ケイケイの映画日記
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2005年05月25日(水) 「クローサー」

画像の4人の実力と人気を兼ね備えたスター俳優が演技を競う舞台劇の映画化です。監督が名匠マイク・ニコルズということで、そこそこ期待して観たのですが、ドロドロの命がけの三角関係の「スカーレットレター」を観た直後だったのが悪かったようです。かったるくって。今回ネタバレ気味です。

作家志望の新聞記者ダン(ジュード・ロウ)は、ニューヨークからやってきた若いストリッパーのアリス(ナタリー・ポートマン)と知り合い、すぐ同棲します。一年ほどして、やっと出版にこぎつけたダンは、本に挿入する写真を撮ってもらう為、写真家のアンナ(ジュリア・ロバーツ)と知り合います。お互い初対面から惹かれ合いキスする二人ですが、アリスの存在を知るアンナは、それ以上の関係を望みませんでした。それから数ヵ月後、H系のチャットでアンナになりすましたダンは、医師のラリー(クライヴ・オーエン)を引っ掛けますが、そのことが縁でアンナとラリーは付き合い始めます。そしてまた4ヵ月後、アンナの展覧会に出向くダンとアリス。しかしアリスを愛しながら、ダンはまたアンナにアプローチします。そしてラリーがいながらアンナも・・・。

まず時間の経緯がわかりずらい。セリフで何ヶ月たち、何年たちと言いますが、アリスのヘアスタイルが変わるぐらいで、最初から最後までなら4年経つのに、何故込み入った相関図になるのか説明がありません。出合った、恋した、浮気した、別れたいの結果しか見せてくれないので、少々とまどいます。

若いアリス以外は、年齢的に30代後半だと思いますので、充分大人。しかしこれが大人の貫禄やら分別やらまるでなく、ただ本能のおもむくまま、決まった相手がいようがいまいが発情してます。確かにそのことに葛藤する場面が出てきますが、気は利いているけど空虚なセリフの羅列なので、ちょっといいせりふが出てきたと思っても、登場人物たちの行動の浅はかさとマッチしないので、こっちの心にまで届きません。

アリスは元ストリッパーで、医師、作家、写真家など、個性や知性を要求される人たちの中では底辺の仕事です。ダンと別れたのち、ラリーの誘惑がありながら体を許しません。昔風俗嬢の座談会を婦人雑誌で読んだ時、「どんな人とセックスする時が一番いいか?」との問いに「好きな人とのセックスが一番」という平凡で当たり前の答えに、私は猛烈に自分を恥じました。普通の女性とは違う答えが返ってくると思っていたのです。彼女だけ純粋さを感じさせ、決して人を傷つけない造形にしたのは、私のような人の深層心理にある意識を、逆手にとって表現したのだと思います。3年以上の歳月ダンと暮らしているのに、彼女が出て行く時のコートは出合ったままでした。服一つ買ってもらえなかったのかと、胸が痛みました。このことからも本心からダンを愛するアリスに対し、ダンは口先だけ愛していると言いながら、アリスに対しての気持ちの希薄さがうかがわれます。

アリスと逆にアンナは、一見落ち着いて知的な感じですがもう本当に尻軽。だいたいエッチチャットに誘われてノコノコ出てくる男と付き合うかぁ?そのラリーと付き合いながらダンと肉体関係を持ち続けながら、そのままラリーと結婚。あげくやっぱり浮気相手のダンの方が良いから夫に離婚してだぁ?演じるジュリアは、こういう物憂げで大人の風情の女性は似合いません。「エリン・ブロコビッチ」のようなパワフルなロークラスの女性を演じると輝く彼女の個性が埋没され、ミスキャスト。ちっとも魅力的でないので、男二人があっちでごろにゃん、こっちでごろにゃんする彼女を、どうして手放したくないのかとっても不思議です。

極めつけはエッチすれば離婚届にハンコを押すというラリーと寝てしまうこと。あのねぇ、お金をもらわなくても、何かと交換に体を提供するのは立派な「淫売」なのよ。その時のせりふが「あなたへの罪悪感と憐れみよ。」だとは噴飯もの。おまけにこのことをダンに告白。「私は嘘はつかない主義なの。」との傲慢ぶり。あぁ腹立ってきた!

ラリーは頭の中はエッチのことだらけみたいな俗人ぶりが、医者と言う職業と反比例で面白かったです。特に浮気を告白する妻アンナに「俺よりあいつの方が良かったのか!」と問い詰め錯乱する様は、これは実際でもリアルなんだろうなと、想像に難くないです。ネチネチしているところもグー。

なのでオスカーにポートマンとオーエンがノミニーは、とっても納得。ロウは、可もなく不可もなくの印象ですが、多分21世紀の美しい男として後世に名を残すであろう彼が、イマイチ美しく見えなかったのは残念です。

いい大人が恋愛に翻弄されたり、セックスの虜になるのは一向に構いませんが、そこには愚かしいけど人間臭かったり、切なかったりの感情を見出したいもの。これでは私には軽薄でバカに見えてしまいました。一番若くて底辺のアリスが役者が一枚上だったというオチは、皮肉で良かったです。


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