ケイケイの映画日記
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2005年06月03日(金) 「ザ・インタープリター」

6/1の映画の日に観てきました。レディースデーと映画の日が重なって、ちょっぴり残念な6月です。12時10分頃に仕事を終え、ダッシュで家に帰りご飯を食べ、朝洗濯機に放り込んだ残りの洗濯物を干し、12時50分に家を出て電車に飛び乗り日本橋まで。古式ゆかしい上映館の千日前セントラル(カップホルダーもないよ〜)まで、途中街頭でホストの紹介みたいな本を手渡されつつ、なんばグランド花月の前のポルノ専門館がパチンコ屋になったのに驚きながら、必死で歩く歩く。ハァハァ言いながらやっと座席に付き、館内の激寒に「映画館の夏」が来たを実感しつつ、持ってきた映画用のストールを身にまとい、さぁ始まり始まり(でも予告編多すぎ)。

国連通訳(インタープリター)として働くシルヴィア・ブルーム(ニコール・キッドマン)の専門は、アフリカで使われるクー語。ある日忘れ物を取りに自分のブースに戻った彼女は、偶然クー語で話すアフリカのマトボ共和国の大統領ズワーニの暗殺計画を聞いてしまいます。すぐ警察に連絡したシルヴィアですが、彼女を保護するはずのシークレットサービスのトビン・ケラー(ショーン・ペン)は、彼女が何かを隠しているのではと感じます。しかし次々にシルヴィアの身に起こる不穏な動きが、彼女の謎、そしてズワーニの独裁政権をあぶりだして行きます。

名匠シドニー・ポラックが作った王道の社会派サスペンス。ポラックは題材により控えめな時もありますが、常に娯楽は意識して作る人なので、この作品も大変面白く観られました。冒頭でもマトボのサッカー場で、いとも簡単に大の大人が黒人の子供に殺されるシーンなど、「シティ・オブ・ゴッド」をちょっと彷彿させ、手短にマトボという国の腐敗を衝撃的に描いています。

最初は志高く国を築こうとした大統領が、いつしか独裁者と呼ばれるようになる様子は、いつの時代にもあることで、世界中であちこちで起きる紛争と重なり、観る者も容易に想像力が働きます。前半シルヴィアの謎とマトボの苦悩を描くことに重点を置いており、少々テンポが遅いですが、ややこしい人名や事柄も出てくるので、ゆっくり整理するには適していたと思います。

後半は徐々にサスペンス色が加速し、ここからどうなるんだろうとハラハラドキドキ、さすがに手馴れた演出で飽きさせません。華やかなイメージの二コールですが、常にマニッシュな服装で化粧も地味目、際立つ美貌を押し出さず、政治に翻弄された暗い過去を持つ通訳を好演していたと思います。ベトナムの子を養子に迎えている彼女は、母親としてこういう作品に出たかったのだろうなと思いました。。

それ以上に印象に残ったのがショーン・ペン。仕事の出来る渋いシークレットサービスを、くせのある役を得意とする彼がやって自然な好演なんて!生え際の白髪が目に入った私は、いい年の取り方をしたのだなぁとうっとり。
シルヴィアの造形やその他、あちこちで聞かれる作品の穴ですが、主役二人の好演と演出の巧みさで、私はあまり気になりませんでした。徐々にお互い惹かれあうのが手に取るようにわかるのですが、キス一つせず、心だけのつながりに終わった描き方も、上品で心に残りました。

舞台の国連本部には、本当に許可をもらってロケしたそうです。そのリアリティが功を奏してか、深みも重厚さもほどほど、実力を兼ね備える人気俳優の出演している、安心して観ていられる上質のハリウッド作品の印象が残ります。まずまずのおオススメ作です。


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