ケイケイの映画日記
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2005年05月29日(日) |
「オペレッタ狸御殿」 |
鈴木清順監督のこの作品、初日に観てきました。昨日はイーストウッド監督の「ミリオンダラー・ベイビー」も公開で、くしくも日米御大対決です。米の方が好みなのですが、「狸御殿」は前売り鑑賞券が当たり、先に観るとラインシネマでのポイントが貯まるので、これでレディースデーを待たずして、タダで「ミリオンダラー・ベイビー」が観られます(主婦感覚と呼んで)。自転車で行けるラインシネマでタダ、こんな好条件なんで、きっとそう文句も出ないだろうと思っていましたが、何と言えば良いのか・・・。測定不能というか、私の映画人生で最大の珍品でした。
がらさ城城主の安土桃山(平幹二朗)は、配下の預言者のひるぜん婆(由紀さおり)から、彼の息子である雨千代(オダギリジョー)の美しさが、やがて父を凌駕するであろうと聞ききます。自分の意に沿わぬ者はたとえ妻でさえも追放した彼は、雨千代を妻と同じく霊峰・快羅須山へ手下を使い追放します。しかし運良く難を逃れた雨千代は、そこで狸御殿の狸姫と出会い、運命的な恋に落ちます。
涙ながらにチャン・ツィイーが、「何故人間と狸が愛し合うのがいけないの?」というのがテーマなんですから、別に姫が何故唐から来たのかなんて気にしない方がいいのだ思います。だからパパイア鈴木扮する牢番が「人間には人間の事情〜、狸には狸の事情〜」と歌ったり、姫が「あなたのために唐から来たの〜」と歌うのを、ほぇ〜、そーですか〜と納得すればいいのでしょう。チャン・ツィイーが喋る「嘘」というセリフを「ウォソゥ」と聞こえた私は、これ以降どうなるのか心配しましたので、ほとんど中国語で通す彼女に返って安心しました。チャンに出演して欲しかったのね、ということで。
一番危惧していたことは、それなりに納得出来ましたが、しかし・・・。 舞台のような美術はシュールなんでしょうが、私にはイマイチで、前衛的なのか古臭いのかわからず困ってしまいます。なんとなく上等の美術をバックにして、楽しく学芸会をしているようなのです。しかも俳優さんたちは楽しそうなのですが、観ているこっちは全然面白くも楽しくもないのです。思わず目をこらして腕時計を見ると、なんと後1時間もある!ず〜と意味不明の豪華絢爛なバカ騒ぎを観続けるのは体力がいったようで、終わって鏡を観たら目の下に隈が出来ていました。私は土曜日も午前中は仕事があり、一番ホッとするその午後に、何だかスクリーンに生気を吸い取られたようでした。色彩と衣装は目を楽しませてくれました。
話題のフルCGで美空ひばりが登場するシーンも、別に彼女じゃなくてもいいかなぁと思いました。確かに「狸御殿」シリーズには美空ひばりも出ていますが(子供の時にテレビで観た)、わざわざ故人を引っ張りださなくても、現役で活躍するシリーズに出演経験のある、雪村いづみでも若尾文子でも良かったかなと思います。歌われる数々の歌は、良くも悪くもNHKで使われる「みんなのうた」風に私は感じました。
チャン・ツィイーは相変わらずの愛らしさですが、チャン・イーモウ作品ほどには、彼女の魅力が発揮されているとは思いませんでした。オダギリジョーは別にどうということもなかったです。出演者で私が良かったのが薬師丸ひろ子。彼女も40歳を過ぎ難しい年齢ですが、眉毛をメイクで隠しての怪演で、唯一魔性の狸の化身のムードが濃厚に出ていました。歌も大昔より上手になっていると思いました。
監督は作りたいものを好きなように作ったのでしょう。えっ?と思われるかも知れませんが、私は「ツィゴイネルワイゼン」のノリの作品だと思います。だから理解するとか完成度とか、そういう作品ではなく、好きか嫌いか、合うか合わないかの作品なのでは?私は全然合いませんでしたが、そう思うと不思議と腹は立ちませんでした。
たぶん感想が出揃ってからは観に行かなかった作品です。きっと神様が「観なさい」と、鑑賞券を私にプレゼントしてくれたのだと素直に思います。だってビデオでは絶対最後まで観られません。ある意味貴重な体験でした。
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