。この辺もさすがはジェット・リーというところ。

私が一番好きだったのは、中盤のファンジアが暮らす田舎暮らし。まさにスローライフを実践する生活で、ゆるやかな時間の流れが、ファンジアを癒します。華やかな娯楽が何もない生活。彼の世話をする盲目の少女の、「私は目が見えないけど、心の目で何でも見えるから不自由しないの。」の言葉は、力と富とを持ち崩したファンジアには、とても厳しい言葉だったことでしょう。風がさやさや吹くと、田植えの手を止め風に体をさらす村人。あれは「自然の気」を体に吸い込んでいるのでしょう。大自然の恵みを、心に体にたっぷり吸収している村人は、厳しさではなく、暖かさで彼を包みます。この様子が本当に素晴らしいです。

後半、己の力を誇示するためではなく、中国人としてのプライドのため、再び戦う決意をしたファンジアを、一度は絶交したジンスンが、私財をなげうって、生まれ変わった親友を支える姿が泣かせます。原田真人演じる日本人は、西洋人以上の悪役で描かれていますが、それを救うのが中村獅童演じる日本の武闘家です。正々堂々とした戦いぶりと心栄えは、まるで山下の足を攻めなかったラシュワンのような潔さ。

ただ何で中村獅童がこの役に選ばれたのかは謎です。悪くはありませんでしたが、吹き替えだなぁとわかる挌闘シーンもあり、本気で格闘技を演じられる人でも良かったかも。原田監督は、あの「ラストサムライ」に続き、あの時代の日本人を演じるのが好きなんでしょうか?あんな敵役なんて、こちらも謎が残る出演。

アクション監督は、ユエン・ウーピン。古くはジャッキーの「酔拳」の監督などがあり、最近は「マトリックス」シリーズや「キルビル」のアクション監督や振り付けを担当しています。流麗で力強い挌闘場面が堪能出来ました。監督はロニー・ユー。あの「フレディVSジェイソン」を、きちんと見せられるように作った人です。大昔観た「キラー・ウルフ」も、おバカに流れそうな内容ながら、結構切なくて良かった記憶があります(レスリー・チャン主演作)。

うちの息子曰く「感動系格闘技作品」だそうです。スポーツや武道に励む少年少女たちが、正しい心を学ぶには打ってつけの作品です。今回のリーには、「少林寺」の頃のリー・リン・チェイでクレジットして欲しくなった作品です。


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